シューベルトと言えば〈歌曲王〉。しかし、彼の音楽を少し聴き込むと、弦楽四重奏曲第15番やピアノ三重奏曲第2番など、時代の先を行く革新性や複雑な感情表現が聴かれ、謎めいた魅力の虜になる人も多い。著者はその謎を徹底的に解き明かすべく、彼の音楽の分析だけでなく、日記や友人達の証言、時代背景など、世界の研究者と連携して出来うる限りの資料を集め、その謎に肉薄。この600ページ超の大著が生まれた。歌曲や宗教曲を書いた際の詩の選択から、彼の思想に迫る箇所など目から鱗。事実関係が不明な部分は推理小説のように証拠を積み上げてゆく面白さがあり、シューベルト好き必携の書と言えよう。