ユニバーサル ミュージックによるハードロック/ヘヴィメタルの再発シリーズ〈入手困難盤復活!! HR/HM 1000〉。2018年2020年、さらに2021年の〈VOL.3:ジャパメタ編〉2022年1月の〈VOL.4:北米編〉3月の〈VOL.5:世界15カ国編〉の5回にわたって、数多くの名盤が税込1,100円(2枚組は1,650円)という格安でリイシューされている、大好評の企画だ。

今回はその〈VOL.4〉を軸にしながら、タワーレコードのスタッフが、当企画で再発された海外メタルのおすすめ盤を3枚ずつ紹介し合った座談会をお届けする。タワーレコード渋谷店の田中達也、新宿店の熊谷祥、そして特別ゲストの音楽ライター・荒金良介が、メタルとその時代をアツく語らった(なお、いずれも限定盤なので、在庫はタワーレコード オンラインや各店舗でご確認を!)。


 

ゲイリー・ムーアのハードロック期の集大成『After The War』

――では、熊谷さんからおすすめ盤の紹介をお願いします。

熊谷祥(新宿店10F洋楽フロアチーフ)「まずは、ゲイリー・ムーアの『After The War』(89年)から。

GARY MOORE 『After The War(生産限定盤)』 Virgin/ユニバーサル(1988, 2022)

1曲目は前奏なんですけど……」

荒金良介「前奏が終わって、表題曲になるんですよね」

ゲイリー・ムーアの89年作『After The War』収録曲“After The War”

熊谷「そうです。ゲイリー・ムーアって、『Still Got The Blues』(90年)が大ヒットして、ブルースギタリストとして語られることが多くなったので、80年代のハードロック期が以前ほど語られなくなったんですよね。

『After The War』はブルースに向かう前の最後のハードロックアルバムで、ある意味、80年代の集大成。出身地であるアイルランド的な哀愁のあるメロディーに、特徴的なロングトーンの泣きのギターが絡むのが、マイナーコード好きとしてはたまりません(笑)。

そして、80年代のゲイリー・ムーアのバンドには、プログレやハードロック人脈の職人的なプレイヤーたちが参加しています。この作品では、ベースがレインボーとオジー・オズボーンのバンドにいたボブ・デイズリー、ドラムがコージー・パウエルです」

荒金「最高ですね」

熊谷「ええ。それと、ゲイリー・ムーアって良い作曲者でもあるんですよね。メロディーがわかりやすくて、痒いところに手が届くような曲を作る。ギタリストとしてだけでなく、作曲者としても注目してほしいと思います。

あと、5曲目の“Led Clones”にはオジー・オズボーンが参加しているのですが、あまり知られていないので、オジーのファンはこの曲のためだけに買ってもいいかも。

ゲイリー・ムーアの年作『After The War』収録曲“Led Clones”

6曲目はロイ・ブキャナンの“メシアが再び(The Messiah Will Come Again)”のカバーですが、ゲイリー・ムーアの〈泣きのギター〉がどういうものなのか、これを聴けばわかります。

ゲイリー・ムーアの年作『After The War』収録曲“The Messiah Will Come Again”

ここから80年代のハードロック期のゲイリー・ムーアをさかのぼって聴くのもいいかと思います。自分がハードロック期で1枚選ぶなら、この『After The War』ですね」