レバノン出身ロンドン育ちのミーカが完成させた6枚目のアルバムは、脳腫瘍で亡くなった母親に捧げた作品だという。そのような背景があるためか、本作はパーソナルな側面が色濃い。全編がフランス語の歌唱で制作されたのも、パリで幼少期を過ごしたミーカ本人の人生と無関係ではないだろう。サウンドはアッパーなエレポップという趣で、ストック・エイトキン・ウォーターマン的なユーロビートが脳裏に浮かぶ。ゆえに終始いなたさを醸し、レトロな香りを漂わせている。ハッピーな雰囲気が強い音に、ビターで甘酸っぱい情動が込められた歌詞を重ねる対照性もおもしろい。