ユニバーサル ミュージックによるハードロック/ヘヴィメタルの再発シリーズ〈入手困難盤復活!! HR/HM 1000〉。2018年と2020年、さらに2021年の〈VOL.3:ジャパメタ編〉に2022年1月の〈VOL.4:北米編〉と3月の〈VOL.5:世界15カ国編〉の5回にわたって、数多くの名盤が税込1,100円(2枚組は1,650円)という格安でリイシューされている、大好評の企画だ。
今回はその〈VOL.4〉を軸にしながら、タワーレコードのスタッフが、当企画で再発された海外メタルのおすすめ盤を3枚ずつ紹介し合った座談会をお届けする。タワーレコード渋谷店の田中達也、新宿店の熊谷祥、そして特別ゲストの音楽ライター・荒金良介が、メタルとその時代をアツく語らった(なお、いずれも限定盤なので、在庫はタワーレコード オンラインや各店舗でご確認を!)。
ゲイリー・ムーアのハードロック期の集大成『After The War』
――では、熊谷さんからおすすめ盤の紹介をお願いします。
熊谷祥(新宿店10F洋楽フロアチーフ)「まずは、ゲイリー・ムーアの『After The War』(89年)から。

1曲目は前奏なんですけど……」
荒金良介「前奏が終わって、表題曲になるんですよね」
熊谷「そうです。ゲイリー・ムーアって、『Still Got The Blues』(90年)が大ヒットして、ブルースギタリストとして語られることが多くなったので、80年代のハードロック期が以前ほど語られなくなったんですよね。
『After The War』はブルースに向かう前の最後のハードロックアルバムで、ある意味、80年代の集大成。出身地であるアイルランド的な哀愁のあるメロディーに、特徴的なロングトーンの泣きのギターが絡むのが、マイナーコード好きとしてはたまりません(笑)。
そして、80年代のゲイリー・ムーアのバンドには、プログレやハードロック人脈の職人的なプレイヤーたちが参加しています。この作品では、ベースがレインボーとオジー・オズボーンのバンドにいたボブ・デイズリー、ドラムがコージー・パウエルです」
荒金「最高ですね」

熊谷「ええ。それと、ゲイリー・ムーアって良い作曲者でもあるんですよね。メロディーがわかりやすくて、痒いところに手が届くような曲を作る。ギタリストとしてだけでなく、作曲者としても注目してほしいと思います。
あと、5曲目の“Led Clones”にはオジー・オズボーンが参加しているのですが、あまり知られていないので、オジーのファンはこの曲のためだけに買ってもいいかも。
6曲目はロイ・ブキャナンの“メシアが再び(The Messiah Will Come Again)”のカバーですが、ゲイリー・ムーアの〈泣きのギター〉がどういうものなのか、これを聴けばわかります。
ここから80年代のハードロック期のゲイリー・ムーアをさかのぼって聴くのもいいかと思います。自分がハードロック期で1枚選ぶなら、この『After The War』ですね」
デイヴ・メニケッティのギターを聴くY&T『Black Tiger』
――2枚目はY&T『Black Tiger』(82年)です。

荒金「これは盤を持っている人は多いと思いますが、〈VOL.4〉の売りのひとつだと思います。ぜひ聴いてほしいな」
熊谷「ずっと廃盤でしたからね。
前進バンドのイエスタデイ&トゥデイはハードなポップロック路線だったのですが、81年の『Earthshaker』からY&Tに改名して、一気にハードロックサウンドになったバンドです。ルックスもいかにも80年代メタルって感じなのですが、根がポップなのでアメリカンポップスの延長線上で聴けるんですよ。ジャケットがけばけばしいから敬遠している人もいるかもしれませんが、ボン・ジョヴィやジャーニーが好きなロックファンにも聴いてほしいですね。

あと、デイヴ・メニケッティもゲイリー・ムーアのように泣きのギターを弾くギタリストなのですが、アメリカ人なので感性やスタイルがちがうんですよね」
荒金「デイヴ・メニケッティのギターって、演歌の心に通じるようなサウンドですよね。なので、日本人の心に響くと思います」
熊谷「レスポールをマーシャルに繋いだ音を活かす、トリッキーなプレイをしない正統派で、わかりやすいハードロックな音を出すギタリストなんですよね。5曲目の“Forever”がおすすめです」
――タワーレコードのコンピレーションアルバム『DEFINITELY METAL – 80’s HR/HM Edition』にも選ばれていました。
荒金「名曲です!」
熊谷「メニケッティの魅力を知るならこの曲かなって。90年代にブルースロック寄りの彼のソロアルバムが出ていて、すごく良いのでぜひ再発してほしいですね」
荒金「“Forever”の次が“Black Tiger”で、この2曲の流れが最高ですね」
カントリーやジャズロックがごちゃまぜのディキシー・ドレッグス『Free Fall』
――最後はディキシー・ドレッグスの『Free Fall』(77年)です。

熊谷「スティーヴ・モーズという、いまのディープ・パープルのギタリストが全曲作曲したオールインストアルバムです。サウンド的に、シリーズ中いちばん異色だと思います。メタルじゃなくて、カントリーやジャズロックがごちゃまぜの音楽性なんですよね。
スティーヴ・モーズは、ディキシー・ドレッグスの後にスティーヴ・モーズ・バンドで活動して、再結成したカンサスとディープ・パープルに加入するんですよ。彼は、元々マイアミの大学で音楽科を専攻していて、同級生にパット・メセニーとジャコ・パストリアスがいたそうです。だから、メタルギタリストじゃないんですけど、ジャズでは売れなくて、仕事仲間にメタル系プレイヤーが多かったので、日本では『ヤング・ギター』や『Player』で取り上げられていたんですね。テクニックもあって、音楽性も幅広いのですが、それが仇となって器用貧乏な感じもあります。
メタルとして聴くと〈なんじゃこりゃ〉となってしまうかもしれませんが、ギターが純粋に好きな人はぜひ手に取ってほしいですね。

ちなみに、彼はカンサスでの活動後に一度音楽業を辞めて、パイロットになっちゃうんです」
田中達也(タワーレコード渋谷店副店長)「ブルース・ディッキンソンと一緒だ(笑)」
熊谷「このジャケットが飛行機なのは、偶然だと思うんですけどね(笑)。
使っているギターはミュージックマンのシグネチャーモデルで、ピックアップがすごく変な組み合わせになっていて、数十種類の音色を出せるそうです。不思議な人ですね」
荒金「このアルバム、ドラマーがウィンガーのロッド・モーゲンスタインという、めちゃめちゃ上手い人なんですよね。“Cruise Control”という曲がハチャメチャな感じで、ロックファンも楽しめる曲だと思います」
バンドが行き場を失った90年代に発表されたジョン・ボン・ジョヴィのソロ作『Destination Anywhere』
――では、田中さんのおすすめをお願いします。
田中「僕が今回選んだのは、リアルタイムで聴いたものばかりですね。まず、ジョン・ボン・ジョヴィの『Destination Anywhere』(97年)。

JON BON JOVI 『Destination Anywhere(生産限定盤)』 Mercury/ユニバーサル(1997, 2020)
僕の姉が、高校生の頃にアメリカに短期間留学して、元々無口だったのに帰国したら陽気になったんですよ(笑)。その姉がいきなり〈あんた、これがアメリカの最先端だから、とりあえず聴きな〉って言って差し出したCDが、マドンナとシンディ・ローパーとボン・ジョヴィの『New Jersey』(88年)だったんです。それが、洋楽を聴くきっかけになりました。
当時のボン・ジョヴィは一気にブレイクした黄金期で、僕としては『Cross Road』(94年)までが第一期と捉えています。次の『These Days』(95年)は方向性に迷いを感じる作品で、その後にメンバーはソロ活動を始めたんですね。そのときに出されたのが、ジョン・ボン・ジョヴィのソロ作『Destination Anywhere』です」
熊谷「『These Days』はグランジ以降だったこともあって、重くて暗いですよね。音楽誌のインタビューで、ジョンとリッチー・サンボラが〈どう評価されるのかが気になる〉と言っていたのが印象的です」
田中「90年代に入ってボン・ジョヴィが行き場を失って、HR/HM自体も混迷期だった時代ですね」
荒金「過渡期ですね。でも、ダークかつ哀愁漂う『These Days』は好きなんですよね。疲れたときに聴くとハマるので」
田中「そして、この後ボン・ジョヴィは再結集して第二期に入り、『Crush』(2000年)や『Bounce』(2002年)で成功するんですけど、その成功も、ジョンが『Destination Anywhere』でメッセージ性の強いロックの方向性を見つけられたからなのかなと。
どの曲も名曲ですが、いちばん好きなのは表題曲です。〈どこへでも行ってやるよ〉という感覚があって、学生時代にずっと聴いていた曲ですね」
――『Destination Anywhere』はストレートで土臭いアメリカンロックという印象です。
熊谷「ボン・ジョヴィは『Lost Highway』(2007年)でカントリーをやっていて、元々そういうアメリカーナ的な志向性があるんです。『Destination Anywhere』は、当時はモヤモヤした作品ですが、いまこそ再評価できる作品だと思います」
トミー・リーがミクスチャーに挑んだメソッズ・オブ・メイヘム『Methods Of Mayhem』
――田中さんの2枚目は、モトリー・クルーを脱退した後にトミー・リーが始動させたバンド、メソッズ・オブ・メイヘムの『Methods Of Mayhem』(99年)。

METHODS OF MAYHEM 『Methods Of Mayhem(生産限定盤)』 MCA/ユニバーサル(1999, 2018)
荒金「これも名盤ですね!」
熊谷「ミクスチャーロックの代表的名盤の一枚と言ってもいいですよね」
田中「トミー・リーのことを詳しく知ろうと思ったきっかけが、これだったんですよね。
99年当時、僕はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかリンプ・ビズキットとかコーンとかのラウドロックを聴いていたんです。なので、リンプのフレッド・ダーストが参加していたことがきっかけで、メソッズ・オブ・メイヘムを知りました。音は、まさにミクスチャーロックですね」
荒金「完全にラップメタルですね」
熊谷「リンプ・ビズキットやリンキン・パークのファンでこの作品を知らない人がいたら、おすすめしたいですね。でも、トミー・リーのバンドだからって、当時の音楽誌のミクスチャーロックの特集では、なぜかこれだけ取り上げられていなかったこともあった(笑)」
荒金「見過ごされがちですね。メタルファンにはラップが苦手な方もいますが、ぜひ聴いてほしい」
田中「80年代からのHR/HM好きなは敬遠しているかもしれないし、ミクスチャー好きからは〈モトリー・クルーのトミー・リーのバンド?〉って思われちゃうので、狭間にあるアルバムなんですよね。ただ、作品はすごく良い。トミー・リーは意外と歌が上手くて、ボーカルがめちゃくちゃかっこいいんですよね」
荒金「そういえば、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードがパンテラから影響を受けてファイトというバンドをやっていましたが、特にファーストアルバム『War Of Words』(93年)は素晴らしくて。もしこの作品も聴いてない方には、ぜひおすすめしたいです」
熊谷「90年代って、メタルアーティストがそういう時代性を反映させた作品を作っているんですよね。デフ・レパードも『Slang』(96年)というグランジ的な重くて暗い音の作品を出しています」
荒金「ファンの間では賛否両論でしたが、いま聴くと良いんですよね」
田中「この後、トミー・リーはメソッズ・オブ・メイヘムの活動をすぐにやめて、ソロアルバム『Never A Dull Moment』(2002年)を出すんです。あれも、僕はすごく好き。トミー・リーが歌い上げていて、彼の歌を満喫できる作品なので、ぜひ聴いてほしい。泣けます」
ロックが頭でっかちになった時代の爆走ロックンロール、ヘラコプターズ『High Visibility』
――3枚目はヘラコプターズの『High Visibility』(2000年)です。

THE HELLACOPTERS 『High Visibility(生産限定盤)』 Polar/Universal/LED/Psychout/ユニバーサル(2000, 2018)
田中「HR/HM好きが90年代に道を見失いかけていた頃、北欧では相変わらずHR/HMが盛り上がっていたんですよね。メロディックデスメタルも勃興していましたが、僕にはシンプルでストレートな爆走ロックンロールがフィットしました。それこそ、代表はスウェーデンのバックヤード・ベイビーズとこのヘラコプターズですね。
もう、疾走感がたまらないんですよ! テクニックなんていらない! 僕がとにかく求めていたのは、シャウトして疾走するロックでした。グランジやミクスチャーが入り乱れて、ロックが変化していた時期に、〈いや、やっぱロックってこれっしょ!〉って道を示してくれたのがヘラコプターズなんです。シンプルで良質なロックンロール。本当にもう、この一言に尽きますね」
熊谷「90年代の終わり頃って、ロックバンドがみんな頭でっかちになっていたんですよね(笑)。我々ファンが音楽について語るときも、やたら難しいことばかり言っていた。それに疲れていたときにヘラコプターズを聴いて、〈おお!〉ってなりました。初期衝動を思い出させてくれたんですよね」

――2000年といえば、ロックンロール/ガレージロックリバイバルの時期ですね。
田中「日本では、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITYが活躍していた時期も被っています。この後、ホワイト・ストライプスとかストロークスとかがロックンロールリバイバルに火をつけるんですけど、ヘラコプターズの疾走感は、彼らにはないんですよね。僕は、スレイヤーのようなHR/HMを聴いてきた世代だったので、とにかくスピード感が欲しくて」
荒金「僕はファースト(96年作『Supershitty To The Max!』)とセカンド(97年作 『Payin’ The Dues』)が大好きで、初めて聴いたときにすごく衝撃を受けたんです。98年の恵比寿GUILTYでの初来日公演も観に行きましたけど、めちゃめちゃかっこよかった!
ちなみに、彼らは今年14年ぶりにニューアルバム『Eyes Of Oblivion』を出したばかりなんですが、この内容がまた素晴らしくて。特に表題曲は男泣き哀愁ロックの決定打みたいな楽曲で、入門作としてもオススメしたいです」
熊谷「ヘラコプターズってパンクやメタルのファンには知られていましたが、普通のロックファンには知られていなかったんですよね」
田中「HR/HMに括られちゃっていましたからね」
熊谷「そう。ハイヴスがデビュー時に雑誌のインタビューで〈ストロークスに対抗心はありますか?〉と訊かれて、〈いや、俺たちのライバルはヘラコプターズだよ〉と答えていたんです。それを読んだ後輩が、〈ヘラコプターズって誰?〉って僕に訊きに来たことを覚えています」
メタリカ・ミーツ・ビートルズ、ギャラクティック・カウボーイズ『Space In Your Face』
――では、最後に荒金さんのおすすめを教えてください。
荒金「〈VOL.4〉のカタログを見た時にいちばん〈おっ!〉って驚いたのがギャラクティック・カウボーイズの『Space In Your Face』(93年)だったんです。

GALACTIC COWBOYS 『Space In Your Face(生産限定盤)』 Geffen/ユニバーサル(1993, 2022)
彼らはもちろんいまも活動しているんですけど、このアルバムが最高傑作だと思います。なので、〈よくぞこれを再発してくれた!〉と思って。
紹介文にもあるとおり、〈メタリカ・ミーツ・ビートルズ〉と言うべき音楽性で、ザクザクしたスラッシュメタルのギターリフと、ビートルズ愛にあふれた、びっくりするようなグッドメロディーが融合しているんです。1曲目の“Space In Your Face”から曲が良すぎて、ノックアウトされちゃいますね。
メタルファンは知っていると思うんですけど、普通のロックファンにはあまり知られてないと思うので、ぜひ買って聴いてほしいです」
田中「90年代って良いメタルバンドが多いのですが、埋もれちゃっていますよね」
――ロックシーンがオルタナの時代になってしまったからでしょうか。
荒金「そうですね。アイ・マザー・アースなんかも、めちゃめちゃ良い作品を出していましたよね」
熊谷「『Space In Your Face』は、友だちが聴いていたことを覚えています。でも、ジャケの感じでハードコア系だと勘違いしたんですよね。〈良いな〉と思いながらも、スルーしちゃっていました」
荒金「イケているかどうかと言ったら、ちょっと中途半端なジャケですからね(笑)」

田中「サウンドはアンスラックスに近いですね」
熊谷「たしかに。アンスラックスもパンクファンで好きな人が多いですし、ギャラクティック・カウボーイズもパンクやメロコア好きにアピールできていれば、もっと認知されていたかもしれません。それも、雑誌やメディアがジャンルで分かれていたせいだと思いますが」
荒金「そうですね。ギャラクティック・カウボーイズはメロディーがキャッチーなので、イナフ・ズナフのようなメロディアスなバンドが好きな人に刺さると思います。
ところで、今回のリイシューは、リリース当時のライナーノーツが封入されていますよね※。当時の空気が感じられるから、これはうれしい」
熊谷「そうそう。そういえば、ニルヴァーナの『Nevermind』(91年)のライナーって、リリース当時は『BURRN!』の方が書いていたんですよね」
荒金「平野和祥さんですね」
熊谷「メタルの文脈でニルヴァーナが紹介されていたこととか、いまじゃ考えられないので、当時の空気を知ることができるのはおもしろいですよね」
田中「グランジバンドとされていたサウンドガーデンも、HR/HM好きに聴かれていたバンドですよね」
メタルファンにもパンク好きにも薦めたいウォリアー・ソウル『Last Decade Dead Century』
――そして、荒金さんの2枚目は、ウォリアー・ソウルの『Last Decade Dead Century』(89年)です。

WARRIOR SOUL 『Last Decade Dead Century(生産限定盤)』 Geffen/ユニバーサル(1989, 2022)
荒金「ウォリアー・ソウルも、メタル界隈では知られているけど、それ以外ではあまり知られてないかも、という印象です。
今回、なんと初期の3枚がすべて再発されたので、それがものすごくうれしい。しかも、このファーストはサブスクにないんですよ。だから、そういう意味でもぜひ買ってほしい。
ウォリアー・ソウルは、当時メタリカのラーズ・ウルリッヒが彼らのことをすごく気に入って、メタリカのサポートをやっていたんです。さらにゲフィンと契約していて、周りの体制もすごく良かったけど、おそらく売れなかったんでしょうね」
――どんなサウンドなのでしょうか?
荒金「説明文にもあるように、当時〈メタル版ドアーズ〉と紹介されていて、音は激しいのですが、サイケっぽい雰囲気もある。
あと、彼らはデトロイト出身です。デトロイトって、アリス・クーパーのような大御所もいますが、どちらかと言えばMC5やストゥージズが有名ですよね。なので、ああいったバンドに通じるパンキッシュなエナジーがすごくあるんです。メタル好きはもちろんですけど、パンク好きにも響く、普通にかっこいいロックアルバムですね。
リリースは90年で、まさにグランジが爆発する前夜でした。ニルヴァーナの『Bleach』やサウンドガーデンの『Louder Than Love』のリリースが89年で、こういうヘビーな音が来ていた時期なので、このアルバムもグランジ的なダーティーな空気が表れている。そのバランスが絶妙で、めちゃめちゃかっこいいんですよ。
初期3枚はどれ良いので、ぜひこれを機に聴いてほしいです」

田中「ライナーは伊藤政則さんですね」
荒金「そうそう。伊藤さんがラジオ(『POWER ROCK TODAY』)でも推していたんです」
〈北米のメタル〉の魅力とは?
――ところで、〈VOL.4〉は北米編と銘打たれていますが、みなさんは〈アメリカのメタル〉をどう位置づけていますか?
荒金「アメリカのメタルフェスに行ったことがありますが、スリップノットとかファイヴ・フィンガー・デス・パンチとかマリリン・マンソンとかコーンとかのあたりが、アメリカでのメタルのイメージですね。
イギリスだとまたちょっとちがって、それこそスラッシュとも一緒に活動しているマイルス・ケネディのアルター・ブリッジはアメリカのバンドですけど、彼はホワイト・スネイクの流れを汲むソウルフルな歌声の持ち主で、イギリスを含むヨーロッパ圏ではものすごく人気が高いんですよね。
もちろん、それだけじゃないですけど、アメリカとイギリス、ヨーロッパとでは、ぜんぜんちがいますよね」
熊谷「90年代以前のアメリカのメタルって音はハードなんですけど、そのハードさを抜きにすると、先ほどのボン・ジョヴィのように根はカラっとしたアメリカンロックなんですよね。
あと、良い意味で大衆に媚びているというか、ダサかっこいい感じがある(笑)。80年代のいわゆるヘアメタルなんてまさにそうで、〈良いものは良いよね〉って開き直っている感じがありますね。でも、そこが良いんですよね。モトリー・クルーだってあんな派手な格好をしていましたが、曲は超ポップじゃないですか」
田中「アメリカにはドリーム・シアターのように曲からアルバム全体の構成まで全部緻密に考え抜くバンドもいますし、優秀なプレイヤーも多いですが、基本的にはダイナミックで大味で〈ドーン! どうぞ!〉というスタイルだという印象です。シンプルでわかりやすいんですよね」
熊谷「スケール感があるから、大雑把でも許せる。AC/DCがなぜアメリカで流行ったのかというと、車を運転しながら聴くのが気持ち良かったからだと言う人もいます。ウォリアー・ソウルも、これをガンガン流しながら車を運転したら、絶対に気持ち良いですよね」
荒金「カナダのバンドですけど、ニッケルバックがまさにそうですね。ハイウェイのあの景色に合う音楽なんでしょうね」
熊谷「あと、ハリウッド映画のスケール感にやたらと合うんですよね。たとえば、『ラスト・アクション・ヒーロー』(93年)とか」
荒金「懐かしい! メガデスやAC/DCが使われていましたね」
熊谷「そうです。『ターミネーター2』(91年)では、ガンズ・アンド・ローゼズの“You Could Be Mine”が使われていたじゃないですか。北米以外のバンドが真似しても、あのスケール感と乾いたかっこよさは出せないんですよね」
男臭い暴走ロックンロール! オールマイティー『Blood, Fire & Love』
――さて。荒金さんの3枚目はオールマイティーの『Blood, Fire & Love』(89年)です。オールマイティーはスコットランド出身のバンドですね。

THE ALMIGHTY 『Blood, Fire & Love(生産限定盤)』 Polydor/ユニバーサル(1989, 2022)
荒金「ものすごく好きなバンドで、今日もオールマイティーのTシャツを着てきました。
今回選んだのはファーストで、この1枚目と2枚目の『Soul Destruction』(91年)が〈VOL.5〉で出ています。この2枚は、まさにモーターヘッド直系の暴走ロックンロール!
個人的にはバンドらしさが出てきた3枚目の『Powertrippin’』(93年)を経て、さらにオリジナリティーを開花させた4枚目の『Crank』(94年)が最高傑作だと思うんですけど、この1、2枚目からポップでパンキッシュになった後期の作品を含めて、どの時期もかっこいいバンドです。
『BURRN!』のようなメタルメディアで取り上げられていて、90年代の日本でものすごく人気があったバンドですね。40、50代のメタルを卒業した方でも、〈オールマイティーは聴いてましたよ!〉って話が弾むことが多くて」
――いい話ですね(笑)。
荒金「ただ、作品がサブスクにあまりないんです。なので、ぜひ今回買ってほしいですね。入口としては、『Crank』収録曲のパンキッシュなロック“Jonestown Mind”がおすすめ。『HEAVY METAL SOUNDHOUSE』で、伊藤政則さんが必ずかけていました。歌声、演奏、どれも最高です。
95年に日比谷野外音楽堂でライブがあって、オープニングアクトがディジー・ミズ・リジーだったんです。この曲を1曲目にやって、あまりにもかっこよくて宇宙まで飛びました(笑)」
田中「オールマイティーは、僕も何枚か持っていました。声がしゃがれていて、かっこいいんですよね」
荒金「そう。男臭くて、唯一無二なんですよね。ちなみに、ボーカルのリッキー・ウォリックは、ソロ活動もしつつ、ブラック・スター・ライダーズというバンドをやっています」
非メタルファンにもマニアにもおすすめの〈入手困難盤復活!! HR/HM〉
――では、最後に本日のご感想をお聞かせください。
熊谷「自分はメタルが大好きなんですけど、この再発シリーズには〈こんなに知らないバンドが出てくるのか!?〉と毎回驚かされています。〈VOL.10〉くらいは軽くいけるほどのネタが絶対あるはずなので、今後も楽しみですね。
ただ、メタルという枕詞があるからって、敬遠してほしくはないですね。もちろんメタル好きな人には買ってほしいのですが、メタル好きじゃない人もハマる作品が絶対にあるはずなので。〈どうせメタルでしょ?〉と非メタルファンからは思われがちですが、メタルって音楽性が幅広くて演奏力の高さや楽器へのこだわりも強いので、ぜひこの機会に入ってもらいたいなと」
田中「僕は、90年代に見過ごされている名盤が多いことに気づかされました。この機会に、ミクスチャーだけでなく、90年代のHR/HMを洗い直してみようかなと。
あとは、熊谷さんが言うように、〈HR/HM〉というラベリングやジャンルに囚われず、実際に聴いてみてほしいですね」
荒金「そうですね。良い作品がすごく多くて、取りこぼしているものがたくさんあったので、僕も何枚か買おうと思っています。
あと、若い人がどう思うのかは、すごく気になりますね。この座談会記事を読んで興味を持った方には、ぜひどれか1枚でも手に取ってほしいです」
熊谷「〈VOL.1〉で『Mother Heads Family Reunion』(94年)が再発されたリッチー・コッツェンは超美形なので、そういうところからメタルに入ってもいいと思います(笑)」
田中「80~90年代のジョン・ボン・ジョヴィも、めちゃくちゃかっこいいですしね。セバスチャン・バックなんかも、ルックスが最高です」
――見た目ですか……(笑)。とはいえ、ステージングやパフォーマンス、ファッション、佇まいのかっこよさというのも、ロックやメタルにおいては重要ですよね。
荒金「それと、このシリーズではメロハー(メロディックハードコア)で渋くて良い作品が出ているので、おすすめです。コールド・スウェット『Break Out』(90年)、ジャイアント『Last Of The Runaways』(89年)、スティールハート『Tangled In Reins』(92年)など、良い作品なのに中古盤市場で高値が付いてしまっているものが多いんですよね。
あと、スレイヤーの2枚組ライブ盤『Decade Of Aggression』(91年)がこの値段で買えるのは、とても良いと思います。これ、スレイヤーへの入り口として最高なんですよ。〈スレイヤーとは何ぞや〉っていうのがよくわかります。
テスラも〈VOL.4〉で出た3枚は良い時期で、特に『Psychotic Supper』(91年)はすごく良いアルバムです。『Five Man Acoustical Jam』(90年)というライブ盤も、めちゃくちゃおすすめですね。聴き逃していた人は、改めて聴いてほしいです。
他にもトラ・トラやモンスター・マグネットの『Superjudge』(93年)、『Dopes To Infinity』(95年)、『Powertrip』(98年)……。良い時期の作品ばっかりだな~」
田中「黄金期ですね」
荒金「本当にそう。ジャッカルの2枚やトリクスター、リトル・シーザーなんかも良いんですよ。メロディーが良いので、メタル好きじゃなくても心を掴まれるはず。掘り出し物が多いので、〈買い〉ですね」
熊谷「ユニバーサルの再発シリーズはいろいろなジャンルがありますが、メタルは〈VOL.5〉と長く続いているんですよね。それだけ良い作品がたくさんあって、好評だということは知ってほしいですね。個人的には、南米編やオセアニア編を出してほしいです!」

RELEASE INFORMATION
初CD化&入手困難盤復活!! HR/HM VOL.5:世界15カ国編
大好評シリーズ第5弾! ゲイリー・ムーア、グラス・タイガー、ゴーキー・パーク、ステージ・ドールズ、チャイナ、デアー、ドロ、マグナム、ウォーロックなど豪華アーティストの作品68タイトルが低価格1,100円(税込)にて限定発売!
https://tower.jp/article/feature_item/2022/01/07/0102
入手困難盤復活!! HR/HM VOL.4:北米編
アリス・クーパー、サミー・ヘイガー、ハート、エクソダス、パット・ベネター、テスラなど現在入手困難となっているHR/HM豪華アーティストの作品が低価格1,100円(税込)にて限定発売! シリーズ第4弾は北米編として全78タイトルが一挙リリース! お買い得なこの機会をお見逃しなく!
https://tower.jp/article/feature_item/2021/11/10/0102
INFORMATION
タワーレコード渋谷店
東京都渋谷区神南1-22-14
営業時間:11:00~22:00 ※当面の間営業時間を短縮しています
電話番号:03-3496-3661(TOWER RECORDS CAFE:03-3496-3672)
https://towershibuya.jp/
タワーレコード新宿店
東京都新宿区新宿3-37-1 フラッグス9~10F
営業時間:11:00~22:00 ※当面の間営業時間を短縮しています
電話番号:03-5360-7811
https://tower.jp/store/Shinjuku



