その逝去から40年……不世出の奇才がリミックスで甦る!

 いつ、どこで、どう出会おうとも、奇抜過ぎる見た目でリスナーに衝撃を与え続けるクラウス・ノミ。そのインパクトは、今号(「bounce」2023年10月号)に掲載されたうじたなおき氏の連載でも描かれている。白塗りのメイクに尖らせた唇、トリプル・モヒカンのような髪型、逆三角形の形をした謎のコスチューム……一度見たら忘れられない彼が、今年は没後40年。先日は『Klaus Nomi』(81年)、『Simple Man』(82年)という2枚のオリジナル・アルバムにベストやライヴ盤を含む4作がBlu-spec CD2でリイシューされたが、今度は新たなリミックス・アルバム『Remixes』がリリースされた。

KLAUS NOMI 『Remixes』 Legacy/ソニー(2023)

 1944年にドイツのバイエルン州インメンシュタットで生まれたノミは、73年にNYに移住。オペラの素養を持つ演劇的な歌唱とファニーなエレクトロ・サウンドが同地の地下シーンで話題を呼び、マドンナやキース・ヘリングが親交を深めたことで知られるナイトクラブ〈クラブ57〉などの顔のひとりに。79年にデヴィッド・ボウイのバック・シンガーとしてTVに出演し、さらなる注目を集めつつも、83年にエイズによる合併症で他界した。

 このたびの『Remixes』は、そんな彼を現在の電子音楽シーンから再評価しようとする一枚だ。リミキサー陣には、ブラック・ストロボのアルノー・レボティーニ、ミス・キトゥンとの作品で知られたハッカー、00年代のフレンチ・エレクトロを牽引したパラ・ワンらが参加。それらフレンチ勢にデペッシュ・モード~イレイジャーのメンバーとして知られるヴィンス・クラークを加えた8組が、いまのダンスフロアで鳴るべきファットかつソリッドな音像で、ノミのサウンドを更新している。

 とはいえ、すべての収録曲でノミの声は効果的に使用されており、特にハイパーポップ的なサウンドと彼の歌唱の相性の良さを明らかにしたカンブラスターのリミックスは、クラウス・ノミの音楽が持つ現代性をもアピールするだろう。意義深い試みの作品であり、それゆえに次は平沢進や石野卓球、butajiあたりが参加した日本版が出ることを願ってみたり。

没後40周年企画としてリイシューされたクラウス・ノミの作品を紹介。
左から、81年作『Klaus Nomi』、82年作『Simple Man』、83年のベスト盤『Encore...』、86年のライヴ盤『In Concert』(すべてRCA/ソニー)