©Takayuki Abe

幅広い時代から、魂を揺さぶる名歌を集めて。

 2020年にスペイン歌曲を中心とした『CANTARES』で鮮烈なアルバム・デビューを飾り、その後の活躍もめざましい若きソプラノによる待望の第2弾。

 「聴く人の肩にそっと手を置いて心に寄り添うような1枚にしたいと思いました。世代や音楽の好みに関わらず沢山の人が、歌詞の世界からも希望の光や明るい未来を感じていただけたら……」

高野百合絵 『Cantar del Alma/魂の歌』 DENON(2022)

 ダウランドの気高きリュート歌曲に始まり、前半は宗教曲らも含むクラシカルなラインナップ。スペインのショパンとも呼ばれたモンポウによるタイトル曲“魂の歌”やギタリストでもあったゴメスの“アヴェ・マリア”(※リサイタルでも何度かとりあげて好評だったとか)など20世紀に書かれた知られざる名曲も。

 「レコーディング場所であるHakujuホールの教会のような響きに包まれ、敬虔な心持ちで歌うことができました」

 音大時代の彼女にとって〈東京の母〉のような存在だった寮母さんのお気に入りだという“夏の名残のバラ”に続いては、若手随一のバンドネオンの名手・三浦一馬との共演によるヴァイル・ナンバーが登場。

 「三浦さんによるアレンジと熱い演奏が作り出すドラマティックな雰囲気が素晴らしい。クルト・ヴァイルやコルンゴルト、バーンスタインといった作曲家の作品が大好きなので、今後も深く追求して行きたい」

 後半にはミュージカルから生まれた珠玉の3曲。オペラ歌手的なアプローチが冴える“虹の彼方に”を筆頭に、歌姫バーブラ・ストライサンドの名唱で知られる“センド・イン・ザ・クラウンズ…”では歌詞の日本語訳にも挑戦。サッカーアンセムのひとつでもある“ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン”も必聴。

 「3曲ともジャンルを超えて歌い継がれてきた佳曲たちで今回のコンセプトにもぴったり。歌っている自分も凄く励まされた」

 締めは日本語の歌。中学時代に歌の先生に勧められ、彼女が歌手になるきっかけとなった特別な曲だという赤い鳥の“翼をください”の後に、ボーナストラックとして収録されたシンガーソングライター川江美奈子の書き下ろし曲“優しさをおしえて”が光る。

 「ざわつくこの世界で、人に愛を与えられる人間でありたいと気づかされる曲。バリトン歌手・今井俊輔さんのノーブルな声との素敵なデュエット作品です」

 年末は“第九”が目白押しで大晦日は兵庫県立芸術文化センターのステージに。来年の活躍も楽しみだ。

 


LIVE INFORMATION
Opus One:Live @Hakuju Hall vol.6 高野百合絵&黒田祐貴
2023年1月19日(木)東京・富ヶ谷 Hakuju Hall
開演:19:00
出演:高野百合絵(ソプラノ)/黒田祐貴(バリトン)/石野真穂(ピアノ)/追川礼章(ピアノ)
曲目:L.・バーンスタイン:アリアと舟歌  他

旬の音楽vol.2 高野百合絵(ソプラノ)リサイタル
2023年2月3日(金)静岡・富士市文化会館 ロゼシアター
開演:19:00
https://yurietakano.com/live