全米でも大注目! 知性派女性4人が探求する緻密で美しく希うヴォーカル・アンサンブル

 人間の声は、最高の楽器。その歓びをセージュという新しいヴォーカル・アンサンブルが体験させてくれる。女性4人の声が美しく、時には複雑に絡み合いハーモニーを奏でる。しかも楽器演奏が伴奏の類ではなく、緻密なアレンジで見事に歌と一体化している。ゲストもジェイコブ・コリアーやテリ・リン・キャリトンらセージュの魅力を裏付けするようなセンスのある人ばかり。

 そんなセージュの結成は、ジャズ・シンガーのサラ・ガザレクがヴォーカル・アンサンブルを専門とするアレンジャーのアマンダ・テイラーに声を掛けたのが始まりだった。

 「ソロで10年以上活動してきましたが、アンサンブルは新たな領域です。アマンダはミュージシャン、アレンジャー、そしてひとりの人間としても大好きなので、彼女のエネルギーに囲まれたらどうなるだろうか、という好奇心がまずありました」(サラ)

 その後、エリン・ベントラージ、ジョナイエ・ケンドリックが加わり、4人の名前の頭文字をからつけたセージュというグループ名が生まれた。そして、最初に歌ったのがアルバム冒頭の“デザート・ソング”だった。

 「4人で“デザート・ソング”を共作した後、ビデオを撮影しながらこの曲を歌ったのですが、声の調和に自分達でも驚き、自然に涙がこぼれました。アンサンブルで歌うことはとっても特別なこと。同時に自分達のサウンドを確立させるためには無限の努力が必要ということも実感しましたね」(サラ)

SÄJE 『säje』 säjevoices/コアポート(2023)

 ジャズ界を見回すと、ヴォーカル・グループはいるけれど、その多くは男女混合の編成で、女性4人というのは希少だ。そのうえアルバム『セージュ』の収録曲の大半がオリジナル楽曲で、麗しい魅力だけではなく、なかには犠牲となった人々の名前が読み上げられていく“ネヴァー・ユー・マインド”という曲もある。アンブローズ・アキンムシーレのトランペットが葬送曲のごとく哀しみと、怒りを奏でるこの曲を作曲したジョナイエがこう教えてくれた。

 「BLM運動に賛辞を送る歌です。黒人の生命も大切。ブラック・アメリカン・ミュージックを好きな人、評価するリスナーには私たち黒人の人生をリスペクトして欲しい。そういうメッセージを聴いてもらいたかったんです。そして、特筆すべき美しいオーケストレーションをエリンが作りあげてくれました」

 そのエリンは、アーティスト、アレンジャー、教育者でもある才媛。セージュでの経験をこう語っている。

 「いつもは、どちらか一方を優先させるのですが、セージュではアレンジャーとしての私と、アーティストとしての私を同時に深いレベルで生かすことが初めて出来たんです」

 収録曲のなかに“ソリッド・グラウンド”と“ブラックバード”をメドレーで歌う曲がある。前者はマイケル・キワヌーカの曲で、後者はサラがソロでも歌っているビートルズの名曲だ。

 「パンデミック中にアメリカで起きた多くの抑圧を表現するためにこのメドレーを作りました。政治的な混乱、権力者と疎外された人々との分断。でも、最終的に私たちは、この曲を変化し続ける音楽界で変わらずに活躍してきた女性ミュージシャンや、アートを創造する道を切り拓いてきた女性たちへのラヴレターと意味づけることにしました」(サラ)

 最後にサラが絶大な信頼を寄せるアマンダは、セージュについてこう語る。

 「過去の経験を振り返り思うことは、セージュの一員として音楽を生み出し、表現するためのものだった。この女性グループのユニークな芸術を開花させる存在となるべく、あらゆる音楽を学んできたとさえ思えます。ヴォーカル・ミュージックの価値とは、コラボレーションの奥深さとは。いま果てしなく探求心を触発されていて、セージュを通してヴォーカル・アンサンブルのためのアートを創作したいと思っています」

 そんなセージュは、早くも2作目の準備に取り掛かり始めているとか。どんな道を切り拓いていくのかますます楽しみになってくる。

 


LIVE INFORMATION
säje来日公演決定!! 近日詳細発表予定

http://www.coreport.jp/catalog/jazz_vocal/rpoz-10088.html

2023年2月11日(月)~13日(水)東京・COTTON CLUB
http://www.cottonclubjapan.co.jp/