80年代の日本産シティポップへの再評価が続く昨今。あの頃の空気感を思い出す人もいれば、当時を知らない若者は音楽を通じてどんな世界が広がっていたのかを感じ、現代との接点をそこに見出す。「シティポップ短篇集」と銘打たれた本書では、「スローなブギにしてくれ」などで知られる片岡義男ら6人の作家たちが綴った9つの短編都会小説から、同時代の日本の〈文学〉が何をしていたのかを再発見しようと試みる。独特のリズムで繰り広げられる男女のカラっとした会話などは、バブル経験者ならばノスタルジーを感じること必至だが、果たして平成以降生まれの人たちはどんな印象を持つのか。世代ごとで感想を述べ合うのも、興味深いのではないだろうか。