©Mark Seliger
左から、デヴィッド・ブライアン(キーボード)、エヴァレット・ブラッドリー(パーカッション/バックヴォーカル)、ヒュー・マクドナルド(ベース)、ジョン・シャンクス(ギター)、フィル・X(ギター)、ジョン・ボン・ジョヴィ(ヴォーカル)、ティコ・トーレス(ドラムス)

夜明けのランナウェイから40年、7人組に進化したバンドはついに永遠へと到達した。幾多の苦悩を乗り越えた現在、みんなの待ち望んだボン・ジョヴィがここにいる!

歓喜への回帰

 リリースに先駆けてジョン・ボン・ジョヴィ(ヴォーカル/ギター)が語ったところによると、ボン・ジョヴィ4年ぶりのアルバム『Forever』は、パンデミックや、その影響下で内省的な作品になった前作『2020』からの〈歓喜への回帰〉が大きなテーマとしてあるという。

BON JOVI 『Forever』 Island/ユニバーサル(2024)

 「曲作りからレコーディングのプロセスまで、一貫してね!」――そんなジョンの言葉を裏付けるのが、3月に発表された先行シングルにしてアルバムの1曲目を飾る“Legendary”だ。いわゆるハートランド・ロック調のこのアンセムは、ジョンが海外メディアに語ったところによると、萎縮した声帯を再建するという、もしかしたらヴォーカリストとしては致命傷になるかもしれない難しい手術にミュージシャン人生を賭けるジョンを支えた妻、ドロシアに対するオマージュなのだという。いち早くジョンの喉の不調に気づき、彼に伝えたのもドロシアだったそうだ。

 〈僕には茶色い瞳の女の子がいる。彼女は僕を信じているんだ〉というヴァン・モリソンの“Brown Eyed Girl”をモチーフにした“Legendary”のパンチラインが、ジョンを励まし続けた妻のことであることをジョンも認めている。ジョンが言う〈歓喜への回帰〉は、ふたたび歌えるようになったことも指しているのかもしれない。

 気象災害から人々を守るSDM(特別災害対策本部)の奮闘を描くフジテレビ水10ドラマ「ブルーモーメント」の主題歌に使われている“Legendary”を作る際、ジョンたちがスタジアムに集まった大観衆が声を上げる光景を思い描いていたことは、聴く者を鼓舞するシンガロング・コーラスと頭打ちのドラムから、まず間違いないと思うが、前述の“Brown Eyed Girl”に加え、ジョンたちは歌詞にもう1曲、ロック・クラシックのタイトルを引用している。ニール・ダイアモンドの“Sweet Caroline”だ。

 “Brown Eyed Girl”と同じく恋する女の子への気持ちを歌った、その“Sweet Caroline”は69年のヒット・ナンバーだが、近年さまざまなスポーツの試合で観客が歌うチャントとしてリヴァイヴァルしているそうで、しかもボン・ジョヴィの“Livin’ On A Prayer”とメドレーで歌われることもあるようだ。〈俺たち全員で“Sweet Caroline”をシンガロングする〉という一節は、その光景――声を出すことができなかったパンデミック下のライヴから、ふたたびパンデミック以前のライヴができるようになったことを祝福しているようにも聞こえる。