突然の悲劇を乗り越えてメンフィス・ラップ・シーンに新たな帝王が立ち上がった。その狼煙となるのが、冷静にストリートを見つめる強力な新作『Glockoma 2』だ!
メンフィス・シーンの流れ
テネシー州メンフィスのヒップホップ・シーンと言えば古くはスリー6マフィアと彼らの率いるクルー=ヒプノタイズ・マインズの面々や、エイトボール&MJGといったレジェンド的な存在を多く輩出したことで知られている。近年ではブラック・ヤングスタやマネーバック・ヨー、グロリラらのニューカマーを次々とブレイクさせているヨー・ゴッティ率いるCMG(コカイン・ミュージック・グループ改めコレクティヴ・ミュージック・グループ)が猛威を奮っており、一方ではNLEチョッパやプー・シャイスティといったキャラの立ったラッパー勢も登場。さらにはエイサップ・ロッキーやデンゼル・カリー、スーサイド・ボーイズといった他地域のアーティストからもメンフィス産のサウンドやラップのスタイルに魅せられる面々が次々と出現しており、いまではヒップホップ最重要エリアのひとつであるといって過言ではないのだが、メンフィスを語る際に忘れてはならないのが故ヤング・ドルフの設立したレーベル/クルー=PREだ。
ボスであるドルフは他エリアの人気アクトとも積極的にリンクしていくことでシーン内で一気に名をあげていき、やがて〈King Of Memphis〉を名乗るまでになって(それが要因でCMG勢と抗争に発展)、ペーパー・ルート・エンパイアもクルーとして勢力を拡大。2021年11月にドルフが凶弾に倒れたことからその存続が危ぶまれていたものの、従兄弟であり右腕的な存在でもあったキー・グロックがドルフの遺志を受け継いでふたたびシーンの最前線へ戻ってきた。