名歌手デラーの衣鉢を継ぐドミニク・ヴィスが78年に結成したクレマン・ジャヌカン・アンサンブルは、古楽演奏の潮流の中心に位置してきた名団体。多声シャンソンを彼らの歌唱で聴くというのはまさに〈古楽の楽しみ〉。とりわけミサ曲やモテットで名高いジョスカンの作品にあって、世俗歌曲に触れるのは秘めたる歓びに例えたいもので、ジョスカン没後500年という記念すべき年に出た当盤は、88年録音の名盤と共にぜひ参照したい一枚だ。ヴィスの歌い口、艶美な声の色合いも、より熟した趣を醸し出す。“千々の悲しみ”の器楽版や後進のゴンベールの1曲を挿むことで、歩幅を変えるように不思議な味わいも生まれた。