
16歳にして西東京の福生でレゲエ・ディージェイの活動をスタートし、10年以上のキャリアを重ねてきた貫太郎が、本名の前嶋貫太郎として5年ぶりの新作アルバム『222』をリリースした。ヒップホップのビートを中心とした穏やかな音楽性と、肩の力が抜けたディージェイ・スタイルで新たな面を引き出したアルバムは、自らと向き合う時間が増えたと語る日々の成果であり、なにより30歳という人としての節目を目前にした彼なりの成熟の証しだ。そしてそれは、コロナ禍の圧倒的な非日常に力でぶつかるのではなく、あくまでも軽やかに越えていくところにこそ答えを見出すものとも言えようか。
今回は、そんな『222』を発表した前嶋と、アルバムに収録の“WARUKUNAI”で共演を果たしたRYO the SKYWALKERの2人にZoomで話を訊くことができた。それこそ前嶋がレゲエへと足を踏み入れるきっかけの一人とも言えるRYO the SKYWALKERとの話は、2人のそもそもの出会いから始まる。

前嶋貫太郎 × RYO the SKYWALKER、10年越しのコラボ
――まずはお二人の出会いから訊きたいんですが。
前嶋貫太郎「僕達が福生で〈WICKED!!!〉ってイベントをやってたんですけど、そこにRYOさんを呼ばせていただいたのが最初……ではないですね(笑)」
【🔥情報解禁🔥】
— 前嶋貫太郎 (@KANTAROU1992) April 24, 2017
6/17日"WICKED"-LIEON SHARE10th-
SP GUESTに福生初上陸!!!
✴︎RYO the SKYWALKER✴︎
今回はデイイベントでの開催!!
個人的にもヒーローがやってくるのでめちゃめちゃ楽しみです🎉 pic.twitter.com/Do36xzmVl5
RYO the SKYWALKER「3、4年前にそこでがっつりリンクして話したのは憶えてるけど、いっちゃん最初に出会ったのはなんやったんかな?」
貫太郎「今思い出しましたけど、〈ロカパラ〉(〈ROCKERS PARADICE〉。2006年より東京、大阪で月1で開催されていたイベント)ですね。僕ずっと通ってたんですよ。もう時効だけど高1の時にシステム搬入口から入れるのを知って通ってて。たなけんさんとか(J-)REXXXさんとかアダチ(マン)さんとかそこで全員知り合ったんですよ」
RYO「おー! そうやったんや。それあんまりわかってなかったわ」
貫太郎「そうですよね。そこで一番最初にラガラボ(MUSIQ)の3人が来て、ARM(STRONG)さんが歌って、その後BOOGIE(MAN)さんが登場するっていう暗黙の流れがあったんですけど、僕がマイクを取って怒られたことを思い出しました」
RYO「(笑)。それ10年以上前やんな。〈ROCKERS PARADISE〉に誰でも歌える〈Rub A Dub Schooool!!!〉っていうオープン・マイクのコーナーがあってそこに来てたのね、貫太郎は」
貫太郎「毎晩毎晩忍び込んでました。あれで東京のレゲエ・シーンの厳しさを知りました(笑)」
――はは、そうなんですね。
貫太郎は飄々としてるけど勝負になったら強いことも言うし、中々やるなと
――今回の共演に至る以前RYOさんは貫太郎さんをどう見てたんですか?
RYO「貫太郎は〈HIGHEST CUP〉っていう〈HIGHTEST MOUNTAIN〉の出演をかけた若手のトーナメントで2、3年連続で惜しいとこまで行ってたから、うまいのも知ってたし、結構飄々としてるけどそういう勝負になったらがっつり強いことも言うし、中々やるなと思って見てましたね」
――逆に貫太郎さんはRYOさんをどう見てました?
貫太郎「RYOさんは僕ら世代でジャパニーズ・レゲエを聴いてた人には全員そうだと思うんですけどスターなんで。最初会った時から今でもそうですけど、中々うまく喋れないですね(笑)。アーティストとしても懐が深いし」
――貫太郎さんのレゲエへの入り自体も、やっぱりRYOさんをはじめとしたジャパニーズ・レゲエだったわけですか。
貫太郎「レゲエに入ったのは小6か中1なんですけど、姉ちゃんがNANJAMANさんを聴いてて、そっから〈横浜レゲエ祭〉とか〈HIGHEST MOUNTAIN〉にたどり着いて、出てるアーティストの人達を掘って掘って、みたいな」
――そうなるとディージェイを始めるきっかけも当然そのあたりから。
貫太郎「モロそうです」

〈世界は悪くない〉と次世代に伝える“WARUKUNAI”
――そう考えると今回“WARUKUNAI”で実現したRYOさんとの共演は感慨深いですね。
RYO「福生のイベントに呼んでもらって以降は会う機会が中々なくて、そこにコロナの影響もありつつ、今回突然オファーをもらって。(“WARUKUNAI”は)ビートがアフロビーツっぽい感じで始まるんすけど、今回みたいなちょっと軽快なやつがちょうど好きやったんでよかったというか」
――タイミング的にもよかったという。
RYO「個人的には今、自分のやってきたことを振り返ってる時期なんです。〈現場現場〉でずーっと来てたんで、今まではレゲエ観としてもダンスホールで歌うための曲を作るっていう意識が強かった。
でも、今はコロナのせいもあんのかないのか、部屋でもゆっくり聴けるもんが自分のやれてない部分かなと思ったんですよね。今回の曲はそこにもハマったし、自分も歳とってきて、アコースティックなものやったり、歌っぽいものに向かい始めてる感じもあるんで、ホントに節目というか、いいタイミングでオファーいただいたなと思って気に入ってます」
――曲の内容はどのように詰めていったんですか?
RYO「コロナでみんなが疑心暗鬼じゃないですけど〈この世界どうなっていくんかな〉って思ってる状況の中、タイトル通りこの世界は悪くないことを信じて次の世代にそういうメッセージを伝えたいっていう話を貫太郎から聞いて、そこもすごい共感しましたね。もちろん僕の方が世代は上なんすけど、言うたら僕と貫太郎の世代が一緒になって、もっと下の世代に残せるもの、今残して刺さるものになったかな」
貫太郎「コロナ以降会う人も限定されてましたし、他の曲は身の回りに起こることで曲を完結させてたので、今回のアルバムの中で世の中全体に伝えるような曲は“WARUKUNAI”が唯一かなと思うんですよ。
基本ポジティヴな方向に持っていきたいっていうのはあるので、“WARUKUNAI“ではそれを広い視野で伝えられたかなと思います」
肩の力を抜いて聴けるアルバムを作りたかった
――“WARUKUNAI”もそうですけど、このアルバムは今の状況を力で打破するというより、日常のペースや自然体に立ち戻ることで乗り越えていこうっていうアルバムにも聴こえてくるし、穏やかなビートが中心な理由もそこなのかなって。〈今は変わらぬ明日が愛おしい〉と歌う“blue”や、〈一息入れて落ち着かせて〉と始めるARAREさんとの“Nuku”もしかり。
貫太郎「“blue”とかはコロナ禍になって速攻で書いたんで、その時の素直な気持ちが反映されてるし、そういう曲が多いかもしんないですね。
リラックスしてさらーっと30分聴いて、気づいたらまた1曲目に戻ってたっていうぐらいの肩の力を抜いて聴けるアルバムを作りたいと思ってトラックも選びましたし。今回言葉をすごい抜いて作ったんですけど、フロウを楽しむ、遊ぶっていうことも形にできました」
――その遊びっていうのは具体的にはどのような?
貫太郎「メロディーラインですかね。あとはヴァースで4小節ずつフロウを変えたり」
RYO「今そういう感じよね。コフィー(Koffee)とか聴いててもフロウがころころ変わっていくけどちゃんとハマっててどのフロウも気持ちいいみたいな。本場のジャマイカでもトラップっぽいビートやったり、ディージェイにしても間をうまいこと使うようなフロウも多くてどんどん変わって行ってるし」
貫太郎「そうですね。そういうちょっとしたギミックが楽しかった」

どこまで行ってもレゲエ・ディージェイはレゲエ・ディージェイ
――その“WARUKUNAI”を含め、貫太郎さんは今回のアルバムを作ることで何か発見などはありました?
貫太郎「今回のアルバムはヒップホップのトラックがメインですけど、どこまで行ってもディージェイはディージェイだなって。やっぱレゲエ・ディージェイって独特なんですよ。だから今後レゲエ・ディージェイがヒップホップのトラックに乗って発信していくことが増えても面白いのかなと思いました」
――では本作のスタイルが次作以降も続くということですか。
貫太郎「今回のスタイルはアルバムを作ってる途中に完成されたんですけど、なんとなく掴んだなっていうのが自分でもあるんで、この感じでもう一枚やりたいですね」
RYO「さっき話があったように、力で押すんじゃなくて、メッセージとしては柔よく剛を制すというか、軽やかにいなしていくっていうのが貫太郎っぽいし、今っぽいですよね。そういうスタンスやから今いろんなことがある中で、力が入りすぎてる人にも刺さるし、逆に力を抜きすぎて無関心でぼーっとしてる人にも〈もうちょっと考えろよ〉ってことがいい足並みで伝えられて、いい具合に貫太郎流のスタイルが刺さるような気がします」
――そうなるといいですよね。貫太郎さんから改めて今回のアルバムについて一言いただけますか?
貫太郎「捨て曲みたいなのはないし、前回のアルバムはライブで歌わない曲もあったけど、今回はそういう曲がないなと思います。〈この情景ではこれを歌いたいな〉と思って作れたし、そう思って歌えるなって感じですね。
貫太郎時代の曲を聴いてくれてた人達はもしかしたら違和感があるかもしれないけど、とにかく新しさを出せたし、ゴチャゴチャしてないアルバムなのでそのまま受け止めてもらえたらなと思います」
貫太郎はそのまま行け!
――それぞれを前にして言いにくいかもしれないですけど、改めてお互いに言葉をかけるとしたらどんな言葉をかけます?
RYO「たぶん今回、貫太郎なりのレゲエも含めて自分自身をナチュラルに表現できたんかなって印象はあるんすけど、そのままでいて欲しいですね。俺は昔からやってる分、〈ハードコアなゴリゴリのダンスホールをやってなかったら怒られる〉みたいなイメージを持ってる人もおると思うんですけど、俺自身もやっぱ変わって来てるし、インターネットの登場で、ジャマイカでもどこでも若い世代はフラットにつながってきてる。貫太郎もその世代の一人やし、レゲエが血となり肉となってるのはもう間違いないから、それを信じて今の自分のままの素直な感じで作っていったら世界にもハマれる気がするんで、そのまま行け! 頑張れ!って言いたいっすね」
貫太郎「最近はノリで聴かせるような音楽が多いじゃないですか。僕にもそういうのが好きな時期があったし、引っ掛かる言葉ばっかり入れるのも今の世の中的に違うのかなっていうのもあったんですけど、今回RYOさんとやる機会をいただいてRYOさんの楽曲を改めて聴き直して、やっぱ魂、ヴァイブスが乗ってる曲ってずっと残るなって思ったんですよ。“晴れわたる丘”とか“From Distance”とか“Seize The Day”とか。そういう曲をこれからも日本全国の人達のために残し続けて欲しいって思います」
――今のレゲエ・シーンについても一言いただければ。
RYO「他のジャンルもそうやと思うんですけど、やっぱり現場の機会が減ってみんなが会う機会が減って、同世代のリンクはある程度出来るけど、世代間のコミュニケーションが出来ないんですよね。そこの断絶がもったいないし、文化として衰退しちゃうんじゃないかって心配ですね」
貫太郎「ただ、もちろんライブができないと意味ないなとは僕も思うんですけど、今現場がない分、コミュニティーが増えてると思うんですよ、いろんなところで。そこにコロナがあって自分たちで使える時間が多いから、下の世代の子たちを見てもレゲエを研究してる連中がちらほらいて、それが表に出た時に面白くなるんじゃないかなと思ってます」
RYO「燃えてる奴はこの時期をこの時期として利用して深めて行ってるってことね」
貫太郎「そうですね。こういうのってコミュニティー同士が集合体になった時に面白さが増すじゃないですか、時代世代関係なく」
RYO「ポジティヴな意見やね。そういう意味でこれがいいストレスになればいいね」
――期待したいです。今後の活動に向けた思いも訊かせてもらえますか?
貫太郎「このアルバムはもちろんいっぱい聴いて欲しいんですけど、コロナになって自分と向きあう習慣とか意識がついたんで自分を磨きたいなと思いますし、それをまたいい形でアウトプットして、聴く人がどこかしらで共感したりいい方向に気持ちを持ってってもらえればいいなと思います」
RYO「今結構アプリ(ポコチャ)で配信したりいろいろ頑張ってるんすけど、これをいい機会として現場じゃないところでの表現方法を突き詰めたいし、貫太郎が言ってくれたように今までのものとはまた違う揺るぎないものを作りたい。
ちょうど去年が(メジャー・デビュー)20周年だったんすけどコロナのおかげで何もできなかったんで、20周年ライブも含めて今までのことを総括して、来年以降にやってく方向、言いたいメッセージを見つけたいなっていうのが今年の目標ですね」
――さらに言っておきたいことなどあったら。
貫太郎「そうですね……ちょっとRYOさんと飲みに行きたいなとは思ってますね」
RYO「(笑)。じゃあマスクして2人で黙食しに行こか」
貫太郎「ぜひぜひ(笑)」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年8月4日
品番:PCD-25330
価格:2,750円(税込)
配信リンク:https://p-vine.lnk.to/yTmc7u
TRACKLIST
1. ようもないのに(Produced by ZIPSIES)
2. blue(Produced by ZIPSIES)
3. Fade out(Produced by ZIPSIES)
4. Nuku ft. ARARE(Produced by HASE-T)
5. CREATIVE24 - Album Ver.(Produced by CAMEL BEATS)
6. 回る ft. YAMATO HAZE(Produced by ZIPSIES)
7. 波の上(Produced by CAMEL BEATS)
8. WARUKUNAI ft. RYO the SKYWALKER(Produced by ZIPSIES)
9. 抱きしめて眠る(Produced by chop the onion)
10. 月のうらがわ(Produced by Tetsu&Masa/英ROCKS)

RYO the SKYWALKER 『今こそ -Jazzy Bass Remix-』 BUSH HUNTER MUSIC(2021)
リリース日:2021年7月22日
配信リンク:https://linkco.re/5NVhEQPM
TRACKLIST
1. 今こそ -Jazzy Bass Remix-