消えかけていた気持ちに火を点けたのは──新ベーシストの加入で拡充したサウンド・アプローチと、信念を込めた言葉の意味。血の通ったロックンロールは逞しくしなやかに、どこまでも流転する!

消えかけていた気持ちに

 札幌発の4人組ロック・バンド、SULLIVAN's FUN CLUB(以下、サリバン)が1年半ぶりのミニ・アルバム『Panta rhei』を完成させた。2019年は〈SUMMER SONIC〉へ出演し、〈マイナビ未確認フェスティバル〉でグランプリを獲得。2020年3月には初の全国流通盤をリリースし、順風満帆に突き進んでいたが、新型コロナウイルスの急速な拡大で事態が一変、活動がままならない状況に。この間、彼らはどういう心境で過ごしていたのだろうか。

 「楽しみにしていた前作のリリース・ツアーやアメリカの〈SXSW〉への出演が全部飛んじゃったのはすごく悲しかったです。でも、サリバンの核であるライヴができなくなったからこそ、止まっている場合じゃないというか。逆に、どう動き続けるかを考えながら即行動する姿勢に切り替えました。何とかスピード感を持って、誰もやっていないことをやろうと。例えば、Zoomの共有画面を使ってMVを作ってみたり、Twitterで毎日動画を投稿してみたり、とにかく動き続ける様を見せたかったんですよね。僕自身が人一倍そういう性格なんです」(ヨシダレオ、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 ベーシストのヤダニイナが昨年12月に脱退するも、今年2月にハセガワペイが新たなベーシストとして加入。バンドは新体制となって戻ってきた。

 「ヤダちゃんの脱退は12月よりもっと前に決まっていたので、わりと早くにメンバーの間で〈ペイしかいないよな〉って話をしてました。ギターのヨシダカズマが過去にペイとバンドを組んでいて、僕らとも対バンをしたりと親交が深かったんです。彼はいったん音楽から離れてたんですけど、どうしてもいっしょにやってみたかった。ファッションとか人となりも含め、自分にはない感性を持っているペイに憧れがあって。悪く言えば、嫉妬しちゃうようなヤツなんです(笑)。パンクやガレージが好きで飾らないプレイをする点も惹かれますね。今はサリバンがまた新たな段階に入った感じでめっちゃ楽しいです」。

SULLIVAN's FUN CLUB 『Panta rhei』 ATAMANICRUZE/SPACE SHOWER(2021)

 新作の幕開けを飾るのは、そんなハセガワペイの加入後初となる楽曲“DESTRUCTION”。冒頭の〈ハロー、まだ聴こえるか?〉という呼び掛けと、4人の音が爆発する瞬間に、紆余曲折あって息を吹き返したバンドの物語が見えて、早くもグッときてしまう。

 「活動を止めずにひたすらがんばっていたものの、ふと我に返ったときに心が疲れちゃったりもしたんです。そこで大きかったのが、まさにハセガワペイの存在で。“DESTRUCTION”には〈擦り切れた 感情に お前が針を落としてくれよ〉って歌詞があるんですけど、消えかけていた気持ちに彼がもう一度火を付けてくれたんですよね。僕の内面を書き殴っている歌詞だと思います。あと、自分がサリバンのファンだったら〈復帰後一発目にこういう曲を聴きたい〉みたいな、メタ的思考も入ってますね。ヨシダレオが強く影響を受けてきた速くてうるさい曲で、なおかつバンドがどんな決意で作ったのかが見えてくる曲にしたかった。“DESTRUCTION”と“火花”はそのツートップとして1、2曲目に置きました。“火花”は2年くらい前に作った曲なのに、現状とすごくハマってたので、自然にこの流れができた感じです」。