南アフリカはコサ族の伝統に重きを置きつつオリジナリティを確立させてきたSSWボンゲジウェ・マバンドラ。この4作目ではずいぶんとシンセやエレクトロニクスの割合が増した。アンビエントなアフロ・ソウル、またエレクトロ・ポップと言えそうな曲もある。しかしながら一貫して生音と非生音の間に境界線は引かれず無機的な音はひとつもない。むしろ生楽器から感じ取れる肉体感が薄まったことで、霊的な歌声とファルセットを多用した歌唱がつくり出す桃源郷は広がりをみせ、聴き手が生きているこの現在と有機的に結びつき、さらにもっと内面へ浸透してくるような不思議な感覚がある。