2009年からLAを拠点に活動するドーズは、今やアメリカ西海岸のロックシーンを代表するバンド。60〜70年代のウェストコーストサウンドを彷彿させるメロディーと、卓越した演奏力で世代を超えたリスナーに支持されてきた。2022年にはフジロックで初来日。その圧倒的なパフォーマンスで大きな反響を呼んで日本ツアーが決定した。ツアー中の忙しいなか、ライブを直前に控えた楽屋で、ソングライティングを担当してるボーカル/ギターのテイラー・ゴールドスミスに話を聞いた。

ラウドで長い曲を思い切りプレイしたい気持ちが高まった
――今回は初めての日本ツアーですね。2022年にリリースした最新作『Misadventures Of Doomscroller』はパンデミック中に制作されたアルバムでした。パンデミックの影響で1曲も事前にライブで披露することなくレコーディングされたと思うのですが、その後、ライブで演奏してみて新たな発見はありました?

「いつも、ライブでは新作からやれる曲は3〜4曲くらいなんだ。ほかにどうしてもやらなきゃいけない曲があるし、新作のなかにはステージ向きじゃない曲もあるからね。
でも、『Misadventures Of Doomscroller』は全曲ステージ映えする。アレンジに関してもライブに向いているから、いつも以上にライブでやる曲が増えているんだ。ライブではイントロを付け足したり、ソロが長くなったりして、オリジナルよりも尺が長くなる傾向があるけど、今回のアルバムはもともと長い曲がさらに長くなる。そういう変化を楽しんでいるよ」
――『Misadventures Of Doomscroller』は長い曲が増えて曲の構成やアレンジが重視されています。この変化には何かきっかけや目的があったのでしょうか。
「これまでのアルバムではインプロビゼーションとか長いギターソロとか、そういったものが曲にふさわしくないと思って特には取り入れてこなかった。でも、パンデミックで身動きが取れなくなった時に、ライブがすごく恋しくなって、ラウドで長い曲を思い切りプレイしたいという気持ちが高まってきた。そんななかで曲を書いてできたのがこのアルバムで、本作は自分たちがライブバンドであることの証なんだ」
――パンデミックの影響があったんですね。
「僕らはジャズやプログレも好きで聴いてたけど、その要素はこれまで反映されていなかった。自分たちがやっているタイプの音楽に、そういうものをおおっぴらに取り入れるのは許されていないような気がしてね。
でも、パンデミックの間、もしかしたら二度とツアーができないかもしれない、という不安を体験して、だったら、やりたいことをアルバムで思い切りやろうと思ったんだ。ビジネス的なことや体面を一切考えずにね。その結果、生まれたのが『Misadventures Of Doomscroller』なんだ」
――曲が長くなってもバンド独特の語り口があって、9分ぐらいある曲も長く感じさせません。構成やアレンジを練るうえで心掛けたことや目指したことはありますか?
「今までは必要最小限の素材を、最大限の効果を発揮するように使ってきた。今回はひとつの曲が扱いきれる素材を目一杯詰め込んだんだ。やれることを全部やる。それは僕たちにとって新たなチャレンジで、すごくエキサイティングだった。アルバムをある程度出すと、だんだん手慣れた感じになってしまうけど、今回は一瞬一瞬が新鮮で新しい領域に入った気がしたよ」

プロデューサーのジョナサン・ウィルソンが作る〈良いサウンド〉
――何よりも自分たちが楽しめることが大切だったんですね。
「やりたいことはたくさんあるけど、退屈な瞬間を生み出さないように、どうやって曲を繋げていくのか。どうやって曲を前に進めていくのかを意識した。
プロデューサーのジョナサン(・ウィルソン)は、いまロジャー・ウォーターズのライブの仕事をしていて10分以上あるピンク・フロイドの曲を手掛けている。その経験も生かされていると思うよ」
――ジョナサンとはファーストアルバム『North Hills』(2009年)以来の長い付き合いですが、彼の仕事のどんなところを気に入っていますか?

「ファーストの時は僕らがアイデンティティを見つけようとしている段階だった。曲はいっぱいあったし演奏もできたけど、まだ自分たちの個性を見つけられなかった。そんななかで、ジョナサンは僕ららしいサウンドを見つける手伝いをしてくれたんだ。そして、自分たちが進むべき道を見つけてからは、僕らが書く曲や詩に関して一切口を出さなかった。
彼がやってくれるのは良いサウンドを作ること。ジョナサンは、ドラム、ベース、ギター、キーボードといろんな楽器を弾けるから楽器のことも相談できる。アンプはこんな感じでペダルはこうっていう風に、サウンドやトーン作りにおいて彼の貢献度はすごく大きいんだ」
――かつてジョナサンはパーティーを開いて、世代を超えてミュージシャンを呼んだそうですね。そのパーティーが西海岸のロックシーンを豊かにしました。あなたはそのパーティーに参加していたそうですが印象に残るエピソードはありますか?
「ジョナサンはそういうパーティーをよくやっていて、僕はそこで(トム・ペティと一緒にやっていた)ハートブレイカーズのメンバーやコナー・オバーストと知り合い、その後、一緒にツアーをするようになったんだ。
ジョナサンはミュージシャンシップ、楽器を演奏するミュージシャンの腕を評価していた。Pro Toolsや機材に頼るのではなく、自分の技術でプレイすることに価値を見出す人で、そんな価値観に共鳴したミュージシャンが彼の元に集まっていたんだ。最近はみんな年をとって、ジョナサンは結婚して、僕は子供ができて、パーティーは開かれなくなったけどね」

テイラーが考える西海岸ロックの個性と歴史
――あなたは10歳の頃から、ザ・バンドやジョニ・ミッチェルなど60〜70年代のアーティストを聴いていたそうですね。そういうリスニング体験がバンドサウンドに反映されていると思います。そういう音楽を聴いてたのは、ミュージシャンだったお父さんの影響もあったのでしょうか。
「そうだね。父はソウルやR&Bの人だったので※、JBやオーティス・レディング、フォー・トップスとかをよく聴いていた。ビートルズとローリング・ストーンズは親から教えられたけれど、その後、聴くようになったボブ・ディランとかグレイトフル・デッドは自分で見つけたんだ。
父親からの影響で一番大きいのは楽器を演奏すること。僕が楽器を演奏するようになった頃は、コンピュータで音楽を作るのが普通になっていた。父親が出演しているライブを観にいくと、父親がステージから〈上がってこい〉って誘う。それで楽器を持ってステージに上がり、他のミュージシャンの手を見ながら音を拾って演奏することを学んだ。そういう古風なやり方で楽器の弾き方を学んだのは父親の影響なんだ」
――父親から受け継いだミュージシャンシップがジョナサンとの交流に繋がったと思うと感慨深いですね。ドーズはウェストコーストロックの後継者と言われることが多いですが、ウェストコーストロックの重要な要素は何だと思いますか?
「実はジャクソン・ブラウンやウォーレン・ジヴォンといった(ウェストコーストを代表する)アーティストは、ファーストアルバムを作った時点では全然聴いたことがなかったんだ。その後、発見して大好きになったけどね。
そうだな……ウェストコーストロックのアイデンティティは思慮深い歌詞が個性の一つだと思う。例えばパティ・スミスのようなニューヨークのアーティストに比べたらエッジは効いていないかもしれないし、訴えかけてくる主張があるわけでもない。でも、僕に強く訴えかけてくる歌詞がすごく多いんだ。
カリフォルニアの豊かな歴史を振り返ると、ジャクソン・ブラウンやフリートウッド・マック、 スティーリー・ダンなんかは、レコーディングにこだわった作品を残している。そこも僕らが興味を持っている特徴なんだ。
あと、ウェストコーストロックは、いかにも〈ロック!〉という感じの激しいものではないのも特徴だね。僕らも〈ロック〉しているつもりなんだけれど、〈ロック〉な人たちに言わせるとライトみたい(笑)。これはグレイトフル・デッドなんかにも言えることで、ハードなことをやっているようでいてギターのトーンはクリーンだったりするんだよね」

僕らは良いと思った音楽を好きに演奏してきただけ
――確かに都会的な東海岸のサウンドと比べて、西海岸はレイドバックした開放感がありますよね。あなたと同じような音楽体験をした弟のグリフィンと一緒にバンドをやっているのも西海岸っぽいバンドサウンドを生み出すうえで重要なのではないでしょうか。
「その通りだと思う。弟は5歳下だけど、10代の頃からプロコル・ハルムやレッド・ツェッペリンを聴いてドラムを始めた。あいつの世代だとブリンク182なんかが人気だったと思うけど、そういうバンドは全然聴いてなかった。僕も自分のサウンドを模索していた時は、同世代のアーティストより昔のアーティストをよく聴いてたよ。その後、自分らしさを意識するようになってからは、マイ・モーニング・ジャケットやファーザー・ジョン・ミスティ、ウィルコなんかを聴くようになった。ジェイ・Zやカニエ・ウェストなんかもね」
――同時代の音楽からも刺激を受けているからこそ、ウェストコーストロックの精神を受け継ぎながらもモダンなフィーリングがあるんですね。
「僕たちはヴィンテージなサウンドを目指そうとか、新しいものをやろうとか、そういう考え方は一切していない。僕らの曲をカバーしたバンドが〈なんでドーズが演奏するとモダンな音になるんだろう。自分たちがやるとああいう風にならないのに〉って不思議がったそうだけど、僕らは何でも聴いてきたから彼らと通ってきた道が違ったのかもしれないね。僕らはただ、自分たちが良いと思った音楽を好きに演奏してきただけなんだ」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2022年7月22日(金)
品番 : UICB-10009
価格:2,970円
配信リンク:https://found.ee/LQCnC
日本盤はSHM-CD仕様/ボーナストラック1曲/歌詞対訳/解説付
TRACKLIST
1. Someone Else’s Cafe / Doomscroller Tries To Relax
2. Comes In Waves
3. Everything Is Permanent
4. Ghost In The Machine
5. Joke In There Somewhere
6. Joke In There Somewhere – Outro
7. Sound That No One Made / Doomscroller Sunrise
8. Comes In Waves (Live) *日本盤ボーナストラック
PROFILE: DAWES
ロサンゼルスを拠点とするフォークロックバンド。メンバーはテイラー(ギター/ボーカル)とグリフィン(ドラムス/ボーカル)のゴールドスミス兄弟、ワイリー・ゲルバー(ベース)、リー・パルディーニ(キーボード/ボーカル)。元々はサイモン・ドーズという名前のバンドで活躍していた彼らは元メンバーのブレイク・ミルズの脱退を機にバンド名を改名している。2009年にATOからデビューアルバム『North Hills』をリリースし、今までに7作のスタジオアルバム、2作のEP、1作のライブアルバムをリリースしている。4作目のアルバム『All Your Favorite Bands』は米Billboardフォークアルバムチャートで1位、ロックアルバムチャートで4位を獲得。過去にボブ・ディランやジョン・メイヤーとツアーを周った。60~70年代のウェストコーストロックを彷彿とさせるタイムレスなメロディー、そして卓越した演奏力で人気を博している。2022年7月に行われたフジロックフェスティバルにて初来日公演を実施した。
