(左から)CHIPPI、真琴、Yoshinao

新潟を拠点に活動するオルタナティブR&Bバンド、E.sceneが新作EP『HEAT』をリリースした。ドラムのYoshinaoとベースのCHIPPI、ボーカルの真琴で構成されるこの三人組は、CHIPPIが手掛ける同期と生演奏のグルーヴが絡み合うスタイルで現在人気を拡大してきている。今年3月にはEP『Found me』をリリースし、同名の自主企画イベントも成功させたばかりだ。

前作から僅か8か月で届けられた今作は、これまで以上に生演奏の緻密なグルーヴが際立った作品だ。しかし声ネタのようなコーラスの入れ方など随所にDTM的なセンスがあり、ヒップホップ以降のループ感が感じられる瞬間もある。それは現行ジャズともリンクするようなものであり、一言で語れないような複雑な魅力に繋がっている。

雪国・新潟から届いたこの熱気溢れるユニークな作品は、いかにして生まれたのか? 今回はE.sceneと同じく新潟に住む私、アボかどがその裏に迫った。そして今後の展望は?

E.scene 『HEAT』 bament(2022)

 

内から外へ放つ〈HEAT〉

――結構早いスパンで届いた新作ですが、制作期間としては前作が終わってから作った形ですか?

CHIPPI「そうですね。前回のレコーディングが終わって完成した後からデモを作って、自主企画をやったぐらいから三人で取り掛かりました。レコーディングしたのは8月ぐらいでしたね」

※編集部注 2022年3月6日に東京・新宿のMARZで開催された〈Found me〉。対バンはBialystocks

――プレスリリースに掲載されたコメントには〈今作では、E.scene の音楽を生み出す中で、一番内側にあるものを外側に向けて解放することができました〉とありましたが、それはどういう部分で感じましたか?

CHIPPI「前作の制作期間にはライブができなかったこともあり、ライブでやるイメージよりも〈自分の内面的なところをバンドで固めて音源で消化する〉みたいな意識が強かったんですよね。

でも、今作はライブを意識したのと、自分たちの音楽を聴いてくれている人と接する機会が増えたことが大きくて。テーマ的には自分の周りで起こっていることを書いているのに変わりはないんですけど、気持ち的にそれが外に向けて発信できたと思います」

2020年のライブ動画

――音源制作とライブが強く結び付いているんですね。

CHIPPI「そうですね。だんだんそういう気持ちになってきているっていうのもあります。

今回のEPではレコーディング前にライブでもやっていた曲があって、ライブの場でブラッシュアップしてテンポを上げたりしたこともありました。そういった意味でも今作はライブとの関連性が高いです」

――今回のEPは〈HEAT〉というコンセプトを先に決めたものですか?

CHIPPI「今まではやっていくうちに三人の中でできてくるような感じでしたが、今作はテーマを先に決めました。自主企画が終わって話していく中で、外側に向く意識みたいなのが合致していたんですよね。それで先にテーマを決めることになり、ストレートだけど人によって思い浮かぶ景色や情感が違う〈HEAT〉という単語になりました」

――最初からEPで作る予定でしたか?

CHIPPI「とりあえず〈HEAT〉というテーマを設けた上でいっぱい曲を作って、タイミング的に4曲のEPサイズがいいと思い、デモから選んでこの4曲にまとまったという感じですね」