2019年にベルリン・フィルの指揮者に就任後すぐにコロナ禍の波を受けてしまったペトレンコ。その困難の中で取り組んだショスタコーヴィチの交響曲集は、小気味良い颯爽とした音楽進行でいつもは聴こえにくいパッセージを浮かび上がらせる発見の多い演奏。第8番はアダージョや第3楽章の無窮動の弦楽合奏が心に迫る。皮肉のオペレッタのような第9番はオペラ叩き上げのペトレンコの緩急自在の表現と巧いソロ楽器の競演。カラヤンのレパートリーだった第10番はその影響を脱皮し、より明晰に音像を組み立てたもの。一緒に収められたBlu-rayでは間隔を空けたオーケストラ配置が後年重要な記録となるだろう。