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パリ発! 期待の新星のデビュー・アルバム、ジェシー・ハリスが共同プロデュース

 『Gabi Hartmann』には、〈恋の病〉という意味の“Maladie d’amour”が収められている。アンリ・サルヴァドールが、1948年にフランスで広めた曲だ。アンリはグアドループ島出身の両親のもと、フランス領ギアナで生まれた。つまりカリブにルーツを持つ。しかも“Maladie d’amour”はもともと西インド諸島の民謡で、マルティニーク生まれのレオナ・ガブリエルが31年にビギンとして初録音。アンリはそれをアレンジし、ジャン・マルクランによる仏語の歌詞で歌った。ギャビ・アルトマンは、こうした同曲の音楽的ルーツを踏まえたアレンジで軽やかに歌っており、カリブの潮の香りやあたたかい風が伝わってくる。

GABI HARTMANN 『Gabi Hartmann』 Masterworks/ソニー(2023)

 ギャビ・アルトマンはパリ生まれのシンガー・ソングライター。パリのスコラ・カントルム音楽院卒業後、リオ・デ・ジャネイロでブラジル音楽、ロンドンでは民族音楽を学んだ。その後は南アフリカやギニア、ポルトガル、ニューヨークなどを旅したという。それだけに彼女は仏語と英語で曲を作り、ポルトガル語の曲も歌う。また、『Gabi Hartmann』には、38年のフランス映画「Le Schpountz」の中で、主演のコメディアンでシャンソン歌手のフェルナンデルが歌った曲と、スーダンのハリル・ファルハンの曲をミックスした“L’amour incompris /Azza Fi Hawak”も収録されている。

 『Gabi Hartmann』は、ギャビとジェシー・ハリスの共同プロデュース。ニューヨークとパリで録音されている。ジェシーと親交のあるジャズ・ギタリスト、ジュリアン・ラージが一曲にフィーチャーされていることも話題のひとつだ。ジェシーの人脈とフランスとの繋がりという点では、ギャビはマデリン・ペルーの姪っ子のような存在と言ってもいいだろう。しかも音楽性はより幅広い。なぜならギャビはいにしえのシャンソンやジャズのムードを纏いつつ、カリブや南米、アラブ、アフリカなどの音楽文化が交錯する現在の〈パリ〉を体現しているのだから。