2021年よりバンド体制になったcolormal(カラーマル)のボーカル/ギター担当イエナガと、TikTokでブレイクし先日メジャーデビューを果たしたmeiyoの中の人・ワタナベタカシの二人による連載〈今月のイエナベ!〉。友人同士でもある二人が、前月に聴いて良かった音楽を3曲ずつ、〈イエでナベでも食べながら報告しあう〉ように紹介する連載です(たまに編集の酒井が茶々を入れます)。1年弱に及んだ当連載、実は今回で最終回になってしまいました……が、最後まで張り切ってまいります!

★colormalイエナガとmeiyoワタナベタカシの〈今月のイエナベ!〉記事一覧

 


suisei “Check me out”

イエナガ「昨年イベントでご一緒して知った名古屋のバンドです。凄くアレンジのセンスを感じるし、演奏も上手で記憶に残っていたんですけど、今年に入ってリリースされた音源がその時の印象を閉じ込めた良さがあったのでご紹介をさせてください。

この曲は特に編曲の巧みさが光っていて、コーラスのヨレ感とか慌ただしい曲の構成は、ともすれば〈バンドの悪ふざけっぽさ〉くらいで消化されてしまいそうなんですけど、絶妙な中毒性に昇華されていて楽しいんですよ。

可愛い曲だしさらっと演奏しているけど、歌詞なんかは〈ザ・めんどくさい女の子〉を詰め込んだ感じで最高ですよね。名古屋のバンドって野生味溢れるイメージが強かったんですが、こんなに華のあるポップスをやる人達がいるんだ~……と中部地方への憧れを強められたのでした」

ワタナベ「これは……只者じゃない感じをビンビンに感じますね! 大好物! ずっと東京でしか音楽やってないので各地方のバンドシーンというものの存在をあんまり感じたことがないんだけど(もはやいまバンドシーンというものの存在自体が危ぶまれているような状況だけど)。ポコポコした音色と可愛い雰囲気は、誰と言われると困るけどなんとなくインターネットミュージック感もあって、ボカロとかをメインで聴いてる人にも刺さりそう」

酒井「約1年前にタカシくんからこの連載の企画が上がって、毎月どんどんこういういい音楽を紹介してくれるので〈この連載始めてよかった~〉と思ったことを思い出しました。suisei、フォローした!」

 

②にしな “ケダモノのフレンズ”

ワタナベ「にしなさん、川谷絵音さんのTwitterでの企画募集(後日、〈美的計画〉と名がついた)で氏から大絶賛されたこともあり注目されていたと思うのですが、それとは全然関係なくTikTok観てたら突然流れてきたこの曲に一瞬で心奪われちゃいました。信じられないぐらい良い声、信じられないぐらい良い曲、もうこれ以上語ることないよ!

強いていうなら、もう最初からずっと切なすぎるコード進行にやられ、極め付きはサビのベースですね。しびれるプロの引き算!」

イエナガ「にしなさんは“ヘビースモーク”が流行った辺りで聴いていて、めちゃくちゃ歌が上手いけどひょんなことですっ飛びそうなスリリングさもあって、生粋のアーティスト的なボーカリストだ……と驚嘆しました。所謂ギター弾き語りから発展した歌メロがストレートな曲と、この曲みたいな最近っぽいトラックにも違和感なくハマる作曲のセンスが羨ましい! 最新曲の“スローモーション”のMVを観て思ったんですが、ビジュアル面も含めてプロデュースがすっごく丁寧。これからもいい音楽にはお金をどんどんかけて欲しいです、私」

 

③Sundae May Club “シャングリラ”

イエナガ「長崎の現役大学生らしくて、結成から日の浅いタイミング(2019年)でtetoの全国ツアーに出演していたりと、なにやら凄いバンドみたいだな……と思って聴いてみてハマりました。

小技なし直球のボーカルが気持ちいいし、変にエスプリを効かせたりしてこない作編曲が気持ち良くって。〈ウルトラスーパーポップバンド〉って自称してるみたいなんですが、まさにそれくらいのメジャー感がありますよね。あと面識ないけどメンバー全員いい人そう。

それと映像の色味が曲の凛とした感じとマッチしていて良くないですか? 軽音サークルの部室っぽい場面とか、埃っぽい感じも含めて懐かしさすら感じちゃって……普段MVがいいな、とか取り立てて思うことは殆どないんですけど。去年観た音楽関連の映像の中で一番好きでした」

ワタナベ「僕大学行かない選択をとった人なので、噂にしか聞いたことのない軽音サークルの部室の感じとか、空がパーッと開けた学校の屋上みたいなMV観てると切なくなってきちゃう。

メロもアレンジも全体的にそうそう、これこれ!って声を大にしたくなるような感じだけど、とにかく声が抜群に良いね! ライブハウスで少人数のころから追っかけて、でっかいフェスで見て泣きたいな(概念みたいなたとえで申し訳ない)」

酒井「軽音サークルの部室ってこんな美しいものじゃなかったけど(笑)、でもよく分かる。colormalの写真を撮っている瀬戸すなおさんの写真にも通ずる雰囲気があって、しかもそれが音にすごく合ってる。タカシくんの概念もよく分かる。なんか、直接通過してこなくってもそういうのに近い青春がみんなあったと思うし、Sundae May Clubも誰かのそういう存在になるんだと思います」