ハード・ロックの絶対王者が6年ぶりに帰還。強面のメンバー5人が一丸となって作ったニュー・アルバムは、ときに艶めかしく、ときに獰猛な表情で世界を震わせる!
QOTSAは丸くなったのか
レーベルが謳う〈USオルタナ~ハード・ロックの絶対王者〉は決してハイプではない。アングラ臭をプンプン漂わせるストーナー・ロックの突然変異だったのもいまは昔。アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーにリーゼントを教えた伊達男、ジョシュ・ホーミ(ヴォーカル/ギター)率いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ(以下QOTSA)は、彼らのファンを公言するデイヴ・グロールを巻き込みながら、2000年代のロックでメキメキと頭角を現してきた。
エキセントリックな魅力も持ちながら、実のところ、骨太のロック・バンドであるQOTSAは精力的にツアーを行う一方で、意欲的にスタジオ・ワークにも取り組み、2、3年おきにアルバムのリリースを続けてきた。そんな活動がハネたのが2010年代の半ば。2013年の6作目『...Like Clockwork』とマーク・ロンソンをプロデューサーに迎えて、2017年にリリースした7作目『Villains』が、それぞれ全米1位および全英2位、全米3位および全英1位というチャート・アクションを記録。後者は日本でもオリコン洋楽チャートの4位に入った。また、2作品共にグラミーの最優秀ロック・アルバムにノミネートされるという快挙を成し遂げ、QOTSAはロックのメインストリームを代表するバンドとして、この時代にガツンとくるロックを求めるリスナーの欲求を満たしながら、その地位を揺るぎないものにしたのだった。
同時にジョシュがレディ・ガガの『Joanne』に客演したり、ポール・マッカートニーの『McCartney III』をさまざまなアーティストが再構築した『McCartney III Imagined』にベックやセイント・ヴィンセントらと並んで参加したり、QOTSAとしてはコールドプレイやエド・シーランらが参加したエルトン・ジョンのトリビュート・アルバム『Revamp: Reimagining The Songs Of Elton John & Bernie Taupin』で“Goodbye Yellow Brick Road”をカヴァーしたりと、彼らを語るときに挙がるアーティストの名前もずいぶんと華やかなものになってきた。
もっともある意味ロック界のセレブに仲間入りしたことで、QOTSAは丸くなってしまったんじゃないかと心配しているファンもいるだろう。その意味では、6年ぶりにリリースする今回の『In Times New Roman...』は、QOTSAがいまだ〈絶対王者〉と呼ぶにふさわしい存在なのかを判断する試金石としても注目されているのではないか。

『Villains』を引っ提げたワールド・ツアーを終えたあと、QOTSAのメンバーたちはそれぞれの活動に励みながら新作を作りはじめるタイミングを待っていた。ジョシュは、ライフワークであるデザート・セッションズを16年ぶりに再始動させたり、カントリー・シンガーであるニッキー・レーンの4作目『Denim & Diamonds』をプロデュースしたりと、積極的に客演活動を展開。そうした動きを経て、ジョシュ、トロイ・ヴァン・リューウェン(ギター)、ディーン・フェルティータ(ギター/キーボード)、マイケル・シューマン(ベース)、ジョン・セオドア(ドラムス)の5人はジョシュのスタジオ、ピンク・ダックに再集結。その後、マリブにあるリック・ルービンのシャングリラ・スタジオも使いながら、『In Times New Roman...』を完成させたのだった。
サイケでアングラ
『In Times New Roman...』はバンドによるセルフ・プロデュース。基本、5人の演奏だけで作り上げた作品だ。歪みに揺れを加えた音色でギター・リフが鳴る“Obscenery”から始まり、そのあと畳み掛けるようにリフで押すロック・ナンバー“Paper Machete”“Negative Space”が続き、ギター2本のダイナミックなアンサンブルと共にQOTSA節をアピールする。テンポを落として、ジョシュがファルセットを交えながら、リラックスした歌声で胸を焦がすようなメロディーを歌う“Negative Space”は、フレーズを互いに絡み合わせるようにジョシュとトロイが奏でるギター・ソロも聴きどころ。この色気こそがQOTSAの真骨頂。それらを磨き上げることによって、QOTSAはガツンとくるロックを求めるリスナー以外の層にも食い込んできた。
続く“Time & Place”はQOTSA流のアシッド・ロック・ナンバー。リヴァービーなサウンドのなか、フリーキーに鳴るギターとクラウトロックを思わせるドラムがトリップ感を演出しつつベース・プレイがファンキーなグルーヴを演奏に加えているところがおもしろい。メタリックなブギをエフェクティヴなギター・サウンドでポップかつエキセントリックに仕上げた“Made To Parade”を挟んで、“Carnavoyeur”“What The Peephole Say”と60年代風のガレージ~サイケ・ナンバーが2曲並ぶ。前者はオルガンとサブベースのドローン効果が絶妙なバラード、後者はダンス・ロックと曲調の振り幅は広い。後者ではジョシュがイギー・ポップばりのエネルギッシュなシャウトを披露している。
“Sicily”はストリングスが神経を逆撫でするように鳴るスロウなゴシック・ロック・ナンバー。“Emotion Sickness”はQOTSAらしいリフ・ロックを思わせながらも、曲に不釣り合いなほど爽やかなハーモニーが加わり、聴き手を翻弄する。ラストを飾る9分超えのスロウ・ブギ“Straight Jacket Fitting”は曲調とも相まって、ジョシュの歌が『Waiting For The Sun』、あるいは『L.A. Woman』の頃のジム・モリソンを彷彿とさせるのだが、パンクの精神を持つアメリカのハード・ロック・バンドとして、まったくもって正しいと思う。そして、曲の後半は、アコースティック・ギターを爪弾くラテン・フォークロア風になって、アルバムは静かに終わる。
前段で試金石と書いたが、どうだろう? 磨き上げてきた洗練やグラマラスな質感は残しながらも、アングラ臭が戻ってきた印象もある。何よりも有名プロデューサーの助けを借りず、自分たちだけで作り上げたところがいい。それぞれに実力派ミュージシャンである5人がふたたび一丸となって、ロック・シーンを震わせるアルバムを作ってしまったのだから、QOTSAが持つ求心力はこれっぽっちも衰えていなかったのである。 *山口智男
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの過去作。
左から、2013年作『...Like Clockwork』、2017年作『Villains』(共にMatador)
QOTSAのメンバーが参加した近年のアルバムを一部紹介。
左から、ジャック・ホワイトの2022年作『Entering Heaven Alive』(Third Man)、ポール・マッカートニーの2021年のリメイク集『McCartney III Imagined』(Capitol)、ラン・ザ・ジュエルズの2020年作『RTJ4』(Jewel Runners)、ブライト・アイズの2020年作『Down In The Weeds, Where The World Once Was』(Dead Oceans)
梅雨のユーウツに唾を吐く、不良たちのロック盤

ディーン・フェルティータをはじめ、QOTSAの現/元メンバーが参加するプロジェクト。リリースは盟友ジャック・ホワイトのサード・マンから。硬質なガレージ・ロックから70年代風サイケデリアまで多彩なサウンドを聴かせる。 *天井

イギー・ポップを虜にしたLA発、60s調ガレージ・ロックの男女4人組。この4作目ではドリーミーなサイケ・アプローチでスケールアップをアピール。“When I’m Free”は元祖不良ガールズ、シャングリラスへのオマージュか!? *山口
ストーナー・ロックにルーツを置くQOTSAにとって、大元たるハード・ロックを礎に独自のサウンドを探求したBORISは海を隔てた同志と呼べる存在。三度〈Heavy Rocks〉と題した最新作は、結成30年を経ての円熟と高みを示す。 *天井

QOTSA人脈のミュージシャンたちがアウトロー・カントリーの女王をバックアップ。ジョシュはプロデューサー兼マルチ・プレイヤーとして大活躍。表題曲や“Black Widow”といったロックンロール・ナンバーにジョシュらしさが滲む。 *山口

LCDサウンドシステムのジェイムズ・マーフィーも制作に関与。2000年代のポスト・パンク再興を先導する一枚に。シンセを配したエレクトロニクスとのクロスオーヴァーは『Era Vulgaris』(2007年)以降のQOTSAに顕著なテイストでもある。 *天井
身上はリフで聴かせるオルタナ・ロック。この4作目ではそこにサイケ、跳ねるリズム、ラテンの要素が入り混じる。“白昼夢”のエモさも堪らない。QOTSAはもちろんBLANKEY JET CITYのファンにも薦めたい神戸出身の3人組だ。 *山口

