スウィングジャズの要素やブギウギのリズムを取り込んだ数々の名曲を世に出した作曲家・服部良一

 2023年度後期のNHKの連続テレビ小説「ブギウギ」の主人公のモデルは、笠置シズ子(1914-1985)。“東京ブギウギ”や“買物ブギー”などのヒット曲で知られる歌手、戦後の大スターだ。前記のヒット曲は、服部良一が作曲した。服部良一は、スウィングジャズの要素やブギウギのリズム等を取り入れた、〈バタ臭い〉日本のポップスの先駆者。終戦直後にあたる昭和20年代の前半には、灰田勝彦の“東京の屋根の下”や、藤山一郎と奈良光枝の“青い山脈”などの国民的スタンダード・ソングも作曲した。また、彼は“村雨まさを”名義で歌詞も作った。“買物ブギー”は、服部良一が単独で作詞作曲した曲である。

 日本のポップス通を自認している人なら、雪村いづみの『スーパー・ジェネレイション』(74年)を聞いたことがあるだろう。服部良一のいにしえの名曲を、雪村の歌とキャラメル・ママ(細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆)の演奏によって蘇らせた名盤だ。『世紀のうた・心のうた -服部良一トリビュート-』は、『スーパー・ジェネレイション』と同じく、日本コロムビアからのリリースである。わざわざ日本コロムビアのことを持ち出したのは、戦前の日本の職業作曲家は、レコード会社と専属契約を結んでいたから。服部良一は、1936年に日本コロムビアの専属作曲家となった。

VARIOUS ARTISTS 『世紀のうた・心のうた -服部良一トリビュート-』 コロムビア(2024)

 『世紀のうた・心のうた』の収録音源のひとつ、スチャダラパーの“おしゃれミドル”には、服部良一の日本コロムビアでの初作品で、スウィング・ジャズの要素を取り入れた淡谷のり子の“おしゃれ娘”がサンプリングされている。“おしゃれミドル”は、“おしゃれ娘”のジャズ・コーラスの部分にも合わせて作られているが、それでいてスチャダラパーらしい飄々とした風情が伝わってくる好トラックだ。また、曽我部恵一と井の頭レンジャーズは、“買物ブギー”をレゲエ風に調理。その他、真心ブラザーズや小西康陽 feat. 甲田益也子、井上芳雄など計9組が服部良一の名曲に取り組んでいる。もちろんこのトリビュート盤の表題は、“東京ブギウギ”の歌詞からの引用だ。