モーフィング室内管弦楽団 ~新しい感覚を楽しむ、いま注目の室内オーケストラ~

 いま注目の室内オーケストラと言えば、ヴィオラ奏者のトマシュ・ヴァプニツが流麗な「弾き振り」を聴かせるモーフィング室内管弦楽団。彼曰く「弾いているうちにインスピレーションがどんどん湧くよ!」とのこと。ちなみに、モーフィングとは、英語で「2つの画像を合成し、そこから変形する姿を捉える」加工技術だそう。この不思議な語感を団体名に被せた理由を、まず率直に訊ねてみた。

 「シンプルな発想からですよ。例えば、皆さんが朝にモーツァルトを聴き、夜に現代作曲家のペルトの曲を楽しんだら、夢の中で二つの印象が重なり、新しい感覚が芽生えるのではと思ったんだ」

 なるほど!

 「インタヴュアーの貴男はオペラの専門家だそうですね。ソプラノのアレクサンドラ・クジャクのアリア集は聴いてくれた?」

 もちろん。クジャク(クルジャク)は3オクターヴ近い声域を持つソプラノ。CD『Mozart ~ Concertante』で彼女は“魔笛”のアリアでハイF(ファ)を出し、“皇帝ティートの慈悲”のソロでは五線下のG(ソ)の音を力強く歌うので驚いた。

 「有難う! 僕とクジャクは幼馴染でね。彼女の旦那さんは人気テノールのロベルト・アラーニャだろ? さっき名前を出したペルトはエストニアの高名な現代作曲家ですが、彼の“スターバト・マーテル”はモーフィングが録音しました。歌手が3人要りますが、まずはきりっとした響きのクジャク、次いで柔らかい声のカウンターテナー、アンドレアス・ショル。そして3人目がひときわ熱い声のテノールのアラーニャ。この3名と共に、ペルトのメロディアスな“スターバト・マーテル”を録音できたことは我々の大きな喜びです」

 確かに、ペルトの音運びは調性感が素晴らしく豊か。冴えた曲調から人間の苦悩がじっくりと滲み出るようで聴き惚れる。

 「僕はポーランドのヴロツワフ出身ですが、今までの活動で欧州各地の多彩な要素を心に重ねてきました。アラーニャとは近い将来、フランスものに関するビッグ・プロジェクトがある。まだ秘密だけれど(笑)。他には、今年の春にバッハを中心としたアルバムをApartéから出します。こちらは、先ほどのショルさんとソプラノのサラ・トラウベルさんが参加して、“ヨハネ受難曲”や“マタイ受難曲”のアリアなど歌っています。様々な音楽のいろいろな要素を反応させて、そこから新しいイメージを作り上げるモーフィングの演奏を、日本の皆様に、もっと楽しんで頂ければと思っています!」