本書が解き明かすように、かつて音楽家もエンジニアも手探りでより良い選択肢を探して色々試みていた。その時、彼らは何に近づこうとしたのかは、疑いもなく、生演奏の音、現場のリアルなサウンドだった。その後、スタジオでしか実現出来ないサウンドへと向かうが、それは更なる選択肢を求めた結果だった。今日、DAWが音楽制作の中心になってて、パソコンの中で選択肢は無限大に膨れ上がり、それだけでリッチになったような気になってしまう。だけどその一方で、ここに記されているように、数々の名盤の裏に、マイクを楽器に向けて最高の音を拾う距離を測る繊細な技術の存在とそれを繋ぐ耳の伝統を忘れてはならない。