初のフル・アルバム以降も好調に活動を推移してきたなか、フィジカルでは久しぶりの新作が到着。ここにきての〈再起動〉宣言は3人の新しいチャレンジが詰め込まれた飛躍の一枚に結実した!

現状維持していた感覚

 胸に刺さるメロウネス、心を躍らせるファンクネス――2022年秋にファースト・フル・アルバム『REFLEX』をリリースし、逞しさを増したグループのチャームをしっかりと刻んだSANDAL TELEPHONE。その後もコンスタントなライヴ活動を通じ、また、多数のアクトが出演する夏のイヴェントなど〈見本市〉的な場でもそのスペックをより広く知らしめていった。

夏芽ナツ「ひとつの作品を作り上げるごとにメンバーの仲が深まっていくんですけど、『REFLEX』以降ではより深く、団結力が上がったなって思っていて。それまでは他の2人があまり喋らないというか(笑)、ステージでは主に私が喋ったり、煽ったりすることが多かったんですけど、去年4月の4周年記念ライヴをきっかけに、2人も率先して煽りをやってくれたり、すごく頼もしくなりました。ファンの方が声を出せるようになったのも大きいんですけど、ライヴがかなり盛り上がるようになったなって、すごく思います。夏のイヴェントとか遠征もけっこうハードだったんですけど、そこで体力もつきましたし」

藤井エリカ「わたし的に2023年は、そういう現状を維持していたというか、別にマイナスな意味じゃないんですけど、目標を設定するとか、そういうことがなかったんですよ。いっぱいいっぱいということでもなくて」

小町まい「わたしもそうかも。すごく良い曲をたくさんもらって、4周年のライヴもできてって、いろいろやり尽くせている感があったので、この感じで楽しく過ごそうね、みたいな感覚というか」

 やり尽くした――とは言いつつも、もっと素晴らしい景色を見せてあげるよ!……とでも言わんばかりに、7月から9月にかけては配信シングルを立て続けに4曲リリース。賑やかなパーティー・チューン“Unlucky”、シティみ溢れるディスコ・ナンバー“Sparkle”、エモーショナルなダンス・ロック“BLACK DIAMOND”、ラップなど見せ場も多いファンク・ナンバー“悲喜劇的アイロニー”と、SANDAL TELEPHONEの新たな挑戦、魅力を孕んだ楽曲ばかりだった。

ナツ「“BLACK DIAMOND”はけっこう苦戦しましたね。それまでにもかっこいい曲はいっぱいあったんですけど、ダンスの先生がK-Popを踊ってる先生だったので、動きとかフォーメーションとか細かいところまで指導していただいて。これまではけっこうダイナミックに、みんなでバーンって合わせて、みたいな感じだったので、そういったきめの細かいダンスは初めてだったんです」

エリカ「レコーディングで苦戦したなぁって思ったのは“悲喜劇的アイロニー”。曲自体はすごく好きなんですけど、高音のパートがあったりとか、ラップもあったりとか、リズムの取り方とかも難しくて。レコーディング中にすごく噛み噛みになりながらラップをやった覚えがあります(笑)」

まい「4曲のデモが一気に来て、これ全部歌えるのかな、ここからどれか選んでっていうわけじゃないよなとかいろいろ考えたんですけど、全曲歌えることになって嬉しかったです。最初に聴いたときは、そうでもないなって思ったのが“Sparkle”。でも、自分たちの声を入れたらいちばん好きな曲になりました」

 そして2024年。年明け早々に配信リリースしたのが電気グルーヴ“Shangri-La”のカヴァー。オリジナルから思いっきり振り切った……というアレンジはあえてせずとも、入れ替わり立ち替わりする3人のヴォーカルとハーモニーでSANDAL TELEPHONE流儀の色めく世界を聴かせている。

ナツ「まいちゃんがYouTubeでいろんな曲をカヴァーしていて、グループでも何かカヴァーしたいね、昔の曲とか私たちなりのアレンジでカヴァーできたらいいね、みたいな話はずっとしていたんです。曲のセレクトはプロデューサーさんにお任せしてたんですけど、 最初に原曲を聴かせてもらったときには、自分たちが歌っている姿があまり想像できなくて、〈できるかな?〉みたいな感じでした。でも、リリースしてからXでエゴサしてみたら、私たちのファンじゃなかった人もいっぱい反応してくれていて」

まい「〈“Shangri-La”カヴァーしてましたね!〉みたいに、初めてライヴに来てくださった方からもけっこう言われて、で、皆さんに〈嫌じゃなかったですか?〉って訊いてたんですけど(笑)、〈めっちゃよかった!〉って言っていただけて安心してます」