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インタビュー

サイモン・フィリップス(Simon Phillips)=世界最高峰ドラマーが語るグルーヴとメロディーの関係、オープンハンド奏法の秘密

サイモン・フィリップス『Protocol V』

Photo by Stephanie Cabral

世界最高峰のドラマー、サイモン・フィリップス。フィル・マンザネラの801プロジェクト、ジェフ・ベック、マイケル・シェンカー・グループ、ミック・ジャガー、ザ・フー、正式メンバーとして加入したTOTOなど数多くのレコーディングやステージで活躍してきた。また、88年に始まった彼のソロプロジェクトである〈プロトコル〉は、ジャズをルーツにあらゆるジャンルの音楽を吸収した彼のトータルな音楽を聴くことができる〈場〉でもある。そして今、このシリーズの第5弾としてニューアルバム『Protocol V』がついに完成した。

約5年ぶりとなる本作では、前作にも参加していたアーネスト・ティブス(ベース)に加え、ジョン・マクラフリンとの仕事でも知られるオトマロ・ルイーズ(キーボード)、スティーヴ・ヴァイも絶賛するアレックス・シル(ギター)、ロベン・フォードとも共演しポストモダン・ジュークボックスにも参加しているジェイコブ・セスニー(サックス)が熱くクールな演奏を繰り広げている。

その内容は、期待どおりのハードフュージョン路線。そこではサイモン・フィリップスのオープンハンド奏法によるテクニカルかつパワフルなドラミングが冴え渡る。しかし彼の演奏はテクニカルなだけではなく、歌心のあるプレイであることも特徴の一つ。加えて、彼は天才的なドラマーであると同時に、優れたソングライターでもある。彼の曲は、複雑な作りであってもメロディックであることを忘れていない。さらに、エンジニアまで自分でやってしまうという音へのこだわりは、このアルバムを驚異的なサウンドへと高めた。彼を含めたメンバー全員によるスーパーテクニックの嵐、さらにそれが再生される際のエンジニアとしての腕前、つまり音像における左右の広がりや前後の奥行き、ナチュラルな残響、力強い音圧など、現在の彼が作り出した最高のプレイとサウンドを体験できる。

今回は、そんなサイモン・フィリップスに『Protocol V』について訊いた。

SIMON PHILLIPS 『Protocol V』 Phantom/ユニバーサル(2021)

 

メンバーが変わればサウンドも変わるし、僕は常に新しいものを学んでいる

――あなたのアルバムにおけるソロとプロトコルの違いはどこにあるのでしょうか。

「当初、プロトコルはアルバムの名前(88年作『Protocol』)として考えていたんだ。その後、『Force Majeure』(93年)、『Symbiosis』(95年)の時もプロトコルという言葉を使おうとは思っていなかった。でも、僕はプロトコルをバンド名にした。そして僕たちがある時レコーディングした作品が『Protocol II』(2013年)になった。

じつはレコーディング中はそれが何と呼ばれる作品になるのか分からなかったんだけどね。ところがセッションがうまく進んで素晴らしいサウンドの音楽ができた。そして〈ちょっと待てよ。僕はプロトコルの作品を作ったんだろうか?〉と思ったんだ。だからプロトコルという名前を呼び戻すべきじゃないかと考えた。ファーストアルバムから25年後にようやく気付いたんだ。

僕の大好きなバンド、シカゴはアルバムタイトルが『Chicago II』『Chicago III』と続いたし、TOTOも一時期までそうだった。僕はずっとそういうコンセプトが好きだったから、それを『Protocol II』でやったんだ。そうしてみたら、バンドのこれからの道筋が確立されたように感じた。〈よし、今後はこれにこだわってみよう〉と思ったんだ。これは自然な成り行きだったんだよ」

2013年作『Protocol II』収録曲“Enigma”

――本作『Protocol V』は5年ぶりのアルバムですが、変化した部分はどんなところでしょうか。

「明らかな変化は、バンドのメンバーが変わったことだね。メンバーが変われば、レコードのサウンドも変わる。それが大きな変化の一つだね。また、僕はハーモニーの面でも新しいものを学んでいるから、メロディーとしてより良いものを作れたと思う。これらの変化はバンドの自然な進化であり、素晴らしいことだと思っている」

『Protocol V』収録曲“Jagannath”