漆黒の闇に浮かび上がる、5人のヴィランたちの顔には獰猛な本性が隠されていて……
容赦なきまでに攻撃的な音を鳴らしたニューEPは、バンドの進化と深化を刻む!!!!!
2004年に名古屋で結成、葉月(ヴォーカル)、玲央(ギター)、晁直(ドラムス)、悠介(ギター)、明徳(ベース)から成る5人組、lynch.。ロック・シーンにおいて孤高の存在感を示してきた彼らが『FIERCE-EP』を完成させた。〈FIERCE(激しい)〉という言葉からも内容は想像できるが、アルバム『REBORN』(2023年)に続く作品という点でも興味深い背景があった。
「『REBORN』はわりと実験的な作品だったという印象もあって。でも、去年の秋にベスト的なセットリストのツアーをやったときにlynch.の良さを再確認できたんですね」(葉月)。
そこで主眼となったのが〈激しさ〉だ。EPゆえに焦点を絞った楽曲が各メンバーから寄せられたが、統一感を持たせるため、プロデューサー的な観点から葉月が選曲やアレンジなどを手掛けていった。幕開けに相応しい“UN DEUX TROIS”では、まさに期待通りの音が鳴らされる。
「lynch.すぎて、僕はこの曲がMVになるのかなと思ってました」(晁直)。
「このバンドの王道なんですけど、“ADORE”みたいな正義っぽいものではなく、“pulse”や“CREATURE”などの悪っぽい方向のものにしたいと考えていました」(葉月)。
「激しい面だけではなく、艶がある部分もlynch.の武器だと思うので、それをこの一曲で感じてもらえるようにというのは意識していて。終盤にディレイを入れたり」(悠介)。
“EXCENTRIC”は、葉月の作曲。彼らにしては珍しいラップ・メタル的なアプローチが新鮮に映る。
「いままであった要素も入っているんですけど、この表現は新しいなと感じます」(晁直)。
歌詞の一節にある〈VILLAN IN ME〉という言葉も気になる。
「いままで〈Evil〉や〈Dark〉といった単語でlynch.を形容してきたけど、最近〈Villan〉が悪党とか悪役といった意味だと知って、〈それは俺らじゃん〉みたいな(笑)」(葉月)。
“斑”は明徳の音楽的なバックグラウンドが特に反映された一曲と言えそうだ。
「最初のイメージはインダストリアルなリズムのループに乗っかって、リフで進んでいく感じ。『REBORN』のときとはまた違って、ライヴでみんなが楽しめるような曲をと思って」(明徳)。
「僕の歌詞は常に生きるかエロスかの二択ですけど(笑)、Bメロは悠介くんが書いて、悠介くんが歌ってます」(葉月)。
その〈ソゥ 俺ハ 死ニユクマデ 踊ル〉という一節については、自身の思いに加えて、先人に対する敬意も滲み出る。
「今井寿(BUCK-TICK)さん的なフレーズや歌を念頭に置きつつ、まだ歌詞がない状態だったので、どこか憎めない小悪党みたいなキャラクターを作り、そいつが自己紹介しているようなストーリーを描いていった。ミュージシャンなら、できればステージ上で最後まで踊っていたい、奏でていたいという気持ちがありますよね。時期的に櫻井(敦司)さんのこともリンクしていって」(悠介)。
アグレッシヴな“A FIERCE BLAZE”のアイデアは「10年ほど前からあった」と玲央は振り返る。
「最初はシャウト一辺倒のハードコア・ナンバーだったんですけど、葉月から〈もうちょっとドラマティックに仕上げてはどうか〉と提案を受けて。レコーディングでも、悠介のパートを聴いていたら、悲しげな雰囲気のコードに替えたくなってきて。僕のギターにSus4や7thを入れたんですけど、それによって明徳にはベースを弾き直してもらうことになった(笑)」(玲央)。
「めちゃくちゃ雰囲気が変わったんです。〈名古屋系〉感が出たというか(笑)」(明徳)。
最後を締め括る“REMAINS”は、広大なスケール感を醸し出す。
「映画『デューン/砂の惑星』の世界観からインスピレーションを受けて作っていきました。そんな話はしてなかったんですけど、葉月が書いてきた歌詞を見たときに、冒頭にそういったワードが入っていて驚いたんです」(悠介)。
「もし15年ぐらい前に演奏していたら、深みや重みが違ったと思います。それなりに歳を重ねた僕らがこの形にできたことは自信にもなりますね」(玲央)。
制作において緊張と弛緩を繰り返し、より研ぎ澄まされたマテリアルを生み出しながら支持を拡大させ続けてきたlynch.。現在も変わらぬ意欲的な姿が的確に反映されたEPだ。
lynch.の近年の作品を一部紹介。
左から、2020年作『ULTIMA』、2023年作『REBORN』(すべてキング)
葉月の2020年作『葬艶 -FUNERAL』(キング)
INFORMATION
lynch.『FIERCE-EP』発売記念タワーレコード サイン会
2024年6月29日(土)名古屋パルコ店
2024年9月1日(日)梅田NU茶屋町店
2024年9月5日(木)新宿店
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t15119/