PENGUIN RESEARCH
熱き〈意志〉のもと全力で生き急ぐ精鋭バンド!

 声優として活動する生田鷹司(ヴォーカル)と、LiSA茅原実里などアニソン周りを中心に編曲/楽曲提供を行う堀江晶太(ベース)を中心に、堀江の音楽仲間で彼の楽曲に惚れ込んだ神田ジョン(ギター)、新保恵大(ドラムス)、柴崎洋輔(キーボード)という、凄腕のスタジオ・ミュージシャンたちで結成されたのがPENGUIN RESEARCH

PENGUIN RESEARCH WILL ウルトラシープ(2016)

 今年1月のデビュー・シングル“ジョーカーに宜しく”に続き、今回登場するファースト・ミニ・アルバム『WILL』を聴いて驚くのが、堀江の作詞/作曲によるアップテンポな楽曲群に詰め込まれた情報量と音数の多さだ。なかでも“SUPERCHARGER”はその歌詞にある通り、〈生き急げ〉と言わんばかりに全楽器が縦横無尽に暴れ狂っている。

 「この曲みたいなアレンジのパターンを僕は〈ジェットコースター系〉と言っていて。崩壊する一歩手前まで(音を)詰め込むのがスリリングだし、前のめりな感じで好きなんですよね」(堀江)。

 さらにマス・ロック的な幕開けから一気に言葉を畳み掛ける“雷鳴”もテクニカルだ。

 「“雷鳴”は晶太君がレコーディング前日にデモを持ってきて。で、イントロを聴いた瞬間に〈前日にこれか……〉ってなる難しさで(笑)」(新保)。

 それら個性的なアレンジのロック・チューンが並ぶが、神田は「いちばん凄いのは歌詞」だと語る。

 「例えば“Wasteland”(シングル“ジョーカーに宜しく”のカップリング曲)に出てくる〈生き余す〉って、自分の中に感覚としてあったけど、それを言葉にすることができなかったんですよ。晶太君は、人がぼんやりと感じていることを歌詞にして伝えられる人間だと思うんです。だからバンドがもっと大きくなると確信してるし、特に“A WILL”はそんな晶太君のずっと書きたかったことが詰まってる気がします」(神田)。

 〈WILL〉には〈意志〉という意味があるが、〈A WILL〉とすることで〈遺言〉という意味になる。ドラマティックで爽快感がありつつも、どこか感傷的な“A WILL”の歌詞は、堀江が幼い頃に愛犬の最期を看取った経験を元にしているという。

 「悲しかったけど、自分の中に自分のものではない〈生きる理由〉が入った感じがしたんです。人間って別れを経験するたびに、その相手の言葉とか夢とか約束とか記憶を背負っていく。僕はそれを〈遺言〉だと思っているし、それを希望にして生きていきたくて。(『WILL』に収録している)“世界最後の日に”と“敗北の少年”は昔から大事にしていた曲ですけど、それも同じような感覚なのかもしれない。形は変わったとしても当時の思いを連れていきたかったのかな、って」(堀江)。

 その“敗北の少年”は、軽やかにして力強いピアノをアクセントにしたナンバー。持ち前の高音を爆発させ、泥臭くとも前に進む意志を歌う生田の声に胸が熱くなる。

 「この曲はもともとギター・ロックだったけど、鍵盤を入れる形にアレンジして。レコーディングでは、フルグランドのスタインウェイを弾かせてもらいました」(柴崎)。

 「僕は他のメンバーと違って、いままで音楽は趣味でやってきたから、もしかしたら才能がある人には一生敵わないかもと思ってて。だけど、いまの僕にできることって、這いつくばってでも歌っていくことなんですよね。“敗北の少年”は自分のそんな気持ちとすごくリンクするところがありました」(生田)。

 声優や作曲家、ミュージシャンが集まったというバンドの成り立ちに「イロモノに見られても構わないけど、中身のないバンドと思われるのは嫌だ」と話す堀江。エモい発言だが、「昔の自分が見たら引くと思う」と言う。

 「昔はがんばることに抵抗のある人間だったけど、生きていく限りは何かを成したいし、そのためにはどう考えても時間が足りないから、暑苦しいと言われようが熱血にならざるを得なかったんです。今回はそういう感情を全部パッケージできましたね。めちゃくちゃ熱く仕上がっている自覚はあります」(堀江)。