魂のメッセージともいえる、15年ぶりのニューアルバム

 沖縄の戦(いくさ)は終わっていない。

 たわけたことを、と笑われるかもしれないが、基地問題は解決しないし復帰50年を越えたからといって盤石な平和がやってきたわけではない……古謝美佐子の新作を聴いてそんなことを考えた。初レコーディングから60周年の節目に前作から15年の時を経て送り出すこのアルバムには、常に平和を願い。声を挙げてきた古謝の思いが詰まっている。

古謝美佐子 『平和星☆願い歌』 Disc Milk(2023)

 1曲目は50年代から沖縄に核弾頭が持ち込まれ、隠されていた話を唄にのせた“ウチナーUCHINA~千と三百の核隠し”。ピーク時にはその数1300を越えたという事実を告発する古謝の歌声とキヨサク(MONGOL800)のラップに坂田明のサックスが絡みつく。続く“平和星☆願い歌”は平和を渇望する古謝の魂の叫び。唄に寄り添う石田泰尚のヴァイオリンが心を震わせる。古謝&よなは徹の三線で楽しげに始まる“与那国マヤー小”。役人を痛烈に批判する風刺で、続く“マリア・ソリーニャ”はケルティック・フルートで参加しているカルロス・ヌニェスのアルバムに収められた曲をカヴァー。夫を海賊に殺された女性の悲しみを歌うこの歌は、戦に大切な人を奪われた民衆の心につながる。坂本龍一のトラックをサンプリングした“億年の地球~mind of R. S.”は一見壮大な自然賛歌だが、2番の歌詞とブックレットに掲載された写真を見るとハッとさせられる内容。日本統治時代の台湾でヒットした“雨夜花”と韓国民謡の“アリラン”のメロディは虐げられた女性の悲しみを切々と歌い、BEGINの比嘉栄昇作詞の“ホレホレ情話”は多くの民が渡ったハワイへの思いを歌い、ハワイからの望郷の労働歌“ホレホレ節”につながる。

 後半はライヴでの定番だという“昔うたメドレー”が、ずっと戦に翻弄されてきたウチナーを描き出す。最後の“屋嘉節”のそして終わりに歌われる〈忘れてはいけない〉との一節が心の中でリフレインして終わらない。古謝や佐原が沖縄と平和を想う心がぎっしりと詰まった一枚だ。