
洋楽への憧れから生まれたどこにもない音楽=シティポップ
――シティポップの定義は曖昧ですが、ジュンさんにとってはどのような音楽ですか?
「シティポップという単語自体、評論家による後付けで、当時のアーティストたちの多くは〈自分たちはシティポップをやっている〉などとは考えていなかったでしょう。
でも、例えばメジャーセブンスが多用されている点や、リズムがファンキーでグルーヴィーな点など、シティポップに顕著な作曲上のスタイル・技術はあると思います。また、ラウンジ風でありながら、どこかセンチメンタルなムードが漂っているのも特徴かもしれません。
面白いのは、シティポップの始祖とされるアーティストたちは洋楽を真似して日本の歌謡曲的な要素を排除しようとしていたにもかかわらず、結果的に世界のどこにもない音楽を生み出してしまったことです」
――例えばアメリカにおけるブルースやジャズには長い歴史がありますが、シティポップは自然発生的とはいえ、人工的な側面がありますよね。山下達郎が「ミュージシャンは学び続けないといけない」、「魂の叫びだけでは100曲書けない」というようなことを言ったという逸話がありますが、日本のシティポップは洋楽の徹底的な研究と学習の上に成り立っていて、努力の賜物のように感じます。
「まさにその通りです。シティポップは精緻なプロダクションによって生み出されていますし、高度に形式化された音楽なんです。また、日本の高度経済成長と連動してますし、商業的な側面も大きい」
新しい音楽へ常にオープンでいたい
――ジュンさんは〈ネオシティポップアーティスト〉と呼ばれています。〈ネオ〉の部分は、昔のシティポップを単に焼き直しているのではなく、現代的な感覚で再解釈している点が強調されているのだと思います。同時代で注目しているアーティストはいますか?
「日本のアーティストだと、Yogee New WavesやGOOD BYE APRILを聴いてますね。日本以外だとテイラー・スウィフトなど、最近のアーティストもできる限り聴くようにしています」
――最近のオーストラリアのアーティストで気に入っている人はいますか?
「グレントペレス(grentperez)やラスト・ダイナソーズ(Last Dinosaurs)は好きですね」
――ジュンさんの音楽の好みは一見レトロスペクティブなようでいて、実は同時代の音楽にも目を向けているんですね。
「正直に言って最近の音楽の知識は十分ではありませんし、もっと聴くべきだと思っています。最近はK-POPを勧められたので、試しに聴いてみているところです」
――かなりオープンマインドなんですね。
「ええ、実際、ソウルやジャズも聴いていますし、ボサノバや南米のポップスなど他の国の音楽も好きです。新しいアイデアには常にオープンでいたいですし、自分の音楽に新しい要素を取り入れるのが好きなんです」
――決してシティポップを作ることにこだわっているのではなく、あくまで音楽制作を楽しんだ結果として、どの曲もシティポップになっていた、という印象を受けます。
「そうですね、それに他のミュージシャンやプロデューサーとも積極的にコラボレーションしたいと思っています。コラボレーションによって自分の音楽的可能性を広げることができますし」