OPUS OF THE YEAR 2021
[ 特集 ] 2021年の100枚+

どんな一年だった?なんて呑気に振り返るのも難しいかもしれない……でも、そこに鳴っていた音が、こんなアルバムたちと共にいい記憶として残っていきますように!

 


ONE HUNDRED PLUS ONE
ライター陣の選ぶ2021年の〈+1枚〉

●赤瀧洋二

HISS GOLDEN MESSENGER 『Quietly Blowing It』 Merge/BIG NOTHING(2021)

忙しく過ごし、あまり新作を聴けなかった2021年。何とか自身が好きなアメリカーナだけは意識的にチェックし、出会ったのがこの作品。グラミー賞にノミネートされるほどの大傑作だった前作と比べても負けず劣らずの内容で、むしろ曲の良さと感傷的な彼のヴォーカルは前作以上と言っていいほど素晴らしい。個人的には田舎に移り住んだ年だったのだが、このアルバムの郷愁感があまりにも情景にフィットし、大変お世話になった一枚です。

 

●荒金良介

TREMONTI 『Marching In Time』 Napalm(2021)

クリードの元メンバーであり、アルター・ブリッジの敏腕ギタリストであるマーク・トレモンティのソロ5作目。みずからヴォーカル兼ギターを務める八面六臂の活躍ぶりで、良質のハード・ロック/ヘヴィ・メタル作に仕上げている。本家アルター・ブリッジよりも、マークのスラッシーなギターが冴え渡り、アグレッシヴな側面を強化。また歌も抜群に上手く、その歌唱力を存分に発揮したメロディアスな曲調も白眉。

 

●池谷瑛子

VARIOUS ARTISTS 『夜遊びに疲れてしまった レディメイド未来の音楽シリーズ CDブック篇 01』 オールデイズ(2021)

夜遊びに疲れるような機会はなく、YOASOBI好きな娘とおうちで過ごした2021年。まあ、とうに夜を使いはたした年頃だし……と諦めていた心を揺さぶったのがこの一枚。ジャズでボッサでモッドでガレージな全26曲は、選曲した小西康陽の小バコDJを聴くかのようなスウィング感。付属のブックレットには洒脱な掌編がぎっしり。モノとしての満足感と同時に、2022年こそは気の利いた音楽とおしゃべりの場へ出掛けたいなんて想いも滾ります。これぞ大人の夜ふかしの歌。

 

●一ノ木裕之

DAWN UPSHAW, GILBERT KALISH, SO PERCUSSION 『Caroline Shaw: Narrow Sea』 Nonesuch(2021)

生殺し状態のライヴ公演にまだまだ先は長いと改めて思い知らされた2021。モヤモヤを逃がすより発散、転化(点火)するものにグイグイ来ちゃうのはクリス・コルサノ&ビル・オーカットあたりが潮か。その意味で12月アタマの折坂悠太のライヴにも予想外なドンピシャの瞬間が。とか言いながら、選んだこの盤はじめソー・パーカッションの関連作はハズレがなかったし、ヒカルド・バセラール&カイナン・カヴァルカンチの盤などなど……ああ、きりがねえ。

 

●稲村智行

THE NOTORIOUS B.I.G. 『Ready To Die』 Bad Boy/Arista(1994)

94年作。LP盤が嬉しくも正規リイシューされたわけで早速再購入。きっかけは、ヒットメンのメンバーとして本作収録の“Big Poppa”ほか、90年代のヒップホップやR&Bのヒット曲を手掛けた名プロデューサーのチャッキー・トンプソンの訃報。OSUMI、ビズ・マーキーにザイオン・アイのズンビ、ブラッカリシャスのギフト・オブ・ギャブ……などなど他にもここには書ききれないシーンに多大なる貢献を果たしたレジェンドも……なんてこった2021。

 

●金子厚武

B’z 『FRIENDS III』 VERMILLION(2021)

サブスクの解禁、ミスチル・GLAYとの対バン・イベント〈UNITE〉の開催、そして、25年ぶりとなる〈FRIENDS〉シリーズ最新作のリリース。昨年以降の状況がなかったら、こんな世界線はなかったのかもしれないと思うと……いろいろ考えさせられます。松本隆トリビュートへの参加も含め、これまで一人勝ちだったB’zがJ-Pop/J-Rockへの還元を始めた2021年は、(社会的な意味合いも含めて)やはりUNITE=共生元年だったのかな。

 

●北野 創

harmoe 『きまぐれチクタック』 ポニーキャニオン(2021)

2021年も大量のアニメ/声優楽曲に触れたなか、活動コンセプトや本人たちのキャラクターも込みで惹かれたのが、本デビュー作を皮切りに3枚のシングルを届けた岩田陽葵と小泉萌香によるユニット。Tomggg、KiWi、春野らを迎えたフューチャー&チルな楽曲の新鮮さに加え、「不思議の国のアリス」「人魚姫」など各シングルごとにモチーフとなる物語を定めることで、毎回違った表情の2人を楽しめるのがとても良い! で、2022年は愛美と熊田茜音に期待です!

 

●鬼頭隆生

VARIOUS ARTISTS 『IN THE CITY - Soul Mastercuts』 ユニバーサル(2021)

2021年もタワーレコード限定コンピは有名無名を問わず音楽遺産に光を当てる好企画が目白押しでしたが、なかでもお薦めしたい盤がこちら。国分寺のバー〈Future Flight〉のマスター・谷田部博義氏による選曲は78年~84年産の洒脱なメロウ・ファンク~ブギーを選りすぐり、さらに小渕晃氏の解説文と鈴木英人氏によるイラストで豊かな視聴体験をナヴィゲート。パッケージだからこそ可能な、音に浸る楽しみを丹念に突き詰めていました。