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目標にどこまで近づけるか

 そういった実験的なアプローチ、自然発生的な音への興味については「欲しい音がシンセサイザーの中にないから」と笑う丁だが、創作意欲のままに未知なるものを追求する気質なのだろう。また、本EPではこれまでになく太い低音が注入されている点も見逃せない。それについては「いつも聴いている音楽の影響」だという。

 「ベースとかトラップとかクラブ・ミュージックをよく聴いていて。デカいスピーカーから飛び出してくる重低音を全身で浴びるのがたまらなく好きなもんですから、ただただそれをやってみたかった。好きなアーティストはホールジー。ミックスや編曲などアルバムの音作りが凄いなと思います。あとアラン・ウォーカーとか北欧のアーティストが好きですね。最初に影響を受けたのはエンヤで、クラシックばかりの母のCDコレクションの中に『The Memory Of Trees』があったんです。それに衝撃を受けて、布団の中でこっそり隠れて聴いていました。その頃はクラシックのオーケストラ・サウンドばかり聴いていたんですけど、彼女のポップスは違和感なくすんなり入ってきた。あと癒しのヴォーカルにもすごく惹かれました」。

 父親の影響でゴジラの劇伴に心ときめかせ、アヴリル・ラヴィーンの曲でポップスに目覚めたという思春期から、新しいサウンドをキャッチするためにアンテナの感度を磨くことを怠らない姿勢はいまも変わらない。この取材前日の深夜は「オーロラの新作の配信が始まるのをドキドキして待ってたんです」と興奮気味に語る姿は、筋金入りのミュージック・ラヴァーにしか見えなかったことを伝えておこう。

 相棒であるミニハープなど弦楽器へのこだわりを強く感じさせる本作。そう指摘すると「〈アコースティック〉にこだわりがあるんですよ」と丁は言う。生の音色にこだわり、和音の響きにこだわり、歌詞の母音の並び方やメロディーとのハマり具合にこだわり抜いて作り上げた本作に自身はどのような手応えを感じているのか?

 「もともと作りたかったものがあって、その目標に現在の環境でどこまで近づけるかを探る作業でもありました。こういう局面はこうやれば乗り越えられるんだ、とかレコーディングの心得がすごく明確になったところもあるし、マスタリングが済んだばかりのEPの曲を爆音で聴いたときは、すげえなこれ!って唸りました。でもこの先フル・アルバムを作るとなったら、この熱量では足りないと思っています。すでに曲はたくさん作っていて、出せる〈札〉はまだまだあるので、それをどうアウトプットしていくか考えているところです」。

 最後にリスナーに向けて、この『呼び声』の聴きどころを語っていただこう。

 「1曲目から順番に聴いてほしいですね。明確な物語性があって、だんだん狂気を帯びていく、狂乱していくような曲順になっているので。曲間の秒数も2.8秒にこだわりました。無音の2.8秒も含めて楽しんでください」。

丁の作品。
左から、2023年のミニ・アルバム『ヒトミナカ』、2024年のシングル“because”(共にランティス)