独創的な言葉とエモーショナルな演奏をまっすぐに鳴らし、ライヴハウスを純粋な熱狂で満たしてきた大阪のスリーピースがメジャーへ進出――この勢いは本物だ!
言葉が伝わるように歌う
2023年11月上旬、東京・Zepp Shinjukuで観たammo(アモ)のワンマン・ライヴは本当に鮮烈だった。2018年に大阪で結成され、コロナ前は年間130本にも及ぶライヴを行ってきた彼らは、キャリア最大キャパの会場(チケットは即完売)にもまったく臆することなくエモーショナルなバンド・サウンドを響かせ、フロアを埋め尽くした観客はダイヴやモッシュを繰り返しながら熱狂の渦へと巻き込まれていった。オーディエンスは10代後半~20代前半が中心だが、単に騒ぎたいとか暴れたいという様子ではなく、明らかに岡本優星(ヴォーカル/ギター)の歌に反応していたことも印象的だった。
「Zeppには憧れを持っていたし、ライヴの日は夢か現実かわからないような感じでした。お客さんの盛り上がり方は……ワンマンはいつもあんな感じですね。こちらから煽るわけではなくて、むしろ煽られてるというか(笑)。コロナで声も出せない頃から、規制が少しずつ緩くなって、いまはもみくちゃになって楽しんでくれて。その過程を一緒に体験できたこともよかったのかなと」(岡本優星)。
岡本が高校の同級生だった川原創馬(ベース)と共に結成したammo。大阪のインディー・レーベル、Orange Owl Recordsから発表してきたこれまでの作品は、サブスクでは聴けず、すべてCDのみのリリース。ライヴとCDという〈求めてくれる人にだけ届けたい〉と言わんばかりのスタンスを貫いてきたのだ。
「〈どんな音楽をやろうか?〉みたいな話はしたことがなくて、とにかくライヴハウスでライヴしたかったんです。憧れていたのは、Orange Owl Recordsのバンド。先輩の背中を追いかけるじゃないけど、〈同じやり方でカッコよくなりたい〉と思ってます」(岡本)。
2022年5月に正式加入したドラマーの北出大洋も「ammoはとにかくライヴがカッコよかった」と語る。
「僕は以前、別のバンドをやってた頃にammoと対バンしたことがあったんです。前の2人(岡本、川原)の存在感がすごかったし、〈カッコいいバンドだな〉と思いました」(北出大洋)。
3コードのロックンロールから90年代USオルタナ、フォーキーな手触りの楽曲までを行き来しながら、生々しい感情を放ちまくる楽曲がammoの魅力。その核にあるのはやはり岡本の歌だ。日常の中にある葛藤や憤り、恋人との切なく、痛々しい関係性などを描いた歌詞が若いリスナーの強い共感を集め、バンドを押し上げているのだ。
「普段はあまり歌詞に興味がないんですけど、優星の歌詞はすごく耳に残るんですよ。一緒にバンドをやってるからというのもあるけど、〈これ、どういうことだろう?〉と気になるというか」(川原創馬)。
「言葉の使い方や韻はいつも気にしてますね。音を合わせるのが大事っていうか、バンドの音とメロディーが日本語の歌詞が乗ったときに、韻を踏んでると気持ちいいじゃないですか。歌詞を書いてるときに辞書を引くことも多いし、〈おもしろい韻、ないかな〉みたいなことばっかり考えてます。ライヴでもはっきり言葉が伝わるように考えて歌ってますね」(岡本)。