70~90年代に〈ウィーン・フィルの顔〉として、コンサートマスター、ソリスト、室内楽奏者として多彩な活躍をしたゲルハルト・ヘッツェル。彼が登山中に滑落死したため、結果的に最後の録音となった4枚の室内楽が世界初SACD化された。モーツァルトの5曲のディヴェルティメントは音色の多彩さ、ハーモニーの豊かさ、イントネーションの絶妙さにおいて、他の追随を許さない名演。最も有名なK.334は勿論、筆者が偏愛するK.205もぜひ耳にしていただきたい! ベートーヴェンの七重奏曲でも流麗なアンサンブル、颯爽とした進行、粋な節回しが喜悦の限りを尽くし、〈ウィーンの室内楽〉の良さ、ここに極まった感がある。