Michael Rodriguez@Jazz Standard, NYC, 2016. ©Takehiko Tokiwa

共演した偉大なレジェンドたちへ捧げる、暖かな音色が魅力のアルバム

 現在のニューヨークのジャズ・シーンで、ファースト・コール・トランペッターの一人であるマイケル・ロドリゲスが、盟友のジョン・エリス(テナー・サックス)、ゲイリー・ヴァサーシ(ピアノ)、ジョー・マーティン(ベース)、オベッド・カルヴェール(ドラムス)と、自らがサイドマンとして共演してきたレジェンドたちへのトリビュート作をリリースする。ロドリゲスは、2000年代にシーンに登場して以来、卓越したテクニックとウォームなトーン、歌心たっぷりのメロディーで、チャーリー・ヘイデン(ベース)、チック・コリア(ピアノ/キーボード)、マリア・シュナイダー(アレンジ)らのグループに起用され重要な役割を担い、自身もアーティストとして大きく成長を遂げた。彼らへの感謝を込めた5曲のオリジナルと、1曲のカヴァー、スタンダード曲を収録した意欲作だ。

MICHAEL RODRIGUEZ 『Pathways』 Rodbromusic(2021)

 アルバムは、2018年のNY近代美術館の委託作品であるタイトル曲の“Pathways”で厳かに幕開ける。続く“In Due Time”は、10年にわたって共演しているケニー・バロン(ピアノ)の美しいメロディーラインに思いを馳せて作曲したという。“Just In Case”は、ゴンサロ・ルパルカバ(ピアノ)、“Crossroads”は、チック・コリアとマリア・シュナイダーのリリカルな作曲にインスパイアされた。“Solid Ground”は、2019年のチック・コリア・スパニッシュ・ハート・バンドのツアーの体験が反映されている。ビル・フリゼール(ギター)作の“Throughout”は、チャーリー・ヘイデンのリベレーション・ミュージック・オーケストラのレパートリーだ。ジャズの伝統への繋がりを示すスタンダードの“Spring Is Here”で、ロドリゲスのこれまでのキャリアを振り返る音楽の旅は終わる。

 バラード、ミディアム・テンポを基調として、偉大なアーティストたちが愛した、ロドリゲスの繊細なメロディーと暖かな音色で歌い、盟友たちが絶妙なサポートで支えている。マイケル・ロドリゲスの新たな音楽の旅が、また始まる。