ナージャ・トロコンニコワの著書「読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門」がソウ・スウィート・パブリッシングから刊行される。

「読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門」は、ロシアのプロテストパンクアート集団プッシー・ライオットの創設メンバーであるナージャ・トロコンニコワが2018年に刊行した「Read & Riot」の翻訳本。

プッシー・ライオットは、カラフルな目出し帽や挑発的なライブパフォーマンス、FIFAワールドカップ決勝戦への乱入、母国ロシアでプーチン政権批判を示すためのゲリラライブの敢行など、センセーショナルなパフォーマンスで知られるフェミニストパンク集団だ。著者のトロコンニコワは、ハーバード大学やケンブリッジ大学での講演もおこなうアクティビストであり、アイ・ウェイウェイやジェニー・ホルツァー、ジュディ・シカゴらの系譜に連なるアーティストでもある。

本書は、プッシー・ライオットの結成の経緯から彼女たちが国内でおこなった数々のアクション、ロシア当局に逮捕されたのちの苛烈極まる獄中生活までをトロコンニコワが綴った手記で、彼女がそういった体験の中から得た〈実践的な知〉を10の基本原則として紹介する、生き方の指南書(サバイバルガイド)とも言える充実の内容の1冊になっている。

結成時から現在に至るまで常に世間の耳目を集めるプッシー・ライオットとはどんなグループなのか、なぜ結成されたのか、真の目的など、トロコンニコワがその全貌を明らかにする。さらにカントからニーナ・シモン、あるいはウィトゲンシュタインからパンクの歌詞までを縦横無尽に引用しながら、個人の権利と自由を抑圧する体制下において私たちにできること、アクティビズムは社会においてどのような役割を持つのか、アートとアクティビズムはどう交差するのかといった疑問の数々に、ユーモアたっぷりに答えていく。

そんな「読書と暴動」は、訳をMikikiでも執筆してもらっている野中モモが、解説を東京藝術大学教授の清水知子が担当。装丁は、坂本龍一やGotchらが主催したプロジェクト〈D2021〉をはじめ、小林うてなやermhoiのビジュアルを手がけるグラフィックデザイナーの山中アツシが担当した。

本書に寄せられたコメントは次のとおり。

私たちはナージャに出会えて、幸運だ。
――キム・ゴードン(ミュージシャン)

ナージャは彼女の存在すべてをもって真の反骨精神を体現している。
――オリヴィア・ワイルド(「ブックスマート」監督、俳優)

プーチンが最も憎んだバンドPussy Riotの創設メンバーによる、回顧録と行動指針の騒々しい融合
――カーカス・レビュー

目次を目にするだけでも刺激的な本書。どんなことが綴られているのか、楽しみな一冊だ。

 


BOOK INFORMATION

NADYA TOLOKONNIKOVA, 野中モモ 『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』 ソウ・スウィート・パブリッシング(2024)

発売日:2024年4月28日(水)頃から順次全国の書店・ECストアで購入可能です
価格:2,600円(税別)
仕様:四六判変形/並製/304ページ
ISBN:978-4-9912211-4-9

目次
文化労働者としてのアーティスト――日本版のためのまえがき
イントロダクション
ルール1:海賊になれ
ルール2:ドゥ・イット・ユアセルフ
ルール3:喜びを取り戻せ
ルール4:政府をびびらせろ
ルール5:アート罪を犯せ
ルール6:権力の濫用を見逃すな
ルール7:簡単に諦めるな。抵抗せよ。団結せよ。
ルール8:刑務所からの脱出
ルール9:オルタナティヴを創造せよ
ルール10:ビー・ア・(ウー)マン
最終声明:希望は絶望から生まれる
この本によせて キム・ゴードン
この本によせて オリヴィア・ワイルド
あるプッシー・ライオットの推薦図書リスト
解説:プッシー・ライオットの不朽の美学 清水知子(東京藝術大学教授)

 


PROFILE: NADYA TOLOKONNIKOVA
アーティスト、アクティビスト。国際的フェミニストプロテストアート集団プッシー・ライオットの創立メンバー。2012年、モスクワの救世主ハリストス大聖堂でプーチン大統領とロシア正教会を批判するゲリラ・パフォーマンスを敢行。有罪判決を受け2年にわたって収監された。釈放後は囚人の権利のための非政府組織〈ゾーナ・プラヴァ〉と独立系通信社〈メディアゾーナ〉を設立。2022年にはNFTアート収集集団ユニコーンDAOを立ち上げ、ウクライナのために700万ドル以上を集めた。 レノン・オノ平和賞およびハンナ・アーレント政治思想賞を受賞。現在では数百人の人々が自らをプッシー・ライオット・コミュニティの一員であると認識している。プッシー・ライオットは、ジェンダーの流動性、包摂性、母権制、愛、笑い、分散化、アナーキー、反権威主義を支持する。ロシア連邦シベリア連邦管区ノリリスク生まれ。

PROFILE: 野中モモ
東京生まれ。翻訳者、ライター。訳書に「音楽のはたらき」(デヴィッド・バーン、イースト・プレス)、「GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝」(キム・ゴードン、DU BOOKS)、「女パンクの逆襲―フェミニスト音楽史」(ヴィヴィエン・ゴールドマン、Pヴァイン)、「世界を変えた50人の女性科学者たち」(レイチェル・イグノトフスキー、創元社)などがある。著書に「野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る」(晶文社)、「デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター」(ちくま新書)など。