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4. BALACLAVA
――タイトルを直訳すると〈目出し帽〉。w.o.d.らしいイメージですよね。
サイトウ「これは銀行強盗の歌で、だから〈BALACLAVA〉なんです。映画『ダークナイト』(2008年)の冒頭でジョーカーたちが銀行を襲うシーンがあるじゃないですか。そこに出てくるジョーカー以外の犯罪者たちの目線を想像して書きました。ジョーカーはもう狂人化しているけど、そこまでいけてなくて、起こっている事態に〈やばい〉と思っちゃうふつうの人たち」
――プライマル・スクリームからの直接的な影響がもっとも強い曲だと思ったのですが、いかがでしょうか。終わり方が、彼らの2008年作『Beautiful Future』に収録された“Can’t Go Back”っぽいですし。
サイトウ「“Can’t Go Back”も影響下にはありますけど、全体的なイメージとしては『XTRMNTR』(2000年)期のプライマルですね。テクノやパンク、ファンクやシューゲイザーまで、ほんとうにいろんなことをやっていたけど、めちゃくちゃロックだった。あのオルタナティヴ感やミクスチャー感が、w.o.d.に〈これだな〉って響くところがあったんです。だから、プライマルからの影響は、俺らの活動そのものの前提にある。そのうえで、〈w.o.d.らしいロック〉という明確なゴールに向かって、ある意味確信犯的に作っていきました」
5. 煙たい部屋
――ここで作品の景色が変わります。曲のタイトル通りスモーキーでブルースの味わいがある楽曲。
Ken「リフとかはわりと早い段階でできていたんですけど、〈これやってええんか?〉って、ずっと寝かしていました」
サイトウ「最初のイメージはアークティック・モンキーズのサード・アルバム『Humbug』(2009年)だったんですけど、これまでのw.o.d.っぽくないから、少し躊躇するところがあって。でも、〈いい曲であればどんなものであっても俺ららしくなる〉と、最終的には思えた曲でもあります。ゆったりしているぶんいろいろ遊べました。ドラムはゴリラズみたいにループっぽくしてみようとか、いろいろ話しながら試しました。で、作れば作るほどレッチリっぽくなっていったり。楽しかった」
――空間的な柔らかいアンビエンスのあるギター・ソロがいいですよね。
元良「いいですよね、大好きです」
サイトウ「あれはギターを2本重ねたんですよ。ちょっとだけディレイを踏んで。入れて正解だったと思います」
6. relay
――これもレッド・ホット・チリ・ペッパーズへの愛を感じる曲です。特に前半は彼らの“The Zehper Song”(2002年)のように、ソフトで心地よいグルーヴと哀愁が漂っています。
Ken「リフからレッチリ好きが出ました。伝わってほしいところだったんで、よかった」
――でも、そこからただでは終わらずに最後に大爆発がある。
サイトウ「溜めて、溜めて爆発。そして段階的にグルーヴが変わっていく。まあ、手法としてはありきたりですけどね。そうすると、ある程度のクォリティーは担保されるというか、〈ふつうのいい曲〉みたいなイメージになってしまいがちなので、プレイのニュアンスとかメロディーとかについては、いろいろと緻密に話し合いながら完成させました。結果、すごくタフな曲になりましたね」
7. 踊る阿呆に見る阿呆
――w.o.d.ならではのロックでダンサブルな曲。キックの四つ打ちに合わせてシンバルもジャンジャン鳴らすという、ホワイト・ストライプスよろしくパワフルで重量感のある演奏です。さらにカウベルまでねじ込まれていて。
元良「カッコいい四つ打ちのロックって、俺のなかではなかなかないんですけど、やっぱりいちばんはホワイト・ストライプスかなって思うんです。実は、当初は四つ打ちを想定していなくて」
サイトウ「そうそう。リフをギターで弾くかベースで弾くかとか、どういうポジションでどの音を鳴らすかとか、そういうことを考えながらやっていたら、なんやかんやでドラムが四つ打ちになって」
元良「俺らは先にメロディーがあるとか歌詞があるとか、そういう状態ではなく、全体的なイメージだけを共有して曲を作っていくんで、ゴールは見えないし時間もかかる。スタートからまったく別の曲になることもある。決して要領がいいとは言えないんですけど、だからこそ生まれるおもしろい曲ってほんとうにたくさんあって、止められないんですよね」
サイトウ「これがアルバムのなかでいちばん最後に出来た曲。この作品自体、ネクスト・フェーズに入った感触があるんですけど、さらに次の一歩に繋がる曲だと思います。俺らならではのオリジナルな感覚でいろんなオマージュを織り交ぜていくことに、自信が持てた。これからは、〈遊び心〉をもっと鋭い武器にできるんじゃないかと思います」