さまざまな表現方法を磨いてきた自身の発端にあったのは〈音楽〉――歌を経由して12通りにTickされた彼女は、これまで見たことのない表情に溢れているよ!

 声優として「けいおん!」「TIGER & BUNNY」「ドキドキ!プリキュア」など多数の人気アニメに出演し、声優ユニットであるスフィアの最年少メンバーとして活躍。さらに女優としても活動している寿美菜子。そんな彼女のことをもっと知りたいというあなたにうってつけの一枚――それが9月17日、23歳の誕生日にリリースされたソロ名義のセカンド・アルバム『Tick』だ。

 「音楽は、一番初めにやりたいと思ったことなんですよ。そこから表現は他にもいっぱいあるということを知って、芝居とか声のお仕事もやってみたいという、そういう順番があっての〈いま〉なので。〈いまの自分を残す〉という意味では、音楽が一番だと思ってます」。

寿美菜子 『Tick』 MusicRay’n(2014)

 本作のテーマは〈いまを残す〉ということ。先行カットの“Believe ×”が元気いっぱいのロック・チューンで、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が提供した“pretty fever”やその前のシングル“プリズム”が4つ打ちのダンス・ポップであったように、今作もロック系とシンセ・ポップ系の楽曲が仲良く同居。そこに新たな挑戦をふんだんに盛り込み、歌詞の世界観も合わせて〈いまの美菜子〉を浮かび上がらせるのがコンセプトだ。

 「新曲が7曲あるんですけど、どれも自分がやってみたかったジャンルを、いまの私ができる範囲でみんなが考えてくれて、出来上がった楽曲です。歌詞に関しては、〈美菜ちゃんはもっといろいろな思いを持ってるし、まだ見せていない面をどんどん出したい〉というディレクターの言葉があったんですよ。かなり勇気が要ることだったんですけど、私からテーマを出して、作詞家さんとお話しながらいろいろ考えて作らせてもらいました」。

 例えば“HAPPY HAPPY LIFE”に登場するのは、外出しようとしたら急な土砂降りに遭ったり……と、なんとなくツイてない雨の日を過ごす普通の女の子。あるいは“MAGNETICA”の、猫の瞳のように気分がくるくる変わるわがままで可愛い女性。「どれも自分の一部です」と、彼女は屈託なく笑う。

 「結果、〈不器用で真っ直ぐ〉というのが美菜ちゃんに合う言葉だね、ということになったんですよ。〈私はこう思う〉ということを良くも悪くも曲げられなくて、そのせいで人とぶつかることもいっぱいあるので。“ウレイボシ”にはそれが特に出ていて、〈ぶつかることもあるけど、自分が大切にしている人には私のことをわかってほしい〉という思いを込めてます。“iwanna be my precious one”も似てるんですけど、こっちは〈時代のなかでの自分のあり方〉みたいなことを歌ってますね。人といるなかで、ここは我慢する、ここは我慢しないということがあるけど、その選択が全部正しいとは限らない。〈でも私はこう思う〉ということを歌ってます」。

 いわゆるラヴソング風のナンバーはなく、前向きだが、かといって単純ながんばれソングでもない。23歳になるシンガー、寿美菜子の心のなかのそのまんまを、曲ごとに表情を変えた歌い方で率直に綴る。『Tick』は彼女にとって、新たなターニング・ポイントになるアルバムに違いない。

 「忙しくてめまぐるしい日々のなかで、いまの私をどれだけ残せるか。それを形にしていったので、気持ち的にはわりと、全体を通してストレスがかかってる曲が多いと思うんです。でもそれって、人は絶対通る場所だと思っていて、そこで人間的な共感が欲しかったというのはあります。アルバム、いろんな人に聴いてほしいですね。そこで何かを感じてもらえたら嬉しいです」。

 

▼関連作品
寿美菜子の2012年作『My stride』(MusicRay’n)、アニメ「TIGER & BUNNY」関連の2013年のシングル『TIGER & BUNNY-SINGLE RELAY PROJECT-「CIRCUIT OF HERO」Vol.2 ブルーローズ→スカイハイ』(ランティス)、アニメ「ドキドキ!プリキュア」のキャラソン・ベスト『ドキドキ!プリキュア ボーカルベスト』(マーベラス)、スフィアの2014年作『4 colors for you』(GloryHeaven)
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