
『Bass Life Goes On』に参加した凄腕たち
――レコーディング参加メンバーについてお聞かせ願えますか?
IKUO「まず、ドラムの坂東慧くん。僕と彼との出会いは彼が19歳くらいの頃で、プロ・デビュー前に遡ります。(ドラマーの)菅沼孝三さんから〈大阪の弟子ですごく上手い子がいるから一緒にやってみてくれ〉って言われて、共演したのが六本木ピットイン。その時のキーボードが河野啓三さんで、まさに坂東くんがT-SQUAREに加入するきっかけとなった一場面です。そこで僕はベースを弾いていたんですよ。それからは、僕のアルバムのレコーディングやセッションにも参加してもらっています。今や僕にとってファースト・コールのドラマーです」
TAKA「僕は、ギターのマサ小浜さん、坂東くんとトリオでやっていたことがありました。彼は振り幅の広いドラマーなので、超高速でIKUOさんとバトルをすることも出来るし、僕はもう少しテンポを落としてブラック・フィールでやることが多いのですが、彼はその両方に対応出来るんです。しかも、僕たちがさらにくだけた方向へ逸れていってもついてきてくれます(笑)」
IKUO「基本的にI.T.Rはベース2人とドラムだけでどこまでパフォーマンス出来るか?というストイックなユニットなので、単なるドラマーではなくドラム・アレンジャーが求められます。その点、彼に任せておくとデモ音源を超えてちゃんとした作品になるんです。丸投げしても、必ず仕上がってくる。しかも短時間で。そこが素晴らしい」
TAKA「確かに、仕事が早いですね。僕がスタジオ近辺で駐車場を探してモタモタしてる間に、もうドラムのレコーディングが終わっていたこともありましたから(笑)」

IKUO「もう一人のドラマーが山崎慶。彼とは昔からの仕事仲間で、T.M.Revolutionも一緒に参加しています。彼は師匠が村石雅行さんで、メタリックな曲でも何でも叩ける。しかもカッコよくて女性にもモテる、天は二物を与えた系です(笑)」
TAKA「キーボードの白井アキトは、僕にとっては二人でユニット(Little TMAS)も作っているほど重要なパートナーです。
歌モノを扱うときのポップな側面と、フュージョンをやるときのスーパー・テクニックな側面、両方を持っていますね。アレンジでも鍵盤楽器と弦楽器という立場でしっかり話し合えるんです。サポートと言うよりもメンバーですね。だからそれが作品に影響して、セッション風ではなくもうちょっとバンド風に仕上がったと思いますよ」
IKUO「じつは、K-Popを語ると二人で盛り上がって止まらなくなる仲なんですよ(笑)。彼は曲をポピュラリティーのあるモノへ昇華してくれるので有難いです。僕たちはセッションをしたいのではなくて、作品を作りたいわけですからね」
ダーティ・ループス ヘンリックとの友情
――ダーティ・ループスのヘンリック・リンダーが参加しているのは何故?
TAKA「クリス・ペプラーさんから紹介されて仲良くなったんです。日本が気に入ったようで、お忍びでよく遊びに来るので、その度にあちこち連れて行ってあげてます(笑)。当然、ライブにもよく飛び入りしてます。JINOさん、僕、IKUOさんのステージにヘンリックが加わったこともあったし、T-SQUAREのカウントダウン・ライブに飛び入りして坂東君と一緒だったこともあるし、それならこの人間関係を形にしておきたいと思ったわけです」
IKUO「その、彼をフィーチャーした曲が“We Love Henrik”。彼が演奏データを送ってきたときに〈サプライズを入れておいたから〉って言ってたのは最後のところで弾いてる“蛍の光”だったんですね」
TAKA「彼が来日したら、いつも都内のあちこちの楽器屋さんに連れて行くんだけど、あるときハードオフに寄ったのがもう閉店間際で“蛍の光”が流れていました。お店の人も閉店の作業で忙しくて、彼は放置されたままこの曲に合わせてリリカルなベース・ソロを弾いていました(笑)」
IKUO「彼はカシオペアとか日本のフュージョンも大好きで、僕たち日本のインストのフォーマットには慣れていますから、仕事はやり易かったです」
TAKA「この10年間に僕たちI.T.Rと関わってくれたミュージシャンはたくさんいるのですが、今回のゲストは以上の方々に絞りました。あまりゲストを増やすと、どうしてもセッションっぽくなってしまいますからね」