デビュー30周年を記念すべく、充実の新作が華々しく到着!!

 80年代のアイドル歌手というものが改めて脚光を浴び、今日的な目線から新たな評価を獲ることも多くなっている昨今――デビューから30年という節目に荻野目洋子が帰ってきました。前作『Songs & Voices』(2009年)から約5年、プライヴェートの充実もあって歌の世界から遠ざかっていた彼女ですが、最近のTVで披露したパフォーマンスを観る限りブランクの影響は皆無。むしろ、自身のメモリアル・イヤーを睨んでバッチリ仕上げてきたような印象すらあります。そんなノリの良さを封じ込めた今回のニュー・アルバム『ディア・ポップシンガー』は、本格カムバックを待ちわびたファンの期待に応えて余りある内容なのです!

荻野目洋子 『ディア・ポップシンガー』 ビクター(2014)

 オープニングを飾る“99 Big Balloons”は、ネーナの“99 Luftballoons”(83年)を荻野目自身の詞で取り上げたもの。続く“ねえ”は91年のヒットをセルフ・カヴァーしたもの……といったふうに、今作は日本語詞による洋楽カヴァーと自身の代表曲の新録ヴァージョンが交互に飛び出す趣向。もともとアンジー・ゴールドのカヴァー“ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)”(85年)でブレイクした彼女だけに、楽曲を自身のノドに引き寄せる解釈の巧さは言うまでもありませんが、今回は彼女自身が歌いたい洋楽曲を選び、自身で日本語詞を書いたというプロセスもあって、曲と歌のマッチングはいままで以上に好相性です。彼女が選んだのは先述のネーナ曲に加え、ドナ・サマーの“Hot Stuff”(79年)、キッスの“I Was Made For Loving You”(79年)、スウィング・アウト・シスターの“Breakout”(86年)、そして荻野目のデビュー年に誕生したワム!の“Freedom”(84年)……という70年代後半~80年代の世界的なヒット・ナンバーばかり。彼女のイメージしたキラキラした時代のムードをリスナーにも体験させながら、〈歌って踊れるアーティスト〉の先駆けでもある彼女のダンサブルなモードを現代的に提示してくれるラインナップではないでしょうか。

 一方、セルフ・カヴァーとしてパワフルに新録されたのは、先に触れた“ねえ”に“コーヒー・ルンバ”、そして“STEAL YOUR LOVE”という『流行歌手』(92年)所収の3曲に、先述の出世曲“ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)”と“六本木純情派”(86年)と、あえて直球で彼女の代名詞的なヒット・ナンバーたち。これは本人の「代表作をちゃんと歌い続けていきたい」という意志の表れでもありましょう。とりわけ、ビッキビキのハイエナジーが轟く“ダンシング・ヒーロー”(DA PUMPのKENZOらが80sな遊び人風のノリで群舞する、いなせなMVも最高!)の新鮮なカッコ良さといったら! 厚みを増しながらも原曲の印象をキッチリ残したアレンジの妙もあって、どの曲でも往時の若々しい勢いとは異なる、ニュアンス豊かな歌唱の力強さがイキイキと響いてきます。

 そして、アルバムの目玉となるのが……オリジナル新曲としては15年ぶり(!)となる“キミとタイムマシン”でしょう。こちらの歌詞も自身のペンによるもので、洋楽カヴァー群の時代感覚に引き寄せればフィル・コリンズ版“You Can't Hurry Love”(82年)を連想させる仕上がりと言うこともできますが、文字通り時代を超える軽やかなモータウン・ビートに乗るヴォーカルの快活さは、時代の移りゆくなかで荻野目が貫いてきたポップシンガーとしての信念を表明するようでもあり、また本作のタイムマシン的な構成を体現するかのようでもあります。今回の上々な成果を受けてオリジナル・アルバムへの意欲も高まっているという彼女。メモリアル・イヤーは新たなスタートの幕を切って落とす一年でもあるということですね!

 

▼関連作品

左上から、荻野目洋子の2009年作『Songs & Voice』(ビクター)、ネーナの83年作『Nena』(CBS Germany)、荻野目洋子の92年作『流行歌手』(ビクター)、ドナ・サマーの79年作『Bad Girls』(Casablanca)、キッスのベスト盤『Greatest Kiss』(Mercury)、スウィング・アウト・シスターの87年作『It's Better To Travel』(Mercury)、ワム!の84年作『Make It Big』(Epic)、荻野目洋子の86年作『ノン・ストッパー』(ビクター)

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荻野目洋子 30th Anniversary LIVE 開催決定!
2014年10月16日(木)赤坂ブリッツ
*アルバムの生産限定盤・初回生産分にチケット優先購入予約券を封入
*一般発売は9/20より(問)フリーギア(Tel. 03-6804-3355)