Page 3 / 3 1ページ目から読む

女性の可能性の幅広さと多様さを伝えたい

――〈Women In Music〉の動きとしては、今回開催されるライブイベントと先ほどあげられたインタビューが主な活動になるのでしょうか。

「〈Women In Music Sessions〉という音楽業界のみなさんで考えるトークイベントも行っています。今年の3月に開催した際には、プロデューサー/ベーシストの亀田誠治さんやUNIVERSAL MUSIC EMI Recordsの亀田裕子さんなどにご登壇いただき、200人以上の業界のかたに参加していただきました。

当社も含め、音楽業界は不規則な時間に働くことが多く、女性が長く働き続けるための環境づくりなど、まだまだ課題があると思います。音楽業界のなかに女性管理職の方が増えていくことも、チャートのジェンダー比の不均衡を変えるための、ひとつのきっかけになるかもしれません」

――〈Women In Music〉に出演するアーティストを選出する際は、どのようなことを念頭に置いているのでしょうか。

「異なるメッセージや考えかたを持ったアーティストがひとつのイベントに集まっていてほしいなと思っています。(2023年3月3日に開催された)〈Women In Music vol.0〉のとき、3会場で3人のアーティストにご出演いただいたのも、女性の可能性は本当に幅広いし多様だということを伝えたかったからです。ちゃんみなさんのように、強く振舞うことで壁をぶち破ってきた人もいれば、eillさんのようにファンの人と一緒に涙を溢しながら進んでいく生きかたもある。そして、UAさんは表現されている音楽だけでなく、しなやかな生きかたも含めて多くのリスナーに影響を与えていると思いました。複数のアーティストのメッセージに触れていただくことで女性のいろんな輝きかたを実感してほしいと思っています」

――女性アーティストだけを集めたイベントとなると、賛否両論になりそうな気もしますが、そういった問題はなくスムーズに開催に至ったのでしょうか。

「実をいうと、タイトルに女性と入ることにより男性が来づらくなるのではないか、日本人口の半分だけで勝負することになるのではないかと懸念を示したスタッフもいたんです。新しいイベントを立ち上げるというだけですごく難しいのに、女性だけをターゲットにしたイベントにしたら続けられないんじゃないかと。

でも、3月に開催したライブでは、男性のお客様も多くご来場いただくことができました。この課題は女性だけでは解決できません。男性のかたも、この課題に興味を持って足を運んでいただけるのは、とても心強いと思っています」

 

権威にならず同じ目線で広げたい

――今回開催される〈Women In Music vol.1〉で出演される3組のアーティストをブッキングした決め手はなんでしょうか。

SCANDAL

「SCANDALさんは、今年の8月に〈同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)〉としてギネス世界記録に認定されました。わざわざバンドという言葉の前に〈ガールズ〉とつけられるくらい、女性だけのバンドってすごく少ない現状のなか、ずっと同じメンバーで活動を続けられている。アメリカの〈Billboard Women In Music〉には〈女性がこれから活躍できるような道筋をシーンに作った人を表彰しましょう〉というポリシーがあり、女性だけのバンドの価値を高めたSCANDALさんは適任だと思い、お声かけさせていただきました。

SCANDALの2023年のシングル“ハイライトの中で僕らずっと”

のん

のんさんは、音楽だけでなくアートや演技といった、多岐にわたる分野で活躍されているアーティストです。また、自分の意志で自分のお仕事を選び表現している強さも、イベントのコンセプトにぴったり。今後ものんさんのような存在がもっと生まれてきてほしいという想いもこめてお願いしました。

のんの2023年作『PURSUE』収録曲“荒野に立つ”

にしな

にしなさんは大学時代のゼミでジェンダーについて勉強されていて、ルッキズムやジェンダーに関する発信を積極的に行っているかたです。Billboardのインタビューでは、〈にしな〉という名前にした理由として、性別を限定せず自分らしさを大切にしたかったからとおっしゃっていました。もっとにしなさんのような人が増えてほしいという願いもこめてオファーさせていただいています」

にしなの2023年のシングル“クランベリージャムをかけて”

――ゆくゆくは海外のアーティストもイベントに出演するようになるのでしょうか。

「今後は、アメリカや他の国からアーティストを招聘できるくらいまで、イベントを大きくしていきたいと思っています。いろんな国のいろんな女性の生きかたを観ていただくことによって、日本のいろんな人たちに影響を与えていけると思うので。

また、現在の韓国ヒットチャートでは、ガールズグループの勢いがとてもあります。韓国のアーティストはガールクラッシュ的な魅せかたが上手ですし、そういうメソッドを学び、日本でも上手く取り入れるきっかけになるようなイベントも面白いのではと思っています」

――いずれはアメリカの〈Billboard Women In Music〉のように、アワードの形式を日本でも取り入れていくのでしょうか。

「あまり権威的なものにはしたくないんです。出演することがステータスになる存在にはなりたくないんですね。それはBillboardのヒットチャートも同じ。一般的にヒットチャートは浸透していけばいくほど、すごく権威的なものになっていくと思うんですけど、Billboardはチャートをみんなで作って考えていく場所にしたい。一般の人にもチャートインサイトのページで、チャートの内訳順位を公開している理由には、そういう想いがあります。

女性のエンパワーメントについても、眉を寄せて議題を話しあうわけではなく、誰かを否定して叩きのめすでもなく、みんなで明るく楽しく現状を変えていきたい。〈Women In Music〉も権威的なアワードというより、いろんなアーティストが集まって、みんなが同じ目線で考えられるフェスのように広げていけるのが理想ですね」

 


LIVE INFORMATION
祝・日比谷野音100周年
Billboard JAPAN Women In Music vol.1
Supported by CASIO

2023年11月3日(金・祝)日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
出演:SCANDAL/にしな/のん ※五十音順
開場/開演:15:30/16:30

■チケット情報
一般:5,500円(税込)
学生:4,500円(税込)
※学割実施(学生の方には当日学生証のご提示で会場にて1,000円をキャッシュバックいたします)

e+(イープラス)3次先行 :2023年9月11日(月)18:00~2023年9月18日(月)23:59
https://eplus.jp/womeninmusic-hp/

一般発売(先着):2023年9月23日(土)10:00~
e+(イープラス)、チケットぴあ、ローチケでのお取り扱い ※電子チケットのみ

主催:Women In Music製作委員会/日比谷野音100周年記念事業実行委員会
​協賛:カシオ計算機株式会社/SHURE
後援:J-WAVE

https://www.billboard-japan.com/wim/

 


PROFILE: SCANDAL
2006年、大阪・京橋で結成、2019年にはプライベートレーベル〈her〉を設立するなど名実ともに日本を代表するガールズバンド。2008年、“DOLL”でメジャーデビュー。翌年には“少女S”でレコード大賞新人賞を受賞し、国内外問わずに多くのフォロワーを持ち、世界中でコンサートを行っている。今年、結成17周年を迎え〈同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)(Longest running rock band with the same musicians (female))〉として、ギネス世界記録™に認定された。

PROFILE: にしな
やさしくも儚く、中毒性のある声。どこか懐かしく、微睡む様に心地よいメロディーライン。無邪気にはしゃぎながら、繊細に紡がれる言葉のセンス。穏やかでありながら、内に潜んだ狂気を感じさせる彼女の音楽は、聴く人々を徹底的に魅了する。Spotifyがその年に注目する次世代アーティスト応援プログラム〈RADAR: Early Noise〉に選出。ゆっくりとマイペースにリスナーを虜にしてきた彼女の声と音楽が静かに、そしてより積極的に世の中へと出会いを求めに動き出す。最重要ニューカマー、〈儚さと狂気〉を内包する才能がここに現る。

PROFILE: のん
俳優、音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動する。主演映画「さかなのこ」で、第46回日本アカデミー賞〈優秀主演女優賞〉、第32回日本映画プロフェッショナル大賞〈主演女優賞〉を受賞。2023年12月より世界配信されるNetflixシリーズ「ポケモンコンシェルジュ」では主人公ハルの声を務める。そのほか、中国の全編3DCGアニメーション映画「雄獅少年/ライオン少年」の主題歌“この日々よ歌になれ”を担当。6月28日には、忘れらんねえよ・柴田隆浩やASIAN KUNG-FU GENERATION、高橋幸宏らが参加し、自身も作詞曲を担当したセカンドフルアルバム『PURSUE』をリリースし、30歳の誕生日である2023年7月13日には肩書を〈俳優・アーティスト〉に改定した。

〈Billboard Women In Music〉とは
2007年から米ビルボードが毎年開催しているイベント。メインとなる〈ウーマン・オブ・ザ・イヤー〉は音楽ビジネスに多大な貢献をし、仕事と継続的な成功を通じて何世代にもわたって〈女性が、この分野で活躍できるよう促している〉女性を表彰しています。そのほか、〈Rising Star〉〈Chart-Topper〉〈Trailblazer(先駆者)〉〈Icon〉など様々な切り口で女性アーティストが表彰されています。ビルボードジャパンでは、これまでニュースでアメリカの受賞者を発信してきましたが、2022年より自身の活動を通じて社会をエンパワーする〈かっこいい〉女性たち、それを支える人々を多角的に紹介し、よりインクルーシブな社会を目指すプロジェクトとして〈Billboard JAPAN Women In Music〉を立ち上げました。〈音楽業界における女性〉をフィーチャーし、女性たちにフォーカスしたインタビュー連載〈わたしたちと音楽〉もスタートさせています。