インタビュー

YAJICO GIRLが奏でる2023年のポップ『Indoor Newtown Collective』とは? 四方颯人が語るバンドの集大成と音楽的挑戦

普通の街に暮らす人々が自然と聴く音楽を作りたい――志高き5人組にとっての集大成『Indoor Newtown Collective』がいま2023年のポップとして鳴り響く……!

 2016年、YAJICO GIRLの四方颯人は、リリースされたばかりのひとつのアルバムに衝撃を受けた。それはフランク・オーシャンの『Blonde』。サイケデリックかつアブストラクトなサウンドは、ギター・ロックに親しんできた四方にとって「それまで聴いてきたものとすべてが違った」という。

 「このままじゃ音楽シーンに置いていかれると思いました。ダサいバンドになるなって」(四方颯人、ヴォーカル:以下同)。

 以降のYAJICO GIRLはオルタナティヴR&Bやクラブ・ミュージックを採り入れながら、独自の音楽性を探求していく。The 1975やヴァンパイア・ウィークエンドといった先進性とポップさを両立させているバンドが、彼らのリファレンスになった。

 「サウンド・デザインの面で参考にしていますね。最近だとヴィーガンやジム・イー・スタックといったトラックメイカーたちにも刺激をもらっています」。

 そんなエレクトロニック・ミュージックへの関心もあり、四方はナイトクラビングを好むようになる。新作に収録された“幽霊”の歌詞は〈クラブに行くこと〉がモチーフだ。

 「クラブは好きですね。クラブって人でいっぱいのフロアにいても〈一人で踊っている〉という感覚があるじゃないですか。そこに魅力を感じています」。

 四方の体験が反映されているのか、YAJICO GIRLのサウンドにはハウスやUKガラージの肉体的な快楽性が落とし込まれているように思う。その一方で、バンドは〈家で音楽を聴く体験〉も大切にしていて、今回のファースト・フル・アルバムのタイトル『Indoor Newtown Collective』は、そんな彼らの活動スタンスを宣言したもの。

 「バンドを結成した高校生の頃は、フェス向けの4つ打ちロックが流行っていたんですけど、僕は〈フェスに行ってみんなで盛り上がる〉というより、〈タワレコで買ったCDを一人で聴く〉経験を重ねて育ったんです。だから、リスナーがしっかり向き合って聴ける音楽を作りたくて」。

YAJICO GIRL 『Indoor Newtown Collective』 MASH A&R(2023)

 では、〈Newtown〉と〈Collective〉についてはどうだろう。

 「そもそも僕らは〈シティ〉育ちではないので(笑)。気取ったり着飾ったりするのも苦手ですし、自然体でいたい。大半の日本人はめちゃ都会でもない、めちゃ田舎でもない、ファスト風土と呼ばれるような地方で暮らしているわけじゃないですか。そういう人たちが自然に聴くポップ・ミュージックを作りたい。〈Collective〉については、いわゆる〈ロック〉や〈バンド〉のイメージから離れたくて」。

 新作の冒頭を飾る“流浪”は、ジャニーズから坂道系までを手掛けてきたJ-Popシーンの名手、辻村有記との共同アレンジ。ダイナミックなコーラスとゴキゲンなホーンが舞う同曲は、アルバム随一のポップソングと言えるだろう。

 「YAJICO GIRLのサウンドをもっとオーヴァーグラウンドな感じに響かせたかったんです。辻村さんはメロディーと声を褒めてくれました。ポップスとしての強度はメロと歌に宿ると思っているので、嬉しかった」。

 その後も「ハイパーポップとアフロビーツを組み合わせた」という“雑談”、エド・シーラン的なループ感が心地よい“VIDEO BOY”などモダンなサウンドに耳を奪われるが、とりわけキャッチーなのが“FIVE”。安全地帯“悲しみにさよなら”を彷彿とさせるメロディーは一度聴いたら忘れられない。

 「“FIVE”で参考にしたのはポスト・マローンの“Circle”。あの出音感は日本語にも合うと思ったんです。アレンジを進めていくうえで、80年代シティ・ポップの雰囲気にも近づいていきました」。

 19曲を収録という大ヴォリュームの本作で、YAJICO GIRLの創造性は色鮮やかに花開いている。多くのリリースを重ねてきたバンドにとって、ひとつの集大成と言える作品を経て、5人はどこに向かうのか。

 「〈こういうバンドになりたい〉とかはないんです。ただ、〈次が気になる〉と言われる存在はめざしたい。新曲を出すたびにビックリさせたいですし、この間リル・ヨッティがいきなりサイケ・ロックのアルバムを出して、みんなを驚かせたじゃないですか。ああいうのが楽しいですよね」。

左から、2019年作『インドア』、2021年作『アウトドア』、2022年のEP『Retrospective EP』(すべてMASH A&R)

左から、The 1975の2022年作『Being Funny In A Foreign Language』(Dirty Hit)、ポスト・マローンの2019年作『Hollywood's Bleeding』(Republic)、Hey! Say! JUMPの2022年作『FILMUSIC!』(ジェイ・ストーム)

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