(左上から時計回りに)森寺啓介(ギター)、藤井学(キーボード)、金澤義(ドラムス)、次松大助(ボーカル)

99年に大阪で結成されたスカバンド、THE MICETEETH。イノセントな詩情にあふれる日本語詞の歌モノを中心に、陽だまりのような暖かさとセンシティブな儚さを併せ持った独自のバンドサウンドで、ジャマイカミュージック界隈にとどまらない幅広い支持を集めている。

来年には結成25周年を迎える彼らが、2022年11月より配信シングルを立て続けにリリースしている。4月22日には待望の7インチカットもされる第4弾配信シングル“Dance on the Road”をリリースする、THE MICETEETHのメンバーに話を訊いた。


 

再結成以降の新たな活動ペース、コロナ禍以降の新たな制作方法

――THE MICETEETHは2014年の活動再開以来、とてもマイペースにバンド活動を続けてきた印象があります。

金澤義(ドラムス)「ボーカルの次松は仙台に住んでいたり、サポートメンバーは東京にいたり、メンバーそれぞれ住んでる地域が違うんです。なので、解散(2009年)以前のような活動はできないっていうのは最初からわかった上での再結成でした。バンドを続けるっていうことを最優先したのが、今のようなペースなんです」

――それが、昨年(2022年)11月から配信シングルを連続リリースするなど、ここにきて活発な動きを見せていますよね。

金澤「作品を作りはじめたのは、実はコロナ禍以降になってからなんです。というのも、僕らは再結成後に2枚ミニアルバムを出したんですけど、流通にのせてなくて、ライブ会場のみでの販売にしていて、サブスクやYouTubeにも音源を上げていなかった。それが、コロナ禍でライブもできない、だけど活動は止めたくない。そこでメンバーと話し合って、曲を作って出せへん?ってことになったんです」

 

伸び伸びしたいいテイクを合体させるリモート録音

――ただ、先ほど話してもらったように、遠くに住んでいるメンバーもいる中で、どのように楽曲を制作していったんですか?

金澤「コロナ禍以降の新たなカタチなんですけど、作曲者が作ったデモ音源に合わせて、メンバーそれぞれが自分のパートを自分でレコーディングしていくんです。そうして録ったそれぞれの音源を合体させて1曲にする。これやったらできるよねって、やりはじめました」

――THE MICETEETHのような大所帯バンドだと、みんなでスタジオに集まって、リズム隊とかホーン隊とかセクションごとに録音していくか、あるいは全員でせーので一発録音するというパターンが多いと思いますが、それぞれが自分で録音した音源をやりとりするっていうのは、これまでとはまったく違うやり方だったと思うんですけど。

藤井学(キーボード)「やってて面白かったですね。

ただ難しい部分は、あくまで自分が納得するところまで〈やりすぎちゃう〉ところ。今までやったら、みんなで集まってみんなの合意で〈これやね〉って決めてたんですけど、自分一人だけのジャッジになるのが、大きな違いですよね」

森寺啓介(ギター)「そもそもマイスは音数が多いので、一人一人に割り当てられる録音時間に制限がかかるんですね。なので、ノープランのまま録音に挑むということは、今まで一度もなかったんです。

本当は、スタジオでその日の気分や急に思いついたアイデアを盛り込みたいけれど、予算的に不可能で」

金澤「俺らは、大所帯バンドじゃないですか。録音するとなると、後のほうに録るパートの人に、時間的なしわ寄せがきてしまうんですよね。本来であれば、後のほうこそ、ボーカルやホーンなんて、リスナーからしてみれば主役と言えるパートなのに、一番時間が削られまくっていくっていうフラストレーションがあって。レコーディングって、予算とのせめぎ合いですから」

次松大助(ボーカル)「自分のパートを録る時に、今どういう状況でどんな感じで時間がかかっていますっていうのを、他のメンバーに伝えなきゃいけないじゃないですか。

この録音スタイルだと、時間の使い方が個人的にできるというか、伸び伸びできてますね。みんなで集まっていればリアルタイムでアドバイスをもらえるとか、そういうメリットはなくなっちゃうけど」

森寺「それが、メンバーそれぞれの宅録になって、その部分はかなり満足のいく進行ができた。地味ではありますが、新しい〈マイスサウンド〉を表現できているのではないか、と思ってます」

――たとえばメンバーそれぞれ、録る環境や機材も違うわけですよね。バランスを整えるのはどうしてるんですか?

藤井「そこはもう、最終的にミックスやってるのがザワ(金澤)なんですけど」

金澤「めちゃめちゃムズいっすよ(笑)。

もちろん、スタジオで録音したような素材でミックスできるのが理想ではあります。だけど、メンバーそれぞれが自分の納得するまで重ねただけあって、テイクがいいんですよね。音質はさておき、テイクがいい。それに尽きますね」

――思えば次松さんは、かなり前から仙台に移住されていて、ディスタンスをおきながらの活動を続けてきてますよね。

次松「そうですね(笑)。コロナ以前からディスタンスをとってました。

でも、このバンドが特殊なのは、ザワがミックスに長けてること。それはいいことだと思います。ライブに関して言えば、僕が一人離れてるのはもどかしいような、申し訳ないような気はしますけど」

――ちなみに、今回のインタビューもリモートで行ってますが、バンドのミーティングなんかも同じようにSkypeなんかを使ってやってるわけですよね。

金澤「そうなんですよ。バンド内で会話のグルーヴが共有できないんですよね。俺が〈曲ができたー!〉ってめちゃめちゃテンションが上がってたときに、みんな同じ場所にいたら一緒に喜んでもらえるかもしれないけど、温度差がみんな違いすぎて(笑)。だからもう、俺もちょっとテンション低めでいこう、みたいな(笑)。まあ、レコーディングもミーティングも現代ならではですよね」