高田渡のライヴを初めて聴いた時、なんて自由なんだと感じた。縁側に腰掛けて暖かい日差しの中、アジっているような。厳しい言葉が、穏やかなギターのアルペジオに包まれてこちらに向かって歩いてくるような。それが自由なのかと言われると確かに少々疑問ではある。自由を発していた彼の体の奥には、押さえ込まれた激しい感情があったのか。彼が立っていた畳の、布団の、街角の匂いを漂わせる彼と連れ添った人々の言葉。失われた時間、空間の中に再び彼を蘇らせる著者の言葉の集中力。砂絵に描かれた絵のように、高田渡という人がページごとに現れて、消えていく。これは亡き人を偲ぶ本ではない、あの人の自由と厳しさを再び味わう本。