DON-DON-DON
7曲目は、作詞がONIGASHIMA、作曲がScott Russell StoddartとMark Angelico ThomsonとTaneisha Damielle Jackson、編曲がScott Russell Stoddartとクレジットされている。StoddartはITZYやIVE、NCT Dreamなど、ThomsonはTWICEなどのK-POPをそれぞれ手がける作家で、Jacksonはドージャ・キャットの『Planet Her』(2021年)に参加してグラミー賞にノミネートされた経験がある。一流の海外の音楽家が関わっているのだ。
曲調はEDMというか、近年リバイバルしつつある2000年代のエレクトロを思わせるもので、ジャスティスやボーイズ・ノイズのサウンドを思い出させつつ、そういったスタイルをアップデートしたダンスナンバー。パーティ讃歌で、〈重低音 JUST SHAKE YA BODY〉という歌詞を髙地が歌っているが、まさにそんな曲だ。
Bang Bang Bangin’
続く“Bang Bang Bangin’”もEDMやエレクトロ系の激しい曲で、PSYの世界的ヒット曲“江南スタイル”(2012年)を想起させるフレーズが繰り返されつつ、BPM 160ほどの高速テンポに翻弄される。
シンセホーン、タンバリンのくぐもった音など、パーカッシブで反復的な音が中心を成し、サビにあたるドロップもメロディや歌詞がほとんどないダンス志向の曲だ。一方、ここでも中近東や南アジア系のクセの強い旋律が効果的に使われており、シタールのような音まで聴けるのがおもしろい。また、これもリバイバルしつつあるトランスの要素が大胆に取り込まれており、聴きどころは満載。ただ総じて歌を聴かせるというよりも、ビートとノリの方が前面に出ているので、6人のダンスや肉体的なパフォーマンスを見せる側面が強い曲だと言っていい。
作詞は天才凡人のAtsushi ShimadaとMiNE、作編曲はKAT-TUNからSnow Man、K-POPのGOT7やEXOまでを手がけるJimmy Claesonと、嵐やNCT 127、THE BOYZ、TWICE、ZEROBASEONEらの曲に携わるAndreas Öhrn。
ボーカルのエフェクトが効いたかわいらしいエレクトロポップ“SPECIAL”、全編英語詞の伸びやかで爽やかなポップバラード“Seize The Day”(この曲も転調が印象的)のあと、11曲目の“TOP SECRET”が『THE VIBES』の中でも個人的に特に大好きな推し曲だ。
TOP SECRET
“SPECIAL”と同じく作詞がCLAUDE S.、作編曲がO-BANKZというこの曲は、ジャージートラップ系のサウンドだと言っていいだろう。ただバキバキの激しい電子音を聴かせるEDM寄りのジャージートラップとは、様子が異なっている。
オートチューンを効かせた声の加工、ふわっとした浮遊感の強い中高音域を強調したミックスや音像、ふにゃふにゃとした発声のボーカルは、2010年代に流行って定着したエモラップを思い起こさせる。これまでにはない6人の歌い手としての魅力、ちょっと奇妙な側面が引き出されている。
そして肝心のビートが、ジャージークラブなのだ。〈2+3〉で繰り返し打たれるキックが特徴のジャージークラブは、近年大流行しているスタイルで、2000年代に米ニュージャージー州ニューアークで生まれたバウンシーなダンスミュージック。2010年代末から一気にメインストリーム化し、ラップとの相性もよく、ヒップホップやポップとの融合がハイスピードで進んでいる。
ジャージークラブのスタイルだけではなく、EDMの構成をとっていること、トラップやハイパーポップ/digicore(ポップな曲にアバンギャルドで歪んだ電子音をインターネット/ベッドルーム感覚で織り交ぜたジャンル)の要素まで取り込んでいること、ドリル(NYドリルないしブルックリンドリルと呼ばれるヒップホップのジャンル)を思わせるベースラインも一瞬現れること、先に言った浮遊感のある音響処理と6人のユニークなボーカルなど、聴きどころは非常に多い。
こういった海外のポップシーンの最新トレンドを積極的に取り込んでいく音楽性はSixTONESの魅力の一つだと思っているので、これについてはいつか、過去作を含めて執筆してみたいと以前から考えている。そんな彼らの挑戦的な姿勢が『THE VIBES』の中で最も表れているのが、この“TOP SECRET”だと言えよう。
アルバムの各形態で共通するのは、11thシングル“CREAK”まで。EDMやトラップ、ダンサブルな邦ロックを融合させた曲を流麗なピアノで彩ったこの曲に、通常盤では13曲目に“君がいない”が続く。“君がいない”は、冒頭の“こっから”に対応するファンキーなラップにエレクトロニックな要素が加わったサウンドのもので、その後、アコースティックギターが軽快なミドルテンポのバラード“ONE SONG”に接続される。
Drive -THE VIBES ver.-
そして通常盤のラスト、15曲目は“Drive -THE VIBES ver.-”。原曲はシングル“ABARERO”の通常盤のカップリングで、作詞はONIGASHIMA、作編曲はJosef Melin。Melinはスウェーデンの作曲家だ。嵐からSnow Man、なにわ男子、King & PrinceからJuice=Juiceまでを手がけつつ、Red VelvetやMONSTA XのようなK-POPグループとも仕事をしている。この曲がなかなかおもしろいので、最後に取り上げたい。
キーを回して車のエンジンをかけるイントロから、ファンキーな演奏が開幕する。シンコペーションを効かせたエレピとベース、ドラムのループ、少々チープなホーンがグルーヴを織りなしている。
最も印象的なのが高音のウワモノ、一定のメロディを繰り返すシンセで、これはGファンクと呼ばれる米西海岸のリラクシンなヒップホップに特有のもの。偉大なプロデューサー、ドクター・ドレーが生み出したスタイルだと言っていいが、元々は70年代にジョージ・クリントンが率いるPファンク勢(パーラメントとファンカデリックというバンドとそのメンバーたち)の音楽の特徴で、それを引用したものだった。一例として、ドレーの初期の名曲“Nuthin’ But A “G” Thang”(92年)を下に挙げておこう。
“Drive”は、そんなGファンク調にポップで魅惑的なメロディが乗っているところがぐっとくる。Aメロやサビには、テイラー・スウィフトの“ME!”なんかを思わせるような短い単語を歌い上げる部分が配置されていて、その切なさと親しみやすさに心を掴まれる。
後半、間奏のギターソロが明けたラスサビの手前、2分47~50秒の3秒間だけボサノバの演奏が挿し込まれるのも、遊び心があって楽しい。
と、『THE VIBES』には、SixTONESの音楽には、幅広い時代の、世界各国の多様な音楽の要素が流れ込んでいて、どこを切り取ってもおもしろく、聴き込みがいがある。6人のファンだけではなく広く音楽好きに、『THE VIBES』と言う作品を、SixTONESの音楽を、ぜひ聴いてもらいたい。
【2024年1月22日追記】“Something from Nothing”について、デスボイスをジェシーさんが担当していると書きましたが、正しくは6人全員によるものでした。謹んでお詫びし、訂正させていただきます。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2024年1月10日(水)
■初回盤A
品番:
SECJ-79~80(CD+Blu-ray)
SECJ-81~82(CD+DVD)
価格:3,960円(税込)
BOX仕様
TRACKLIST
CD
1 - こっから
2 - Alright
3 - アンセム
4 - ABARERO
5 - Something from Nothing
6 - Only Holy
7 - DON-DON-DON
8 - Bang Bang Bangin’
9 - SPECIAL
10 - Seize The Day
11 - TOP SECRET
12 - CREAK
13 - DRAMA
14 - House of Cards
Blu-ray / DVD
アンセム -Music Video-
アンセム -Live Performance Only ver.-
アンセム -Music Video Making-
アンセム -Music Video Solo Movie-
ABARERO -Dance Performance Only ver.-
こっから -Dance Performance Only ver.-
CREAK -Dance Performance Only ver.-
※Blu-rayとDVDは共通内容です
■初回盤B
品番:
SECJ-83~84(CD+Blu-ray)
SECJ-85~86(CD+DVD)
価格:3,960円(税込)
BOX仕様
TRACKLIST
CD
1 - こっから
2 - Alright
3 - アンセム
4 - ABARERO
5 - Something from Nothing
6 - Only Holy
7 - DON-DON-DON
8 - Bang Bang Bangin’
9 - SPECIAL
10 - Seize The Day
11 - TOP SECRET
12 - CREAK
13 - Blue Days (Jesse×Yugo Kochi)
14 - 希望の唄 (Taiga Kyomoto×Shintaro Morimoto)
15 - スーパーボーイ (Hokuto Matsumura×Juri Tanaka)
Blu-ray / DVD
Blue Days -Music Video- (Jesse×Yugo Kochi)
希望の唄 -Music Video- (Taiga Kyomoto×Shintaro Morimoto)
スーパーボーイ -Music Video- (Hokuto Matsumura×Juri Tanaka)
※Blu-rayとDVDは共通内容です
■通常盤
品番:SECJ-87
価格:3,300円(税込)
初回仕様:スリーブケース仕様+20Pフォトブック
TRACKLIST
CD
1 - こっから
2 - Alright
3 - アンセム
4 - ABARERO
5 - Something from Nothing
6 - Only Holy
7 - DON-DON-DON
8 - Bang Bang Bangin’
9 - SPECIAL
10 - Seize The Day
11 - TOP SECRET
12 - CREAK
13 - 君がいない
14 - ONE SONG
15 - Drive -THE VIBES ver.-
初回仕様 : スリーブケース
PROFILE: SixTONES
ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2020年1月にYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた“Imitation Rain”でCDデビュー。史上初のデビューシングル初週ミリオンを達成。同年4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。2023年リリースの10thシングル“こっから”のMVはYouTube再生回数が1億回を突破。最新シングルは2023年8月発表の“CREAK”。同年11月にはライブBlu-ray/DVD「慣声の法則 in DOME」をリリースした。2024年1月10日に最新アルバム『THE VIBES』をリリース。2024年2月より全国ドームツアーを開催する。
オフィシャルサイト:https://www.sixtones.jp/
YouTube:https://www.youtube.com/c/SixTONES_official/
Instagram:https://www.instagram.com/sixtones_official
X:https://twitter.com/SixTONES_SME
TikTok:https://www.tiktok.com/@sixtones_sme