インタビュー

伴瀬朝彦の温かみと毒気――同世代シンガーソングライター三輪二郎が訊く『浮浪便』と〈伴瀬節〉の秘密

伴瀬朝彦

同世代のシンガーソングライター、伴瀬朝彦と三輪二郎。2019年の始め、両者ほぼ同時期にアルバムを発表後、コロナ渦で音楽活動が順調に出来ない中、しかし、まず3年ぶりに伴瀬朝彦が3作目のソロアルバムをリリース。タイミングよく、5作目となる新作を準備中の三輪二郎に『浮浪便』を聴いてもらい、2人に対談をしてもらった(2022年12月9日、オンラインにて)。

伴瀬朝彦 『浮浪便』 MY BEST!(2022)

 

温いようでクール、出自が分からない伴瀬節

三輪二郎「聴きました。ただただ素晴らしくてね、なんだかぼーっとしちゃった」

伴瀬朝彦「ありがとうございます」

『浮浪便』トレーラー

三輪「前から思っていたのは、伴瀬君の音楽って、どこかエキゾチックというか、何の影響を受けてとか、どこから来てどこへ行くんだろうっていう、その出自が分からない。そこがすごいなと思うと同時に、ある種の不安を覚えるんだよね」

伴瀬「おお」

三輪「それが、今回、よく出ていてね。伴ちゃんのボーカル、声ってとても親しみやすくて温かいんだけど、と思いきや、クールにそっぽ向かれている感じも同時にあって。それが前から思っていた伴瀬節なんだけど、今回はそれを強く感じました。しばらく会ってないのに、伴瀬君に会えたと思ったよ」

伴瀬「こうして喋っていて、ジローとは久しぶりの感じがしないよね。レコ発以来会ってないんだけど」

※2019年4月16日に東京・渋谷の7th FLOORで開催された伴瀬朝彦『エモノ』三輪二郎『しあわせの港』のWレコ発ライブ

 

4人だけで多彩な音を出した演奏力

三輪「で、『浮浪便』だけど、このバンドでライブをやって音を詰めてきたんじゃないでしょ?」

伴瀬「もうこの3年、ほとんどバンドでライブ出来てないからね」

三輪「それはすごいよね。ライブが出来ないところから、このレコーディングのためにセッションして?」

伴瀬「それも出来てないけど、やるしかないから最小限の練習でレコーディングに臨みました」

三輪「最初からアレンジが出来ていて、それをバンドに伝えたの?」

伴瀬「みんなで合わせる時間も余裕もないから、ある程度ひとりでデモをバンド用に作って、それぞれのパートはこんな風にと入れて、それを元にリハをやって、次は、そのまま録音」

三輪「伴ちゃん含め4人の演奏力がすごいと思ったんだよね」

伴瀬「そうだし、デモをちゃんと聴き込んでくれてたんだよね」

三輪「録音はメンバー同時になんでしょ? ボーカル以外は」

伴瀬「〈せーの〉で録って、後から差し替えられるようにはしたんだけど。あと、重ね録りもした」

三輪「ミックスもいいよね。(エンジニアの)片岡(敬)さんってスタジオを持っているの?」

伴瀬「片岡さんは自分の機材を持ってスタジオまで来てくれるスタイル」

三輪「どこのスタジオで?」

伴瀬「ギターの田島(拓)さんがよく使っているリハスタ。東北沢の個人スタジオなんだけど、そこで。でも、時間が足りなくて歌は自分の家で録ったり」

三輪「ゲストミュージシャンがいないのに、この4人だけで素晴らしく多彩な音を出しているね」

伴瀬「久しぶりだったんで、みんなゲストみたいなものではあるけどね」

 

素直じゃない伴瀬朝彦を素直に表わしたアルバム

三輪「伴ちゃんの曲は手癖で作ってないよね」

伴瀬「それが恐いからね。もちろんあるけど、そんなに多くない手癖を使うと、それ一辺倒になるから、出来るだけ無いところから引っ張ってこないとバリエーションが出来ない」

三輪「頭の中に出て来た、頭の中で鳴らしたものを楽器やメロディーで具現化してる感じがするんだよね」

伴瀬「たしかにそうだね。さっき〈出自がわからない〉って言われたけど、分かったりするとは思ってるけどね」

三輪「一瞬分かるんだけど、肩透かし食らうんだよ。一見親しみやすいんだけど何とも言えない不穏さがある」

伴瀬「まあ、素直じゃないからね」

三輪「そんな伴瀬君を素直に表わしたアルバムなんだよね。それは中々出来ないよ。だからとても成功したアルバムになったと思う」

伴瀬「ところで、三輪二郎っていい名前だよね。それこそ、それだからね」

三輪「ハハハ」

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