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新たな看板として
そして2023年、PREの新たな看板となったグロックがリリースした作品こそ、ドルフ亡き後の初のアルバムであり、オリジナル・アルバムとしては通算3作目となるこの『Glockoma 2』だ。2018年発表のミックステープ『Glockoma』の続編的な作品であり、前作同様に客演はなし。自作に著名なアクトを招くことの多かったドルフと比べてほとんどゲストを招かない独歩なスタイルを貫いているグロックらしくもあり、これまで通りバンドプレイがメインで手掛けるビートはメンフィス・マナーのダークなトラップ・サウンドで統一されている。時折聴こえるソウルやブルース風味なサンプル使いもメンフィス産ならでは。淡々と紡ぎながらもメンフィス・ラップの王道スタイルを継承し、独特のフロウでアクの強めなグルーヴを醸し出すそのラップはますます凄味を増している。いつまでも感傷に浸ることなく自身やクルーの未来のために通常モードに戻り、ふたたび勢力を強めんとする姿勢も窺わせた力作である。グロックと本格的に再始動したPREをはじめとするメンフィスのシーンには今後も注目しておくべきだろう。

キー・グロックが客演した作品を一部紹介。
左から、ジューシーJの2020年作『The Hustle Continues』(eOne)、メーガン・ザ・スタリオンの2022年作『Traumazine』(300)