OPUS OF THE YEAR 2023
[特集]bounceが選ぶ2023年の100枚+
ゆく年くる年。ゆく音くる音……いろいろなことが起こりすぎて、何とも言えない気持ちになることの多かった2023年。さっさと忘れてしまいたい気持ちもありつつ、それでも、そんな日々を彩った音がこんなアルバムたちと共に素敵な記憶として残っていきますように。まずはこの100枚から!!
ONE HUNDRED PLUS ONE 2023
ライター陣の選ぶ2023年の〈+1枚〉
●赤瀧洋二

ミニマリスト……まではいかなくても、個人的にはよりシンプルな生活をめざした2023年。聴く音楽も同様で、より音数が少なく、わかりやすいものに魅力を感じ、そんななかで出会ったのがこのアルバムです。ストリングスを含め、ほぼすべての演奏がアコースティック楽器で行われ、それらのプリミティヴな響きが本当に美しく感動的。フォーキーで研ぎ澄まされたメロディーとヴォーカルも素晴らしく、〈シンプル〉に良い歌と演奏が堪能できる傑作だ。
●荒金良介

いまもっともライヴを観たいバンドが彼ら。ポスト・ターンスタイル的なポジションで、ハードコア/パワー・ヴァイオレンスにソウルやR&Bを挿入するセンスの良さは抜群。今年はソウル・グロー、エンジェル・ダスト、アキューズドAD、リタジーのライヴを堪能。そして、ドイツ最大級のメタル・フェス〈Wacken Open Air 2023〉に行き、ジンジャー、アイアン・メイデン、ベアトゥース、スリープ・トークン、ドレインなどを観て、ブッ飛ばされました。
●池谷瑛子

90年代R&Bから音楽にハマった世代としては、この年の〈Throwback Soul〉シリーズ全40作には〈リアルタイムで聴いていたものが復刻される時代がいよいよ来た……〉と感慨深い気分に。ミックステープ(カセットのほうです)で曲は知ってたけど盤は持っていなかったリフをはじめとして何枚も購入し、当時はわからなかったアルバムの魅力を味わいつつ背景をライナーノートで知るという、CDならではの回顧を楽しみました。
●一ノ木裕之

いささか低調な観もあった2023なれど、それも我が身の情弱のなせる業かと納得するやらガッカリするやら、ってこんなんばっか。リタジーがすべてを薙ぎ倒したかと思えば先頃の来日を知らんかった体たらくあり、チケット買って行くの忘れたライヴありでまたがっくし。アルバム大好きなのにまだ観れてないof Tropiqueやスフィアン、シルヴィア・ペレス・クルスら2023のマイベストから2024はどれくらい生で観れるかなー。
●大原かおり

前の年と特に変わったこともなく、数の論理オンリーになってしまってる一辺倒な感じとかとはまったく無関係に、好きなものを好きなように聴いてまったりと過ごしました。ニュー・ジャック関連のリイシューがあったタイミングで聴いた本作は、過去と現在を自然に繋げてくれるようなコンテンポラリー・ゴスペルの快作。他にもSRG発などのオーセンティックなR&B方面でいろいろ自分的に収穫がありました。いい作品はいくらでもあるので!
●小野田雄

ブロックハンプトンやタイラー・ザ・クリエイターと共演してきたクィアのシンガー・ソングライターが回帰したアメリカーナのルーツ。その美しく内省的な作品世界をイーサン・グルスカのプロデュース・ワーク、ジャスティン・ヴァーノンやサム・ゲンデルらの演奏によって具現化した本作は地味に思うかもしれない。しかし、トレンドの細分化が極まった2023年においては、そのオーセンティックな響きに強く惹きつけられた。
●香椎 恵

閉塞感や絶望感がいよいよ半端なくなってきた2023年。怒りの飛び交うSNSもやめたりして情報量を大幅に減らしたら多少は気分も安定してきた感じで、社会性という意味ではアレだがまあ仕方ないでしょう。そのせいで出遅れたりしても、それはそれでそういうものだと思えるようになりました。引き続きポップでスムースなものを楽しく聴いていて、プリヤ・ラグの“Easy”とかたまに会える2ステップにハッとした年でもありました。
●金子厚武
コロナ禍に中国版のTikTokである〈抖音(ドウイン)〉経由でバズが起き、知名度が大きく上昇したシーハーズ。5月に深圳で開催され、盟友・The fin.とともに出演した〈Strawberry Music Festival〉を現地で体験し、オーディエンスの盛り上がりからは彼らの人気の高さが確かに感じられました。国内外のアーティストの出入りが一気に活発になった2023年において、日本語で歌うインディー・バンドに訪れた転機は非常に未来を感じさせるものでした。
●北野 創
結束バンドの衝撃も冷めやらぬなか、声優がリアルバンド活動を行う作品「BanG Dream!」から登場したこの5人組は、青春パンク~叙情系ハードコアを下地にポエトリー要素も採り入れた音楽性、TVアニメの物語とのシンクロ、声優・羊宮妃那の唯一無二な歌唱表現を含め、キャラクターソングの可能性を拡張してくれた。「ラブライブ!」発の蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブや、フランチャイズ化で苺りなはむらも巻き込んでエリアを広げる「電音部」など、キャラソン周辺ではいま、オルタナティヴで刺激的な音楽が続々と生まれている!
●鬼頭隆生

〈音楽とその周辺〉に着目した、優れた作品に出会えた一年でした。映画では、音楽業界の構造的問題にも踏み込んだドキュメンタリー「ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅」、書籍では戦後の日米ジャズを軸とした裏社会史的な「欲望という名の音楽 狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ」。three blind miceの大規模リイシューから4年、思いがけず登場したこの編集盤も、当時の日本のジャズが纏っていたエネルギーと実験精神、先鋭性を浮き立たせる一枚でした。
●桑原シロー

加齢など知ったこっちゃない、とオーヴァー80世代が元気に暴れまわる光景はもはや日常的なものとなった感があるが、年輪を重ねた者だけが持つ凄みや皮膚感覚が貼り付いたこの大御所の新作を聴いたりすると、ふと神妙な気持ちに駆られて背筋がピンと伸びてしまう。この歌をここに残しておかねば、といった切実さが滲むヴォーカルに刻まれたあまりに深い皺。声色の深さと濃さはレナード・コーエンのそれとタメを張る。
●郡司和歌
2023年はライヴから夜中の小バコまで、ようやく音場へと足を運ぶ日常が戻ってきた年だった。なかでも念願の坂本慎太郎のライヴはその存在感に超絶痺れて感涙したが、多幸感迸るムードに始終笑顔になりまくりだったのは思い出野郎Aチームのライヴ。今作でも彼らの持ち味である日々に転がるふとした可笑しみや優しさに思わず笑い転げたり涙したり。家族写真的なジャケにも日常の愛が溢れているようで何だかニンマリしてしまう。いまの時代に必要な音楽だ。
●近藤真弥
半ば使い捨てのように、凄まじいスピードで多くのグループが消費されていくK-Popにおいて、年月を重ねたからこそ表現できるものがあると教えてくれるレッド・ヴェルヴェットの『Chill Kill』。幾多の苦難があっても、互いに希望という名の灯火となり進んでいこうと訴える内容は、現在の世情に対する批評性を見い出せる。5月にぴあアリーナMMでおこなわれた来日公演も、先鋭性とキャッチーさが共立した素晴らしい2時間50分でした。
●澤田大輔
フル・アルバムのリリースがご無沙汰なこともあって、双葉双一というシンガー・ソングライターの活動ぶりが(自分には)いささか見えづらくなっていた2023年、不意打ちのように届けられた氏のトリビュート・アルバム。友部正人、原マスミ、知久寿焼、ふちがみとふなと、mmm、割礼といったここでしか成立し得ない17組によるカヴァーが、どこにも帰属しない詩情をたたえた楽曲たちの輝きを改めて知らしめてくれたなあ、と。2024年はぜひ新作を!
●田山雄士
コロナ禍4年目……なんて世間一般ではもう言わないんでしょう。弛緩した空気に怖さを覚えつつ、それなりに健康に過ごせていてありがたいなとも思います。ミュージシャンの訃報が多かったので。2023年によく聴いたのは、くるりやスピッツといったベテラン勢のスルメ的なアルバム。エイプリルフールから始まり、LIQUIDROOMワンマン大成功まで駆け上がったバンド、色々な十字架にも楽しませてもらいました。ナンセンスなだけじゃなく、ヴィジュアル系への愛があふれまくったアプローチは新しかったです。
●土田真弓

2023年は自分のルーツにあたるアーティストの訃報が続き、なかでもBUCK-TICKは私がクラウトロックやニューウェイヴ/ポスト・パンク周辺を聴くきっかけのひとつだったこともあって、櫻井敦司さんのニュースは衝撃が大きすぎました。ちなみに、2023年の界隈でストライクだったのはクラウス・ノミの復刻群と併せて届けられたリミックス盤。もちろん、BUCK-TICKの最新作も。私の音楽人生に指針をもらえたこと、感謝しかないです。
●長澤香奈
一癖も二癖もある変化に富んだロック・サウンドと、キャッチーなメロディーが頭から離れず、本作を再生する日々。楽曲ごとの濃度が高く、聴くたびにハマっていく中毒性も相まって、気づけばNEEの虜に。気落ちしても“本日の正体”で心を奮い立たせ、一年を駆け抜けました。他にも、NiziUの“HEARTRIS”にときめいたり、懐かしいK-Popを聴き直したり、KANさんの訃報に呆然としたり、〈PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS〉にハマったりと、2023年も個人的なトピックの多い一年でした。
●野村有正
教授の古希を記念したトリビュート作は亡くなる前のリリースだったこともあり、悲しみに暮れるでも感傷に浸るでもなく、多大なリスペクトと大いなる愛に溢れていた。なかでもサンダーキャットやエレクトリック・ユースといった若手が偏愛ぶりを遺憾なく表現し、そのエールは病床にも届いていたことだろう。ラスト・コンサートを催し、みずからの葬儀のプレイリストを用意するなど、美しい創作を遺した音楽家は去り際まで見事に美しかった。
●林 剛

マスター・ソウル・ボーイ名義でも活動していたUKのシンガー/ソングライターだが、本作での甘くデリケートな美声、こちらを見つめる表情までもがエル・デバージそっくりでニヤけてしまった。エイドリアナ・エヴァンスみたいな爽快感に始まり、エルとPJモートンの共演を思い出すスティーヴィー調、最後の“De La Soul”なる曲まで、ブーンバップのライト・メロウ解釈とでも言うべきナヨなソウルに心酔。理屈はいらない。ただただI Like It!
●Masso 187um

まさかの来日も実現したラリー・ジューン、リラックスしたショウで最高&プッシャ・Tとの遭遇もヤバめでした。グッジョブ、チリー!/ジェイ・ワーシーの来日公演も良かった/ロック・マルシアーノは中止になってホッとしたって人も多いはず/お気に入り作品は他にもいろいろありましたが、いま現在はIO、炒炒、Young Posseあたり/「イ・ドゥナ」のスジも最強でした/ヒプノタイズ・マインズ周辺にいたジェリー・ロールがキャラ変してグラミーにノミネートされるまでになってたのが2023年いちばんの衝撃です。
●村尾泰郎
フランスのシンガー・ソングライター、ピエール・バルーが、82年に日本のミュージシャンたちと共演した伝説のライヴの初CD化。2023年に亡くなった高橋幸宏、岡田徹をはじめ、ムーンライダーズの面々や加藤和彦など錚々たるミュージシャンが参加。バルーはミュージシャンや観客に語りかけ、遊び心溢れる演出で親密な空気を生み出していく。悲しい出来事が多かった一年だけに、アルバムを包み込む幸福感に心和んだ。
●村上ひさし

ハウス愛が急激に復活したこの一年。ドム・ドラやヴィンテージ・カルチャーなどトラック単位やミックステープで聴くことが多かったけれど、普段の外出時に愛用しまくったのがSGルイスの本作。ちょっと遠出をする時や、街をブラつきつ時に気付けばリピート。互いにコラボし合うトーヴ・ローとの相性も抜群だし、9分弱ある“Epiphany”の没入感はこれぞ沼!という快楽の局地。やたら短い曲が増殖中のトレンドには真逆行(笑)。
●山口哲生

過去作に引き続きブレインフィーダーからリリースの第3作目。幻想的で浮遊感たっぷりだけど、ビートは超刺激的。しかも美メロなんてもう大好物以外の何物でなかったです。『識別可能なソースがない音』という作品題通り、意識を地球外までぶっ飛ばせるような感覚が心地よく、コロナ明けで賑やかさを取り戻した生活と、異常なまでに続いた訃報でぐらぐらする心を落ち着かせるために、グランジ × シューゲイザーなバンドと合わせてよく聴いていました。
●山口智男

VARIOUS ARTISTS 『The Task Has Overwhelmed Us (The Jeffrey Lee Pierce Sessions Project)』 Glitterhouse(2023)
80年代のLAパンク・シーンの伝説として語り継がれているガン・クラブのフロントマン、故ジェフリー・リー・ピアース。彼が残した未発表曲を盟友やいわゆるチルドレンが完成させるプロジェクトの第4弾。本作をきっかけにレッド・ホット・チリ・ペッパーズやクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジに繋がる80年代のLAパンク界隈を掘り返すという楽しみを発見。まだまだ知らないバンドや聴いていないアルバムが山ほどあることにいまだワクワクは継続中。








