NHK連続テレビ小説「あまちゃん」が、2013年の放送開始から10周年を迎えました。今年4月からは、NHK BSプレミアムおよびBS4Kでアンコール放送がスタートし、再放送にもかかわらず作品のキーワードがSNS上で盛り上がりを見せるなど、10年の時を経ても変わらぬ人気ぶりをアピール、9月30日(土)にはいよいよ最終回がオンエアされます。
そこで、今回は「あまちゃん」に関連した作品や劇中の名場面などを紹介。該当作品のTOWER RECORDS ONLINEの商品ページのリンクなどもあわせて掲載していますので、ぜひお役立てください。なお、TOWER RECORDS ONLINEでの取り扱いが終了している場合もございますので、ご了承ください。タワーレコード店頭での取り扱いは各店舗にお問い合わせください。
2013年4月1日から半年間にわたって放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」は、岩手県三陸海岸沿いにある架空の町である北三陸市を舞台に、祖母に憧れて海女をめざすヒロインの天野アキの成長や奮闘する姿を描く人情喜劇だ。
宮藤官九郎が脚本を手掛け、大友良英が劇中の音楽を担当、そして、主演の能年玲奈(現:のん)をはじめ、小泉今日子や松田龍平、橋本愛、杉本哲太、薬師丸ひろ子、宮本信子らが出演。クドカンらしい小ネタがちりばめられたセリフや物語の展開はもちろん、オーディションによってヒロイン役に選ばれた能年をはじめとするキャストたちのテンポのいいやり取りなどが人気を集め、物語全般を通して登場する北三陸市の人々が発する方言「じぇじぇじぇ」は流行語になるなど、社会現象にまで発展したが、膨大な量の昭和ネタの引用やパロディは当時を知る人を中心に強烈なインパクトを残した。
アキの母親・春子(小泉今日子)が青春時代を過ごした実家の部屋には、松田聖子のサードアルバム『Silhouette ~シルエット~』や吉川晃司のファーストアルバム『パラシュートが落ちた夏』のレコード、なめ猫のポスターなどが飾られ、部屋に足を踏み入れた80年代を知らない高校生のアキはカセットテープに録音されたYMOの“君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス)”を耳にすると「♪キュン」を連発するほどハマってしまう。
そんなシーンが評判を呼んだことが影響してか、2013年8月には〈春子の部屋の赤いラジカセから流れていた数々の名曲たち〉をコンセプトに掲げたコンピレーションアルバム『春子の部屋 -あまちゃん 80’s HITS-』2タイトルがリリースされるという事態にも発展した(現在は入手困難)。
ちなみに、第46回の放送は原田知世“時をかける少女”、越路吹雪“愛の讃歌”、ビートたけし〈コマネチ〉、TM NETWORK“Get Wild”、三島由紀夫「潮騒」といった昭和ネタが、1話15分のなかで立て続けに登場するという異様な情報量となっている。
また、洋楽ネタも神出鬼没に登場。82年に横浜銀蝿の弟分、紅麗威甦(グリース)の一員としてデビューを果たした杉本哲太が演じる駅長・大吉のカラオケのお気に入りは、映画「ゴーストバスターズ」の主題歌“Ghostbusters”(サビしか歌えない)とヴァン・ヘイレンの“Jump”(おそらくサビしか歌えない)。
なお、大吉はNHKの人気ドキュメンタリー番組「プロジェクトX ~挑戦者たち~」を「スパルタンX」「プロジェクトA」と言い間違えるジャッキー・チェン世代でもある。
さらに、架空のアイドルグループ、アメ横女学園芸能コースの楽曲“暦の上ではディセンバー”の振り付けでは、歌詞に登場する〈サバイバー〉の部分でメンバーたちは虎が敵に襲い掛かるようなポーズを披露。元ネタは、映画「ロッキー3」の主題歌としても知られるサバイバーの代表曲“Eye Of The Tiger”であろう。もはや、笑いを通り越して(いい意味で)呆れてしまったという人も少なくはなかったのでは。
加えて、失恋したショックで落ち込むアキが祖母の夏(宮本信子)にかけてもらった上着を何度も振り払って立ち上がるというジェームズ・ブラウンネタも飛び出していたので、JB好きはもちろんのこと「ロッキー4」好きをニヤリとさせたことも間違いない。
と、ここまで書いて「あまちゃん」未見の人から〈本当にそんなドラマがあったのか!?〉と疑われそうな気すらしてくるが、これは本当の話である。もっと言うと、上記で取り上げたトピックは氷山の一角に過ぎず、ほかにもフレディ・マーキュリー、「ジョジョの奇妙な冒険」、「佐賀のがばいばあちゃん」、橋幸夫、「仮面ライダーアマゾン」など、カオス極まりない。
ただし、それらのネタがわからなくてもこのドラマの魅力が損なわれることはない。家族愛、友情、地元への愛など朝ドラらしい要素はもちろん、過去の苦い記憶や心が離れてしまった人への赦しといった重めのテーマ、そして東日本大震災とその後の未来を誠実な姿勢で描き切る。第133回のオープニング、大地震発生時における各キャラクターの様子や携帯電話に届く緊急警報、緊急停車する北三陸鉄道とその車内。井上剛によるシリアスな演出とキャストたちの覚悟を決めたような演技は、あれから10年以上が経った今観ても、心が強く動揺してしまう。
運命によって何度も閉ざされてきた念願の東京行きが、震災によって再び叶えることができなかったユイ(橋本愛)。結局、「あまちゃん」本編のなかでユイは上京することができない。しかし、ドラマが終了した後、同年大晦日の「NHK紅白歌合戦」内で放送(上演?)された「あまちゃん」特別編〈おら、紅白出るど〉でクドカンはユイに対して、ミラクルな展開をプレゼントする。あまりにも感動的なユイの東京行き実現と夢のステージの模様は、NHKオンデマンドなど動画配信サービスで観ることができるので、そちらも忘れずにご鑑賞ください。