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一つのことを突き詰めるより、異質なものの新たな組み合わせにワクワクする

――最近そうやってお互いに紹介し合った作品のなかで、印象に残っているものはありますか?

坂井「1月に出たリル・ヨッティのアルバム『Let’s Start Here』は、みんな大好きになりましたね。ラッパーがサイケデリックロックに接近したことが面白かったし、アルバムとしての完成度がめちゃくちゃ高い。

『Let’s Start Here』は今作を作っているときにリリースされた作品なので、制作にあたって影響を受けたわけではないんですけど、聴いた瞬間に〈こういうこと!〉って思いましたね。異質なものが重なって作品として高まっていくあの感じを、ロックバンドの自分たちならどう出すのか。ジャンルやサウンドスタイルではなくて、感覚や概念として理想的な作品です」

リル・ヨッティの2023年作『Let’s Start Here』収録曲“sAy sOMETHINg”

――なぜ異質なものの組み合わせにこだわるのですか?

アラユ「〈ルーツはこれ〉って、一個のものに縛られたくないんですよね。オルタナロックバンドがオルタナロックバンドを聴いてそれらしいことをやるっていうのは、正解が既に出ているじゃないですか」

村尾「アルバムは年一で出したいんですけど、その時々で異なる、ハマっているものを反映させていけたら、変化もあって面白いんじゃないかなって。一個のジャンルに収まりたくない」

坂井「ひねくれてるからじゃない(笑)? 一個のものをとことん突き詰めることもいいと思うんですけど、新しい何かや僕らならではのものを生もうとするほうが、僕らはワクワクするからですね」

――ファーストアルバムはバンドの初期ベストアルバムだと、よく言われるじゃないですか。でも今作はそれぞれ単曲としての強さもありながら、アルバム全体としての完成度を追い求めた印象が強くて、だからリル・ヨッティの例は納得できます。

坂井「その感想はすごく嬉しいです。『Let’s Start Here』は、全14曲、飽きずに聴ける流れがあって、最後のアウトロで1曲目のイントロに戻るから、通しで聴いてリピートできるんですよね。

今はSNSやサブスクの時代で、単曲のインパクトが求められる。それならシングルやEPを連発していればいいと思うんですけど、僕らは僕らなりのそんなアルバムを作りたかった。だから去年はずっとアルバムを出すことを前提に曲を作っていたんです」

 

3曲のMVの物語はぜんぶ繋がっている

――サウンドからも歌詞からも、ストーリー性を感じるのですがどうですか?

坂井「映画が好きなのでやりたくなっちゃうんですよね。今回は先行で配信した3曲、“Hesitate”、“Neighbor”、 “Over ray”のビデオも、ぜんぶ物語として繋がっています」

『PUR』収録曲“Hesitate”

――どんな映画が好きなんですか?

坂井「好きな映画はたくさんあるんですけど、1つ挙げるとすれば、『クラッシュ』という人種差別を題材にした映画ですね。状況の違う3つの話が最終的に全部繋がってくる。そういう仕掛けが好きなんですよ」

――アラユさんは3曲のMVの映像監督を務めましたが、いかがですか?

アラユ「僕は人間をキャスティングした映像の監督やっておきながら、いちばん好きな映画は『ライオン・キング3 ハクナ・マタタ』です。あれ、〈動物だから面白いけど、人間だったらどうなの?〉みたいな内容ですよね(笑)。最高です。

監督は岩井俊二さんが好きですね」