はまじあきの4コマ漫画を原作とするアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」。2022年10月~12月にかけて放送された同作は、原作ファンやアニメ好きはもちろん、声優キャストが歌唱する主題歌や劇中歌などを通じて音楽ファンからも愛され、その余波はアニメ放送開始から1年が経った現在でも広がりをみせている。
なぜ「ぼっち・ざ・ろっく!」の人気は衰えないのか? 原作そのものの面白さは当然として、そこには映像化に際して付け加えられた〈音楽〉が強く関係しているのではないか。アニメ放送1周年を迎えた今、同作を深く知るライターのs.h.i.に改めてその魅力を考えてもらった。 *Mikiki編集部
〈結束バンド〉を入り口としたアニメ人気も
2022年を代表するアニメの一つとなった「ぼっち・ざ・ろっく!」は、本放送が終わった後も熱烈なファンを増やし続けている。今年の5月21日に開催されたイベント〈結束バンドLIVE -恒星-〉は即日ソールドアウト、ライブ自体も非常に優れたパフォーマンスで好評を博した(11月22日には同イベントの模様を収録したBlu-ray/DVDがリリース)。
さらに、結束バンドは〈下北沢カレーフェスティバル2023〉の公式アンバサダーに就任するなどコラボレーション企画も多く、2024年にはTVアニメの劇場総集編の公開も予定されている。放送1周年を迎えた今に至っても、まだまだ勢いは止まらないようだ。
そうした人気の理由の一つとして考えられるのが邦楽ロックへのオマージュで、主要キャラクターの名前の由来がASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーだということや、原作漫画の扉絵も邦楽ロックバンドのMVを参照している(ASIAN KUNG-FU GENERATION、フレデリック、クリープハイプ、UNISON SQUARE GARDENほか多数)など、音楽ファンに対するアピールポイントの多さは確かな強みになっている。
その上で大事なのが、劇中バンドである結束バンドの音楽の魅力だろう。作品の舞台となったライブハウス、下北沢SHELTER周辺のギターロックを意識し、各キャラクターの性格から演奏の癖を考えて作り込まれたアレンジは、筆者が担当したこちらのレビューや実際の制作スタッフへのインタビューでも述べられているように、邦楽ロックの系譜を引き継ぎつつ、そこから飛び出す魅力に満ちている。そうした音楽としての強度があるからこそ、アルバム『結束バンド』を聴いてからアニメ本編にもハマるようなパターンも少なからず生じたのだろう。ジャンルの枠を越えて聴かれるべき優れた作品だ。