〈このバンドは間違いない!〉と言えるくらい、個人的にビビッと衝撃を受けた札幌発のSULLIVAN's FUN CLUBがいよいよ全国デビューを果たす。結成は2016年。ヴォーカル/ギターのヨシダレオが高校時代の後輩であるタダカズキ(ドラムス)を誘ったのが始まりだそうで、2017年に脱退したメンバーに代わって同じく後輩のヤダニイナ(ベース)が加入。3ピースで活動を続けるなか、対バン相手だったヨシダカズマ(ギター)と出会い、2019年には彼を迎え入れて4人体制となった。
メンバー全員10代にして〈SUMMER SONIC〉へ出演し、〈マイナビ未確認フェスティバル〉でグランプリを獲得するなど、飛躍の年となった昨年を「何度もトライアル・アンド・エラーを繰り返しながらひたすら走る濃い1年だった」と振り返るヨシダレオ。がなるような歌唱を含みながらも言葉が聴き取りやすく、ピュアな響きに心を揺さぶられる楽曲の源泉はどんなところにあるのだろう。
「自分は基本雑食で隔たりなく音楽を聴いているので、何の影響が大きいかは今となっては言い難いですが、根底にあるのは多感な時期に聴いてた↑THE HIGH-LOWS↓、銀杏BOYZ、ニルヴァーナ、ウィーザーなどで、グッとくるメロディー、サウンドのバンドに特に影響を受けてます」(ヨシダレオ:以下同)。
新作『Sentimental Young Ones』には、ヒリヒリとしたバンド・アンサンブルを追求した“PINK YELLOW BLUEZ”や、これまでにないヘヴィーでラウドなサウンドとコーラスワークの融合をめざした8分超えの大曲“MI RA I”など、全6曲を収録。切実さとユーモアのバランスが心地良い一枚となっている。
「今作の収録曲は特に〈孤独〉がテーマになってるなと、曲順を並べてたときに感じました。昨今は簡単に人と繋がることができる状況で、一人になるってことが少なくなってますが、それでも拭えない孤独を感じることが去年は多くて、楽曲はやり切れない気持ちがきっかけで生まれることが多いですね。切実に訴えたいことは山ほどありますけど、堅苦しい表現が似合う人間ではないので、自分の生活のなかで出てくる自然な言葉運びをしようと意識してます」。
“PINK YELLOW BLUEZ”には〈夏の風はいつも僕を大人にした〉という歌詞があったりと、彼らの楽曲はキラキラとした瑞々しさがある一方で、10代とは思えないような大人っぽい切なさを感じさせる部分もある。
「自分ではあまり意識したことがないですが、思ってないことは歌わないので、どちらの側面も感じたまま反映されてるのかなと思います。昨年、本州にたくさんお邪魔して感じたのは、北海道の季節感はやはり特殊で、1年を通して切なくなる空気があるのが大きいのかもしれません」。
バンドマンのみならず、今くすぶりを抱えている多くの人に響き得るであろう“IMADA MINU SEIGI”も素晴らしい。
「そう言っていただけて嬉しいです。自分はとても夜型な人間なんですけど、眠れずに布団のなかでいろんなことを考えてるとよく辿り着く〈誰のことも、俺自身も許さないぞ!〉という歯茎むき出しの真っ黒い精神状態が元になってる曲だと思います。そんな真夜中に聴く〈未だ見ぬ正義〉という札幌の先輩のバンド(すでに解散)によく救われてるので、僭越ながらそのまま歌詞とタイトルになりました」。
ほかにも、ファルセットが美しいバラード“RE CORD NOISE”、「ヨシダカズマと自分のツイン・ギターのソロが最高です」と自信を覗かせる“DATE DATE DATE”など、初の全国流通盤とは思えないほどのクォリティーに度肝を抜かれる本作だが、ヨシダレオは「今年はもう1枚アルバムを出したい」とも言う。『Sentimental Young Ones』を機に、SULLIVAN's FUN CLUBのさらなる快進撃が始まる。
SULLIVAN's FUN CLUB
ヨシダレオ(ヴォーカル/ギター)、ヤダニイナ(ベース)、タダカズキ(ドラムス)、ヨシダカズマ(ギター)から成る4人組。2016年に結成、2019年7月より現体制となり、札幌を拠点に活動している。翌8月には〈サマソニ〉へ出演し、同月に開催された〈マイナビ未確認フェスティバル〉でグランプリを獲得。11月には初の配信シングル“PINK YELLOW BLUEZ”を発表、12月にはスタークローラーの来日公演のサポート・アクトを務める。2020年は1月に“RE CORD NOISE”、2月に“IMADA MINU SEIGI”を先行配信。このたび、ファースト・ミニ・アルバム『Sentimental Young Ones』(ATAMANICRUZE/SPACE SHOWER)を3月4日にタワーレコード限定でリリース予定。